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【黒髭海賊団】名も無き島の探索を

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【黒髭海賊団】名も無き島の探索を

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●第2章 島を狙う海賊団


 美緒から依頼され、上空からの情報収集を行うことになった佐野 和輝(さの・かずき)は、事前に周辺の気象状況や海流の情報を用意し、パートナーのアニス・パラス(あにす・ぱらす)に解析をしておいてもらっていた。
 そして、その解析したデータを下に、フクロウの名を持つ、小型飛空艇オイレで上空へと上がり、他の海賊船などが近付いていないかの索敵を行い始める。
 アニスもタカの名を持つ、空飛ぶ箒ファルケに跨り、彼について上空へと上がるのだが、その前に、キュゥべえのぬいぐるみを式神化させるとジャングルの中の探索に向かわせた。



 島の反対側まで回ってみようと、セフィー・グローリィア(せふぃー・ぐろーりぃあ)は、ハヤブサの名を持つ、小型飛空艇ヘリファルテに乗り、海岸沿いに進む。
 穏やかだった浜辺も途中までで、次第に海岸沿いは岩場になり、丁度、山の裏に当たるところは崖になっており、強めの波が寄せては帰っている。
 崖の、更に先は入り江になっているようだ。
 セフィーは森の傍に降りると、小型飛空艇を木陰に隠し、森に身を隠しながら、入り江へと向かった。
 入り江に近付きそっと様子を覗いてみると、数隻の船が停まっているのが分かる。
 風でたなびく旗には、ジョリー・ロジャーが見えた。
(あれがこの辺で活動している海賊たちね。もっと情報が欲しいわ……)
 セフィーは辺りをきょろきょろと見回し、人気がないことを確認すると、一番手前の船へと忍び込んだ。



 背中に氷の翼を発現させた宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)は、海上を海岸沿いに時計回りに飛び始める。
 時折、和輝に連絡を取っては、他で海賊など不審な船を見つけたかどうかを問いながら、辺りを見て回った。
 山を迂回してみると、裏側は切り立った崖になっていた。
 寄せる波に濡れないよう、少し高度を取りながら崖沿いに進んでみると、窪みが見えてきて、入り江があるのが分かる。
「宇都宮よ。海岸沿いに、黒髭の船から山の裏側に当たるところまで来てみたわ。山の裏は崖になっていて、丁度中央くらいかしら、入り江になっているみたい」
『入り江に、と……今のところ他に入り江に向かうという連絡は来てませんね。向かわれますか?』
 通信機越しに和輝と連絡を取り合う。
「そう。もう少し辺りを見てからにするわ。それまでに誰かが向かうのなら、また連絡を頂戴」
 そう告げておいて、祥子は入り江には進まず、先に周辺を見て回ることにした。



 高性能 こたつ(こうせいのう・こたつ)は、コタツに入ったまま、パートナーの志方 綾乃(しかた・あやの)を乗せて、海岸沿いを探索し始める。
 コタツの布団が海水に濡れてしまうのは嫌なので、波を被らない位置を確保しながら進んでいく。
「大航海時代、船乗りに海賊以上に恐れられた壊血病には、ビタミンCが有効なんですよ」
 言いながら、綾乃はコタツの上に乗せられたみかんに手を伸ばす。
 更に、海辺に居るフナムシを観察しようとするけれど、コタツが進んでいくと、一目散に岩石の影に逃げ込んでいくために、近付いて観察するのは難しい。
 漸く観察できたフナムシに和んだ後、スキルの力で優れた視力を得た綾乃は、沖合いに目を向けて、海賊船が近付いていないか警戒をする。
 そうして進んでいるうちに、なだらかな斜面に差し掛かった。
「登ってみましょう。高いところからなら更に遠くも見渡せるかもしれませんし」
「分かりました。山なら端の方でも濡れませんしね」
 綾乃の言葉に、こたつが頷くと、1人を入れ、1人を乗せたコタツはゆっくりと山を登っていった。



 黒髭に、フォークナーに、自分たち。
 海賊や空賊の中でも有名どころが揃っているところから、海賊狩りが不毛な戦いを仕掛けて来るやも知れないと、リネン・エルフト(りねん・えるふと)はワイルドペガサスに乗り隠れ身を用いて、パートナーのヘイリー・ウェイク(へいりー・うぇいく)は白鱗の飛竜に乗った上でカモフラージュをして、『シャーウッドの森』空賊団からつれて来た伝令官1人も伴って、海岸沿いに反時計回りに岸辺を低空飛行で進み始めた。
 浜辺は徐々に岩石などが増えていき、次第に岩場になっていく。岩場は徐々に高度を持ち始め、島の正面に見えていた山に繋がった。
「山の裏側は崖になっているのね。海賊船は見えないようだけれど……」
 進みを止めて、崖の下を確認していると、通信機が着信を告げる。
『こちら管制。時計回りで海岸沿いを進んだ者から、入り江を発見したと報告を受けました。そちらからも見えてきているでしょうか?』
 通信機越しに和輝が訊ねてきた。
「まだ見えてはいないわ。山の上までは登ってきたけれど。崖の下には海賊船は居ないようね。その入り江が怪しいかしら?」
 リネンが話しているうちに、ヘイリーも辺りを見てみるが、他の船影はなく、益々怪しいのは入り江の中である。
「山の上から入り江がどのように続いているのか、確認してみるわ。追って連絡するわね」
『了解。こちらからも何か連絡が入り次第、連絡します』
 相手からの返事を待ち、通信を切ったリネンは、ヘイリーと共に、崖の上を入り江に向かって進む。
 そう時間の掛からぬうちに崖の切れ目が見えてきて、そこが入り江なのだと、分かった。
 入り江の奥へと目を凝らしてみれば、船影と旗が掲げられているように見える。
「キャラベルが3隻。本隊でなくて小隊かしら?」
「旗は……もう少し近付いてみないと分かり辛いね」
 より詳しく調査しようと、崖の上から距離を詰める。
 見えた旗は、ドクロと交差する2本の骨だけの一般的なジョリー・ロジャーで、何処の所属か分かり辛い。
「気づかれてはいないみたいね……このまま、中を見てくるわ」
 距離を詰めても、相手が外に出てくる様子はなく、リネンは内部調査を試みることを決意した。
 和輝に連絡を取ると、その旨、他の学生たちにも伝えると返ってくる。
 返事を訊いてから、伝令官とヘイリーに外で待つよう伝えてリネンは、謎の海賊船へと踏み込んだ。