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【冬季ろくりんピック】情け無用! アイス騎馬ホッケー!

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【冬季ろくりんピック】情け無用! アイス騎馬ホッケー!

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第一章

 場所は雲海。寒さで凍りついた巨大な雲が辺り一面を埋め尽くしている。そこで今まさに熱い競技が始まろうとしていた。
「さて、始まりました。冬季ろくりんピックを締めくくる熱い競技、情け無用! アイス騎馬ホッケー! 実況解説は西シャンバラチームより私、リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)ヴィゼント・ショートホーン(びぜんと・しょーとほーん)。そして……」
「東シャンバラチームよりキャンディス・ブルーバーグ(きゃんでぃす・ぶるーばーぐ)が実況するヨ」
 実況席に座る三人が巨大モニターに映し出され実況を開始する。
「てめぇらの心の導火線に火はついてるか? ボンバー!」
『ボンバー!!』
 『熱狂のヘッドセット』をつけ、熱く語るヴィゼントの言葉に続き会場から歓声が上がる。
「よし、いい返事だ。しっかり応援頼むぜ?」
「それでは、盛り上がってきたところでまずは今回の競技の説明をさせていただきますね」
「情け無用とあるとおり基本的にはなんでもありの競技ヨ」
「スキル、アイテム。何でも使用可能です。ただし、相手に対する妨害行為は三秒まで」
「それ以上は、競技に関係ない戦闘行為として、『クモウツボ』の餌になっちまうぜ」
「それと、複数人で騎馬が組めるようになってるヨ。好きな人と組むのもアリネ」
「後は失格について。こちらは個人の場合は競技場である雲――リンクの外に体全体が、騎馬の場合騎馬全体が出た時点で失格となります」
「おっと、騎馬を組んでる奴等は騎馬が崩れてもその時点で失格になっちまうから気をつけてくれよ?」
「制限時間は前半三十分、休憩の十五分をはさんで後半の三十分。同点の場合そこから五分の延長戦。それでも決まらなければペナルティーショット戦……サッカーで言われるPK戦になるヨ」
「それから、今回、人数の少ない東シャンバラチームに助っ人をお呼びしました。こちらです!」
 リカインの言葉と共にモニターに現れたのは沢山のモヒカン達。
「モヒカンホッケーチームの皆さんです!」
『ヒャッハー! 汚物はブロックだぁ!!』
「モヒカンホッケーチームの皆さんはところどころ登場して東シャンバラチームの手伝いをしてくださいます」
「せっかくの競技なんだから良い勝負が見たいよな?」
 ヴィゼントの言葉に会場が沸く。
「おう、ありがとよ。それじゃ、これから試合の助けをしてくれるメンバーを紹介するぜ」
 巨大モニターにスタッフの面々が表示される。
「まずは、主審、副審をしてくださる布袋 佳奈子(ほてい・かなこ)さん。それから線審をしてくださるエレノア・グランクルス(えれのあ・ぐらんくるす)さん。さらにこの二人は怪我人の救護も担当してくださっています」
「最後二、リンク外に落ちた選手拾いカラ、反則者の対処、追加パックの投入、主審のお手伝いまで幅広くしてクレル、源 鉄心(みなもと・てっしん)ティー・ティー(てぃー・てぃー)イコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)の三人ネ」
「チームとか関係なしにビシバシ頼むぜ」
「それでは、選手の皆さんは準備を開始してくださいね」
「助っ人呼ぶ奴等はこの内に頼みに行ってこいよ? それじゃあ行動開始だ!」
 ヴィゼントの言葉の後、一時マイクが切れ、選手達が動き始めた。

 何も助っ人を依頼したいのは選手だけではない。スタッフの方もお願いをするために動いていた。
「リンクから落ちた人を拾う簡単なお仕事なのですが……どうでしょうか?」
 鉄心はジークリンデ・ウェルザング(じーくりんで・うぇるざんぐ)にスタッフ手伝いのお願いをしにきていた。
「分かった。私でよければ手伝うよ。ちょうど暇をもてあましていたところだし……」
「ありがとうございます」
 鉄心は、ジークリンデにお礼をし頭を下げた。
「あ、いましたの」
 一方、イコナはもう一人の助っ人小暮 秀幸(こぐれ・ひでゆき)に審判のお願いをするため会場を探し回っていた。
「おや、イコナ殿。どうしました?」
「実はお手伝いをお願いしに来ましたの」
「試合のですか?」
「はい。でも選手ではなく、審判のお仕事のお手伝いをお願いしたいですの」
「ふむ、審判ですか」
「正確なジャッジには両陣営、全体の状況把握が不可欠ですの」
「なるほど……。そういうことでしたらお手伝いさせてもらいましょう」
「助かりますの! それじゃあこっちですわ」
 イコナは秀幸を連れて鉄心達の元へ戻った。

