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蒼空ヒーロー大戦・魔法少女DX!!

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蒼空ヒーロー大戦・魔法少女DX!!
蒼空ヒーロー大戦・魔法少女DX!! 蒼空ヒーロー大戦・魔法少女DX!!

リアクション



〜 蒼空ヒーロー大戦 Siene 2 前篇その1 〜
 
 
壮大な音楽とともにステージのスモークが左右に別れるように晴れ
序盤の司会進行の3人がステージに登場する
先方一番雷霆 リナリエッタ(らいてい・りなりえった)が自己紹介も含め、会場に挨拶をする(いつものお色気は封印)

 「会場のみんな!こんにちわぁ〜リナお姉さんでぇす。
  今日はぁ、皆集まってくれてありがとぉ!まずはみんなの元気な声が聞きたいな?
  というわけで、美羽お姉さんよろしくね!」

リナリエッタの言葉を受けて
【不思議の国のエプロンドレス】を纏った小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が元気な声で客席に呼びかける

 「それじゃ、まずお姉さんがやったように元気な挨拶をみんなもしてみようか?
  せ〜の、会場のみんな!こ〜んに〜ちは〜!!
  ………あれあれ?なんだか元気がないぞ?もう一回元気な声でごあいさつするよ!
  せ〜の! こ〜んに〜ちは〜!!」

元気な美羽の声につられ、元気いっぱいの声で挨拶の言葉を返す会場の反応を聞き
すっかり衣装のギャップを乗り越えたシリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)が続いて客席に呼びかける

 「よーしバッチリだ!みんな盛り上がってるみたいだな!今日ここで何が始まるか知ってるか?
  そう……【蒼空ヒーロー大戦!】だ!
  今日は兄ちゃん姉さんおっちゃんおば…おおっと、パラミタのヒーロー達がみんなのために集まってくれたんだ!
  オレ…じゃなくてシリウスお姉さん達に続いて、でっかい声で是非応援して活躍を見守ってやってくれよな!」

は〜い!という子ども達の反応を受け、それぞれが開演の諸注意を説明する
一通りお約束事を伝え終わり、……もとい【リナお姉さん】が次に進行を進める

 「それじゃあ、ヒーロー達に元気な応援ができるようにみんなで応援の練習をしてみようかしら?
  お姉さんたちも一緒に言うから、元気にせ〜ので『がんばれー!』って言ってみるわよ?
  美羽お姉さんもシリウスお姉さんもいい?」
 「もちろん!それじゃ行くよ!せ〜の!!」

 『がんばれー!!』

会場の子ども達の声が一つになり、会場が応援の声で響き渡る………がその時……


 『ふふふ、聞こえる、聞こえるわ!子ども達の元気で忌々しい声が☆』
 「んっ、この声……お前らは…!」

【シリウスお姉さん】が突如聞こえた声に反応し、声のしたステージの雛段を見れば
スモークとともに二人の人影が何やら見える、スモークが晴れると共に登場した悪役二人
綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)アリッサ・ブランド(ありっさ・ぶらんど)が名乗りを上げる

 「【悪の魔法少女すーさいど☆さゆみん】華麗に参上よ」
 「同じく【マジカルアーマーダークアリッサちゃん】素敵に参上だもん!」
 「でやがったな【悪の秘密結社オリュンポス】」

【シリウスお姉さん】の指差し付きの説明っぽいセリフを受け
ガンメタルのシルヴァーアクセをちゃらちゃらと弄りながら悪役っぽい笑みとともに返答する【魔法少女さゆみん】

 「夢は悪夢に代わり、明日は脆く、希望は儚く砕かれ、笑い声は泣き声に変わる
  ……この世で一番美しい光景よね、そんな応援の元気な声なんて聞きたくないわ」
 「というわけで、チビッ子さん達には怖い思いをしてもらおうかな?出でよ【黒ウサ戦闘員】ちゃん達!」
 「「ウサウサ〜!!ピョーン!!」」

【ダークアリッサちゃん】の命令にあわせ、独特な掛け声とともに舞台両袖から現れる戦闘員

芦原 郁乃(あはら・いくの)蒼天の書 マビノギオン(そうてんのしょ・まびのぎおん)アンタル・アタテュルク(あんたる・あたてゅるく)
そして鬼久保 偲(おにくぼ・しのぶ)の戦闘員4人共通の姿は顔の上半分を隠す黒いウサギの仮面
女性陣は黒いバニー衣装と黒のニーソックス……と掛け声と名前のストレートさそのままである
(ちなみに衣装デザインは演出の趣味ではなく郁乃達の自己申告だとここで補足しておく)

比較的【恐怖】より【萌え】を内包してるはずの彼女達の登場に子ども達がしっかり怖がっている理由は
補助的役割でBGM代わりに歌っている【魔法少女さゆみん】の【恐れの歌】の効果もあるのだが
確実にアンタルという強面の兄ちゃんが件のマスクを被り、同じ掛け声で登場している事もりゆうであることを述べておく

