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【黒髭海賊団】名も無き島の探索を

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【黒髭海賊団】名も無き島の探索を

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 イナンナの加護の下、レキはジャングルを進んでいく。
「待つのじゃ、レキ。そなたが容易く進めても、わらわが通れるとは限らん……!」
 地面に張り出ている根の傍を大きな歩幅で進んでいくレキに対し、身長差もあって、パートナーのミア・マハ(みあ・まは)は回り込んだり、よじ登ったりして追いかける。
 時折声を掛けるけれど、張り切った様子のレキは、ミアのことを忘れたかのように、すぐに2人の距離を開けて進んでしまう。
 レキ同様、船倉から借りてきたサバイバルナイフの重さも、体力の少ないミアにとっては、かなりのもので、次第にイライラしてきた。
 目の前に垂れ下がる蔦を見て、邪魔なものは切ってしまおうと、そのサバイバルナイフを振るう。
 切られた蔦の先が道の脇へと飛んで落ち、残る短くなった蔦からは、一粒の雫が、ミアの口元へと落ちてきた。
「む、甘い?」
 落ちてきた雫を反射的に舐めたミアが、ぽつりと呟く。
 水を貯え易い樹木があるのは知っているが、その水が甘いのは、樹液がその水に浸透しているのだろうか。
「本当だ、甘いね」
 立ち止まっていたミアに気付いたレキが傍まで戻ってきていて、蔦に手を伸ばすと、染み出る水を口に含んでいた。
「純粋な水ではないが、喉を潤したり栄養補給にもなるかもしれんな」
 『甘雫(あましずく)』と名付けたそれを後ほど持ち帰るために、大体の位置を地図に書き込んでおく。
 書き込み終えると、再びジャングルを歩き出した。
 変わった木の実を見つけると、レキはミアに木の下で受け取って欲しいと伝えて、木に登る。
 原色がマーブル状に幾重にも重なったヤシの実などを採取すれば、『喰えないヤシラ』とレキは名付けた。
 次に、毒々しい紫色で、口のような模様の入ったマンゴーのような木の実を取ろうと、木に登ったところで、虚から毛玉のような塊が出てきた。
「何かな?」
 そっと手を伸ばそうとしたところで、毛玉の間から大きな口が開いた。木々の合間から射す陽光が当たって、鋭い牙が光る。
「きしゃあっ!」
 声を上げながら毛玉が、レキの指先へと噛み付いた。
「わわっ!」
 驚いて、手首から先を降って、毛玉を振り落とす。振り落とされた毛玉は、宙でバランスを取り戻すと、枝に降り立ち、レキへと牙を向いた。
「木の実を貰ったら、すぐ降りるよ。キミの寝床を荒らすつもりはないんだよ」
 告げて、レキは相手を眠らせる術を放つ。
 毛玉はその術に包まれて、眠りにつくと、ころころと、虚の中へと転がっていった。
 その隙に、レキは木の実をいくつかもぎ取って、下で待つミアに向かって、落とす。
 彼女自身も木から下りた後、地図には木の実のことだけでなく、毛玉の生き物が居ることも添えた。



 食材や水源を探すことも重要だが、それらを採取・使用するためには、ジャングルの中の脅威――害獣を駆除しておく必要もある。
 そう考えて、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は、パートナーであり、恋人でもあるセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)と共に、ジャングルを探検しに足を踏み入れていた。
 木陰などに身を隠しながら、サバイバル訓練で得た知識を活かし、害獣の糞や足跡といった痕跡を探し歩く。
 そうして歩くうちに見つけたのは、大き目の四足歩行の獣の足跡だった。
「ここから先。更に油断禁物よ」
「分かってるわ、セレン」
 慎重に、神経を研ぎ澄ませて、2人は歩を進める。
 1歩、2歩と進んでいると、ふと、己らに狙いを定めている気配をセレアナが感じ取った。
 すぐさま2人は背中合わせに立ち、それぞれの死角をなくす。
「来るわ!」
 ガサリと、少し離れた場所の茂みが揺れて、大きな影が飛び出して来た。
 2人へと牙を向きながら迫ってくるのは、パラミタ虎より大きなトラだ。駆けて来る速度は、大きな身体の割に敏捷性に長けているように見える。
「ぐるああぁぁぁ!」
 低く吠え、大トラはセレンフィリティへと牙を向く。
 それを寸でのところで交わした彼女は、セレアナの力で聖なる気が宿った巨獣狩りライフルを構えて、狙いを定めた。
 頭部を狙って引鉄を引く。真っ直ぐと、放たれた弾丸は、大トラの頭部へと埋め込まれる。それでも致命傷には至らなく、大トラは軽く首を振ると、身体を反転させて、再びセレンフィリティへと狙いを定めた。
 大口を開け、セレンフィリティへと迫る大トラに向かって、聖なる気を宿らせた幻槍モノケロスを振るうセレアナは、敵の技を封じる技を放つ。
「がるぁっ!」
 大トラは、怯んで、一旦攻撃を止めるも、すぐ体勢を立て直し、2人を睨みつける。
「ふふ、このあたしの完璧な珠玉のボディ、傷つけられるのならやってごらん?」
 挑発するように、羽織ったコートを捲ると、その下に隠されていた扇情的な肢体を露にして告げる。
 ヒトであれば、その姿に目も眩みそうであるが、そこは野生の獣。美味そうな肉だと判断したか、三度大口を開けて、襲い掛かる。
 対して、再びセレンフィリティは巨獣狩りライフルから弾丸を放ち、セレアナは雷電を纏った素早く幻槍モノケロスを振るって大トラへと仕返した。
 それでも四足を踏ん張り、立つ大トラに向かって、セレンフィリティは狙いすました必殺の一撃を放った。
 大きな痛みが大トラを襲い、流石に力尽きて、どう、とその身を倒す。
「なかなか手強かったわね」
「ええ」
 額に浮かんだ汗を拭いながら頷き合う。
 一息ついた2人は、害獣はこれだけではないと、再びジャングルを歩き出した。