 こちら変わって選手メンバー。
「私が選手で騎馬のうえ……ですか?」
「あぁ。まぁ騎馬といっても俺が肩車するだけなんだが……、お願いできないか?」
「僕からも是非お願いするよ!」
 騎凛 セイカ(きりん・せいか)の元を訪れた、朝霧 垂(あさぎり・しづり)ライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)
「面白そうですし、こちらからも、是非お願いしますね」
「おおっ! 本当か!?」
「あはは、嘘は言いませんよ。情け無用のアイス騎馬ホッケー……、そんな楽しそうな競技、見てるだけなんてもったいないですしね」
「やったね垂! これで絶対勝てるよ! それにスティックも無駄にならずにすんだね!」
「そうだな。じゃあ、セイカよろしく頼む」
「えぇ、こちらこそ」

「ジーっ……」
「……どうした?」
 羅 英照(ろー・いんざお)を見つけるや否や目の前に行きジーっと彼を見つめるルカルカ・ルー(るかるか・るー)
「……本題を言わなければ始まらないだろう」
 呆れた顔のダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)。後ろにはカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)夏侯 淵(かこう・えん)の姿もあった。
「……みんな揃っているということは、別に世間話をしにきたわけではないのだろう?」
「実は、アイス騎馬ホッケーで一緒に騎馬を組んで欲しいんです!」
「アイス騎馬ホッケー……、冬季ろくりんピックの競技か」
「そうですぜ。ルカに俺とダリル、それから羅の旦那で騎馬を組みたいと思っている次第で」
「デスクワークばかりだと身体なまっちゃいますよ? 是非是非!」
 再びジーっと見つめるルカ。
「……まぁ、同志からの頼みだ。断ることもないだろう」
「じゃあ……!」
「是非参加させてもらおう。よろしく頼む」
「やった! よろしくお願いします♪」
 英照とがっちり握手を交わし嬉しそうなルカ。
「騎馬はどうするのだ?」
「羅の旦那が前で俺とダリルが後ろかね。俺が前だと翼が邪魔で前が見え辛いしよ」
「そうだな。参謀長を俺の支えにするわけにもいかん」
「ルカが参謀長の上に乗るなんて……」
「気にするな。せっかくの競技だ。楽しくやろうではないか」
「良いなぁ……、俺も騎馬やりたかったぜ……」
「…………」
 一連の会話を聞き、呟いた淵の言葉を聞いて静かに肩に手を置くダリル。
「くそぉ……。もう少し、もう少し背があればぁ……!」
 一人嘆く淵だった。

「涼司くん」
 会場に来ていた山葉 涼司(やまは・りょうじ)を見つけ、声をかける火村 加夜(ひむら・かや)
「おう、加夜か。アイス騎馬ホッケーに出るみたいだな」
「はい。それでですね。涼司くんにお願いがあるのですが……」
「ん? なんだ?」
「えっと……、良かったら一緒に競技に出てもらえませんか?」
「……俺か?」
「ほかに誰もいませんよ?」
「だよな。まぁ、面白そうだし、ひと暴れ出来そうだしな……。よし! その話乗った!」
「本当ですか?」
「もちろんだ。やるからには勝ちに行くぜ!」
「はい!」

「どうしましょう……」
 助っ人を頼みたい人がいるのに未だその本人に会いにいけない杜守 柚(ともり・ゆず)
「柚、悩んでないで行かないと、始まっちゃうよ?」
 動けないでいる柚を見て呆れ気味の杜守 三月(ともり・みつき)
「そうですけど……」
「まぁ、そんな事だろうと思って本人呼んでおいたよ」
「えっ!?」
「……ここにいたか」
 顔を出したのは高円寺 海(こうえんじ・かい)
「三月から柚が話があるから来てくれって言われたんだが……」
「み、三月ちゃん!?」
 真っ赤になって怒る柚。
「まぁまぁ。ほら、早くしないと始まっちゃうよ?」
「うぅ……。そうですね」
「……どうした?」
「えっと、海くん。これからアイス騎馬ホッケーがあるのは知ってますよね?」
「それはな。こうして見に来たわけだし」
「それで……、その、よ、良かったら、私達と騎馬を組んでくれませんか!?」
 思いっきり頭を下げる柚。対して海はまだ理解できていないのか首を傾げていた。
「……騎馬?」
「あ、えっと僕達、アイス騎馬ホッケーに出るんだけど、良かったら海と一緒に三人で騎馬を作って出たいなってことなんだよ」
 三月の補足で納得のいった海。
「なるほど、そういうことか。俺は別に構わないぞ」
「……本当ですか?」
「もちろんだ。見るよりもやるほうが楽しいからな」
「良かった……。あ、作戦はどうしましょうか?」
「臨機応変に行こう。攻撃出来るときに攻撃、防御が必要なら防御。負担がかかるかもしれないが……」
「僕はそれでいいよ。柚は?」
「海くんが言うなら……。私がんばりますね!」
「ん。期待してる」
 人一倍気合を入れる柚だった。

 場所変わり再び実況席。
「さて、皆さん準備は終わったみたいですね」
「助っ人もしっかり呼んできたみたいだな。面白いバトルが見れそうだ!」
「何でもありだけど、怪我には気をつけてネ」
「それじゃあ、試合開始だ。その熱い魂見せてみろ! ボンバー!!」
『ボンバー!!』
 ヴィゼントの掛け声と共に試合が始まった。