 「さぁ可愛い黒ウサちゃん達、会場の子ども達を襲い応援でなく恐怖の声で会場を埋め尽くすのだ〜!」
 「そんな事は私達がさせないんだから!」
 「おうよ!お姉さん達が応援だけしか出来ないと思ったら大間違いだぜ!」
 「そんな今時な戦う女の子を気取っても無駄よ!やれぇ!」
 「「ウサウサ〜!!」」

【ダークアリッサちゃん】の命令で会場を襲撃しようとする【黒ウサ戦闘員】の前に立ちはだかる美羽とシリウス
かくて【ダークアリッサちゃん】の合図により司会と戦闘員の戦闘が開始される

 「大変!なんだかお姉さん達が【オリュンポスの黒ウサ戦闘員】と戦う事になっちゃった!
  お姉さんが負けないようにみんなで応援してあげてぇ!」

一方で司会としての本分を全うするリナリエッタこと【リナお姉さん】
目の前で繰り広げられている戦闘を見ながらアリッサは何気にさゆみの傍まで近づき小声で話しかける

(『ちょっと!……美羽ちゃん達、リハーサルよりやる気満々なんだけど!?っていうか勝つ気でいない?』)
(『もともと二人とも戦いたいって自己申告あっての構成だったから……それに負けるの嫌いだから』)
(『っていうかなんか微妙に殺陣変ってるし!?シリウスちゃんマジ勝つ気でいるよ!どうしようさゆみちゃん!
  ちゃんと負けてつかまってくれないと段取りが進まないよ!?』)
(『大丈夫よ、アリッサさん!ちゃんと予測済みだから……ぼちぼち対応役が動いてくれるハズ』)

さゆみの言葉通り
司会二人の眼がややマジになりかかり、戦闘員達が困惑の顔になる直前の絶妙のタイミングで客席側から声が響く

 「はいはいお二人さんそこまでや〜!大人しくしてもらおうか?」
 「な!?お前は!!」

不意の声に【シリウスお姉さん】が声のした方を見ると
悪役担当の瀬山 裕輝(せやま・ひろき)が嫉妬と書かれたマスク姿で客席のど真ん中に悠然と立っている

 「デパートの屋上からショーまで。モテない人と持たざる人の味方【妬み隊・嫉妬マスク】参上!
  ククク、この会場はオレ等が占拠した。お姉ちゃん達、大人しくせぇよ!?」

台本外の展開(といっても司会二人以外はトラブル対応として実は把握済み)に戸惑い、動きが止まる美羽とシリウス
その【ドッキリにはまった的】な顔が面白かったのか、楽しそうに言葉を続ける【嫉妬マスク】

 「必要以上に目立つような事は嫉妬のプライドにかけてさせへんよ?
  さ、ウサちゃん達、まずは大暴れできんようお姉ちゃん達を取り押さえてもらおうか?」
 「ちょ!?私なんもしてないわよ!?なんで私まで!」
 「当たり前や、こうなった以上一人見逃すわけにもいかんやろ?」

戦った二人の司会だけでなく、リナリエッタまで取り押さえられ困惑する本人の抗議に悠然と答える某悪のマスク
すっかり場の支配が彼を中心に回り始めた中、自覚なしに芝居をすすめる裕輝である

 「というわけで、この会場の諸君らにはオレ達の仲間になってもらうで?
  嫌とは言わせへんよ〜いやいやむしろ自ら進んで仲間になってくれる事間違いナシや、これからする事を見ればな」
 『……………は?………へ……ええ!?』

戻った流れがまた変な方向に進み始める予感とともに、段取りを聞いてない全員
ただ一人、いそいそと【嫉妬マスク】の命令で偲扮する戦闘員が舞台袖に引っ込み、申し訳なさそうに持ってきたのは
大きなバケツに並々と注がれている水であった。その超展開に驚く司会娘3人の声が見事にユニゾンする

 「さて、そんなお客さんPRな格好が水に濡れたらどうなると思う〜?
  思春期階段まっしぐらな子ども赤面、お父さん大喜びなセクシー路線の誕生や!それが嫌ならさっさとヒーローを」
(『!? いけない!アリッサさん急いで離れて!!』)
(『え?あ、うん!!』)

何かを感じて呼びかけられたさゆみの言葉にアリッサが急いで乗っていた【空飛ぶ箒】を上昇させた瞬間
足を滑らせた偲が司会3人に盛大にバケツの水をぶっかけた
その派手さたるや、さゆみの助言がなかったら悪二人も巻き込まれる勢いである
その惨状を見つめ、ため息とともにさゆみが客に聞こえないようにアリッサに話しかける

