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イコン博覧会2

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イコン博覧会2
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博覧会

 
 
「それじゃ、会場の配置は、旧西シャンバラ展示場跡に各学校のベーシックモデル展示ブース、旧東シャンバラ展示場跡に個人ブースやその他のイコンのブースとバザーなどね。デコトラレースは、この会場をスタートゴールとして、空京メインストリートを一周。これはだいたい、昼前後の時間になりますから。その後、午後になってから、広場で演舞。模擬戦は、周辺への影響を考慮して、空京から離れた何もない場所で行われます。大半の中継スタッフは、そちらへ移動するので後はよろしくね。空京全体の警備は強化されているので、前博覧会のような事件は起きないと思いますけど、気は緩めないようにね」
 シャレード・ムーン(しゃれーど・むーん)が、会場警備担当の各位に告げた。
「了解しました。念のために、各ブースを回ってくることにします」
 ロイヤルガードの制服を着た樹月 刀真(きづき・とうま)が、事務局のテントを後にする。白いロングコートの制服はよく目立つが、それは一つの抑止力として不審者を警戒させてあぶり出せるだろう。
 
「ヴィンセント、聞こえる?」
 館内放送のブースに陣どったリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)が、各地区のモニタに目を走らせながら言った。
『感度良好です』
 専用回線から、ヴィゼント・ショートホーン(びぜんと・しょーとほーん)の通る声が返ってくる。
「もう開場時間は過ぎたって言うのに、まだフィスは見つからないの?」
『申し訳ありません。すぐに見つかると思ったんですが、さすがに会場が広すぎて……』
「言い訳なんか聞きたくないわよ。隅々まで探して。でないと、今日の大会は、フィスが襲撃犯ってことになっちゃうんだから」
 申し訳なさそうに言うマイクのむこうのヴィゼント・ショートホーンにむかって、リカイン・フェルマータが叱った。
 本来なら、不測の事態に備えての警備であるのだが、リカイン・フェルマータたちにとっては警戒対象があまりにも明白すぎた。彼女のパートナーのシルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)である。
 なにしろ、アレルギーと呼んでもいいほどのイコン嫌いだ。過去に、リカイン・フェルマータのイーグリットを茨ドームの遺跡内でぶち壊したという前科がある。そんな彼女の姿が忽然と空京で消えたというのは、どう考えてもイコンに八つ当たりに行ったに決まっている。これは、危険だ。
「それでなくても、もし人様のイコンに傷でもつけて修理代でも請求されたら……。ああ、恐ろしい。そんなことになる前に、絶対に見つけだしてふん縛るのよ」
『もちろんです。自分にお任せください、お嬢』
 リカイン・フェルマータの命令に、ヴィゼント・ショートホーンが自信を持って答えた。
 
 警備本部には、各エリアの情報収集や見回り要員と共に、イコン規模のトラブルに対処するために、有栖川 美幸(ありすがわ・みゆき)の乗る不知火・弐型も待機していた。
『モニタ、できているであろうな』
「はい。しっかりと菜織様をトレースしています」
 彩音・サテライト(あやね・さてらいと)をだきかかえるようにして連れた綺雲 菜織(あやくも・なおり)が、モニタ越しにカメラ目線で通信を入れてきた。会場内の監視カメラからの画像データは、不知火・弐型からもアクセスできるようにネットワークを組んでもらっている。綺雲菜織から指示があれば、画像解析データを人物ファイルと照合して不審者を割り出す手はずになっていた。
『じゃあ、しっかりと頼んだのだ。私は、彩音と一緒に、各ブースを回ってくる』
「行ってらっしゃいませ、菜織様」
 移動していく綺雲菜織と彩音・サテライトの姿をモニタで追いながら、有栖川美幸が言った。