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夢見月のアクアマリン

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夢見月のアクアマリン

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〜アクアマリンの欠片〜


 暫くの沈黙の後、部屋の隅からやってきた武尊はジゼルの青ざめた表情を見て、肩に手を置いた。
「やー……女の戦いって壮絶ね。
 俺ちびるかと思った」
 まだ笑う気にはなれなかったが、武尊の気持ちは嬉しくてジゼルは困ったような微笑みで返事を返す。
「ジゼルおねえちゃん、大丈夫ですか?」
「ありがとう、ヴァーナー、武尊。
 私……本当の事を知らなくちゃ」
 二人が頷くのを見ると、ジゼルは首にかけて居たネックレスを外し、部屋の中心にあったミニテーブルの上にそれを置く。
 ネックレスの紐の先には海に投げれば溶け込んでしまうような見事な、藍緑色(らんりょくしょく)の石が結ばれていた。
「ジゼルおねえちゃんの目の色みたいです〜」
「何だこれ、宝石か?」
「宝玉 アクアマリンの欠片よ。セイレーン……というより私の家に代々伝わるものなの。
 代々瞳の色がこの色と同じ娘が受け継いできたのよ」
 ジゼルがアクアマリンの欠片に手を伸ばす。
「三賢者様、ジゼルです。どうか答えて」
 ジゼルの声に石は一層の輝きを増すと、部屋全体が青い光に包まれる。 
『ジゼルよ、最後のセイレーンの子よ、どうしたのです?』
「三賢者様、答えて。
 あの幻影は何なの? どうして雅羅達が倒れる程の力を奪うの?」
『あの者達は私達の計画を知ったの、そうするしかないのよ』
「もうこんな事は止めて! また次の計画にすればいいじゃない」
『次など無い』
「え?」
『契約者達は逃がしません。彼らの力は我々の力となり、彼等の肉体は我々のものとなるのです。
 彼等は我々セイレーンの復活する為の糧、魂を入れる器となるのですよ』
「……そ、んな……
 私に嘘をついたのね……? 私を騙したのね!?」
『お前もあの者達に嘘をついたではないか』
「ッ!!」
『計画を辞めて、どうなるのだ。お前の母は、姉は生きかえるのか?』
「……それは……」
『ジゼルよ、我々セイレーンを裏切るのか? 一族を蔑にし、あの者たちに加担するというのか』
 三賢者の声に、ジゼルは言葉を詰まらせる。
「私は……」
 どうしたらいいのか、振るえるジゼルの手を握る感覚があった。 
「ヴァーナー……」
「ジゼルおねえちゃんにはボクがついてますよ」
 ヴァーナーの笑顔を見て居ると、肩に手がおかれる。
「なんだかさっぱり分かんねぇけどよ、ジゼルの好きなようにしたらいいと思うぜ」
「……武尊」
 ジゼルの表情が和らいでいく。


「三賢者様、私は皆をここから逃がします
 母様が生きかえらなくても、姉様達を裏切る事になっても、
 それでも……



 私はあなた達と同じ嘘つきになりたくない!!」