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夢見月のアクアマリン

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夢見月のアクアマリン

リアクション

「だから何度も言ってるけど、俺お前のそういうとこ嫌いだから」
「信じたいから信じる、というのはいけない事なんでしょうか?」
 宴会場の隅から口論する声が聞こえてくる。
 争っているのはみもりと鴉真 黒子(からすま・くろす)だった。
「ちょ、ちょっと待って!!」
 気付いた想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)が二人の間に割って入り、想詠 瑠兎子(おもなが・るうね)が雅羅を連れてやってくる。
「一体どうしたのよ?」
「どうしたもこうしたも……最初からどうせこんな事になるって思ってたけどさ」
「でも鴉真さんは付いてきてくれましたよ?」
「……チッ。
 むかつくんだよね〜。お前みたいな世間知らず。
いつかこっぴどく騙されるぜ?」
「……鴉真さんは、いつもちょっと意地悪です。
 私は、疑うよりもジゼル様を信じたいんです」
「……私も信じたい」
 みもりの言葉に、雅羅は小さく呟くように続けた。
「確かに彼女は私達を……陥れようとしてるのかも。
 でもそれだけじゃないはず」
「理由とかあんの?」
 胡散臭そうな顔をする鴉真に、夢悠は少し逡巡してから話しだした。
「理屈とかじゃなくてさ、オレも良く分かんないんだけど。
 さっきの話でさ、ジゼルが一族と母と姉を復活させるとか言ってたって。もしそういうのがこの状況の原因なら、分かる気がする。
 ……オレにも分かる気がするんだ」
 そう言う夢悠の心の中には両親の顔が浮かんでいた。
 十歳の時、交通事故で亡くしてしまった両親。
 思いだして辛いときも、一人ぼっちで寂しい時も自分には父方の祖父母と、義姉の瑠兎子が居てくれた。
 けれどジゼルはどうなんだろう。
 夢悠は決意を固めると、雅羅の顔を見る。
「ジゼルと話そう」
「ええ」
 三人は扉へ向かって歩いて行く。雅羅の後を追って、大助がやってきた。
「雅羅、俺も手を貸すよ」
「……大助、ありがとう。」
「おいルシオン、お前もいつまで寝てんだ、起きろ」
 大助はルシオンの頭にゴツンとげんこつを入れると、むにゃむにゃと目を擦る彼女を引っ張って扉へ向かう。
 それを見ていた黒子は、ふとみもりの顔を見た。
「あんたはどうすんの?」
 答えは聞くまでも無く、彼女の瞳にも夢悠と同じく決意の色が宿っていた。
 黒子は溜息をつくと扉へ向かって歩き出した。
「鴉真さん! ありがとうございます!!」
 後ろから頭を下げて喜ぶみもりの声を無視するように早歩きしてぶつぶつ口の中で呟く。
「だから、嫌いつってんのに……。
 ……めんどくせぇ……」



 同じころ、レン・オズワルドは集中しているパートナー、メティス・ボルトの顔を見て、そっと声を掛けた。
「そろそろか?」
「いいえ、全員にはまだ……
 皆さんあちこちに散っているみたいで、大体の方にテレパシー交信は出来たんですが……」
「そうか。まだ敵が現れている事も知らない奴等も居るって事だな。
 メティス……引き続き頑張ってくれな」
「はい」
「あのぉ……」
 メティスの後ろから声をかけたのは言うまでも無く北都だった。
「僕のパートナーを探しているんですが、ご存じないですか?」
 困り果てている北都の顔をみて、メティスは申し出る。
「……良かったらテレパシーでお探ししましょうか」

「ぴんぽんぱんぽーん 歩いておこしの、リオン・ヴォルカン様、リオン・ヴォルカン様
 お連れ様がお待ちです――」
 至極真面目な顔で、しかしややふざけたテレパシー迷子放送を送るメティスに北都は不安を覚えたが、どうやら上手くいったらしい。
 十分もしないうちに、彼らの元へ迷子が現れた。

「リオン! 初めての場所では僕から離れるなって言ったじゃないか!
 こっちはもう大変だったんだよ、何だか超感覚で耳を澄ませてると、聞こえてくるのは戦闘音ばかりだから禁猟区はって遠回りしたり……」
「北都……すみません……」
 しゅんとしているリオンを前に、北都は咳払いをすると小さく呟いた。
「でも一人で寂しい思いもしたみたいだし……犬耳もふもふは許してあげるよ」
「北都!!」

 北都の犬耳を思う存分もふもふするリオンを見ながら、レンとメティスは顔をほころばせた。
「何だか分からないが良かったな」
「ええ、御父さんが見つかって良かったですね」
「ち、ちがいますもうリオンくすぐった……あはは……」