(『危なかった。こういう時って多くの人が望むミラクルなトラブルが絶対起こるのよ……』)
(『た、助かった……けど、どうしようこれ……』)

しょっぱなから想像の斜め上を行く展開に混乱する悪二人
しかし、ふと見ると舞台袖でADの林田 コタロー(はやしだ・こたろう)がスケッチブックをこちらに掲げている
そこには林田 樹(はやしだ・いつき)の文字が書き殴られていた

 【あの馬鹿もろとも司会を全員連れ戻せ!あととにかく戦闘員に会場襲撃をさせろ!】

その文字に込められた怒りのオーラを察し、あわてて即興でセリフを言う苦労人の悪【魔法少女さゆみん】であった

 「よ、よくやった嫉妬マスク!そのまま司会のお姉さんは人質だ!連れて行け〜!
  そして黒ウサちゃん達はすぐに会場を襲うがいい!さっさとやれ!やれったらやれ〜〜〜〜!!」



 「……あんの馬鹿!!戻ったらマイクの確認しないと、全部おシャカなら絶対弁償させてやる!」

オペレーター席で怒りに震える音響担当林田 樹(はやしだ・いつき)
そのヘッドセットに舞台袖にいるコタローからの通信が入る

 『ねーたん、ぶたいにしかいがいないお?どうするお?』
 「担当が一人繰り上がるけど仕方ない、七海出して!」
 『ええ!?そ、そんないきなり?いいいいい、一体どうすれば?』
 「すぐにヒーロー呼び出してかまわない!ここはリネンに流れを戻してもらう!頼む!」
 『は、はいっ!!』

鍵谷 七海(かぎや・ななみ)の声とともに通信が切れると同時に、別の通信モニターのスイッチを入れる
すぐに舞台監督の風森 巽(かぜもり・たつみ)が映し出される、その後ろの舞台裏手も慌ただしくなっていた

 「巽、とりあえず代理のMC出させた!キャストのスタンバイはどう?」
 『いつでもOKだ、大幅な流れが変わっているわけではないからな、ここから立て直せる
  キッカケのBGM入ったらすぐに出させる、よろしく』
 「了解……あとは七海が頑張ってくれれば……」



そんな図らずも重要な役回りを担うことになってしまった七海本人は……舞台上で真っ白になっていた

 「あ……えっと、みんな、あれ?お友達……じゃなくて、えっと」

まぁ誰もがバタバタしてるところに目の前には大勢の観客の目線である
練習したものを出すのが精いっぱい所が全てが白紙になった事態なのだから無理もない
しかも大人の半分は、ちょっとしたトラブルを察して期待の眼を向けているのである

(「ど…どうしよう、言いたい言葉が頭から出てこないよぅ……」)

半ば泣きそうな体で胸元に手を当てると、何か固いものが当たる感触があった
そこでようやく、七海は自分がヘッドセットを首にかけている事を思い出す
それは出番直前で緊張している彼女を心配してパートナーの山下 孝虎(やました・たかとら)がお守り代わりとして
首にかけてくれた物だった……何かあったら使ってみろという言葉つきで

それが何なのか、余裕のない七海は確認してなかったのだが
ここで思い出した今、藁をもすがる思いで頭に装着する
ただのヘッドセットなのだろうが、それだけで勇気が湧いてくる気がして強い意志とともに彼女は顔を上げる

溢れる勇気と自信が彼女の中で漲ってくるのを実感する……というか、本当に漲ってきている?

 「ようっっっっっし!会場のみんなぁ!
  このままじゃ会場が恐怖と悲しみに支配されて、折角来たショーがつまらなくなってしまうよっ!
  みんなはそんなものを見に来たわけじゃないよねっ!
  だから、みんなのヒーローに会いたいという心を一つにして大きな声でヒーローを呼ぶよ!
  みんなの声を聞けば、誰か必ず来てくれるのがヒーローだっ!
  だからありったけの声で叫んでみるんだっ!せ〜の!!」
 『ヒーロー!!』

会場の子ども達の声が一つになって響き渡る、しかしそんな事で満足しない七海

 「駄目だ駄目だ!もっと大きな声でもういちど、元気よくっ!いくよ〜! せ〜のぉぉぉぉぉ!!」
 『ヒーロー!!』 

ここまでの展開で一番大きな声が会場内に響き渡る
その大音響にガッツポーズで答える司会のお姉さん・鍵谷 七海
そのさっきまでと180度変わってしまった姿が、頭に装着している【熱狂のヘッドセット】の効果である事なのは
舞台袖でこの光景を満足げな笑顔で見ているパートナー……それを渡した孝虎しか知らない事実である



 「……なんだか煽り過ぎのような気もするが、上々だ!進行を進める!」

強引ではあるが、戻った流れを確信して樹は次のヒーローの音源のスイッチを入れる
刹那、ステージに最初に登場するヒーローの登場音が響き渡った