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タイムリミットまで後12時間!?

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タイムリミットまで後12時間!?

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終 章 魔女の言葉


「それで、アンタは何? アタシは疲れているんだけど!!」

 レイシアはイライラしながら、近づいてきたイングリット・ネルソン(いんぐりっと・ねるそん)に文句を言う。
 イングリットは一呼吸して、レイシアに尋ねた。

「あなたはこの先もこんな事をするの?」
「んふふ〜、当たり前じゃない。……アタシの人形を求める人がいる限りね。人間どもは愚かだし、欲望は果てがないのよ。アンタらが考えるより、ずっと! ずっとね!!」

 罵声を吐くようにして、レイシアは言い放ち、屋敷に向かって歩き出す。
 何て人なの……。
 イングリットは黙っていた。
 だが、魔女は屋敷に入る前に一度振り返り、向こうで騒ぐ生徒らを見た後でこう言ったのだ。

「それでも、殺戮が目的のモンスターを生み出すよりは、遥かにいいでしょ。ビスクドール造りって……。それに、人間どもも思ったよりはずっと良いものね。愚かだけど……、アンタらが考えるより、ずっと、ずっとね。」

 それは、聞こえるか、聞こえないくらいの声だった。
 屋敷の扉は音を立てて閉まる。
 その夜、もう彼女が出てくる事はなかった。

「…………。」

 イングリットは、踵を返すと生徒らの元へ向かう。
 騒ぎの源だ。
 そこには名札のついた、何体かのビスクドールが置かれていた。
 今回、誘拐されて、人形にされた者の精巧な人形である。

「これは先輩の……。」

 イングリットは、泉 美緒(いずみ・みお)の人形を手に取った。
 繊細ながら壊れやすく、見たものの心を癒すような優しい表情の人形だ。
 周りでは生徒らが輪になって、今回の事件や人形について話し合っている。

「やっぱり、俺様のような男の人形が造られてはいないではないか!!?」
「もう……心配したんだからね。いつだって駆けつけるんだから。」
「泣くなら、自室に戻ってから一緒に泣きましょう。ありがとう、マリカさん。わたくしも怖かったわ。」
「お小遣いの範囲でケーキ奢ってあげる。」



 様々な声の中、イングリットは魔女の言葉を繰り返す。





【殺戮が目的のモンスターを生み出すよりは、遥かにいいでしょ。】





 ヴァイシャリーの魔女レイシア。
 ……彼女は、明日もビスクドールを造り続けるのだろう。










担当マスターより

▼担当マスター

サナンダ アナンダ

▼マスターコメント

 サナンダ アナンダこと、サナアナです。
 第七回目となる、今回のシナリオに参加してくださった方々、本当に有難うございました。

 本シナリオは太宰治の「走れメロス」が題材でした。
 限られた12時間という時間の中で目的を達し、囚われた泉美緒達友達を救う……。
 そんな切羽詰まった緊張感を目指したのですが、どうだったでしょうか。

 参加者の他に、最後まで読んでいただいた方おりましたら感謝致します。
 それでは、また次の機会がありましたら、宜しくお願い致します。