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ジャウ家の秘宝

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第7章 秘宝?

「ねえ君たち。教えてくれないかい? 秘宝について。どこにあるのか、どんなトラップがあるのか」
 ジャウ家の庭で、エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)は植物たちに話しかける。
 メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)も、自らの感覚を鋭くして、少しでも秘宝の情報を得ようとする。
(だめ だめ だめ)
(忠義 忠義 忠義)
(私 たちは)
(ジャウ家の ために)
「……立派な忠誠心だね」
 エースははぁとため息をつく。
 植物から伝わってきたのは、きっぱりとした拒絶。
 この庭の植物は、ジャウ家のためという想いを強く持っているらしい。
 そこまで植物から忠誠心篤く慕われるジャウ家に僅かに驚きながら、エースは遠目で見た兄弟に思いを馳せる。
 若き当主の姿を自分に重ね、くすりと笑う。
「さあ、探しに行こう。どんな植物が守っているかも気になるしね」

 それは驚くほどあっさり見つかった。
 庭園の奥。
 蔦や植物をかいくぐったその先には、いかにも秘宝が収められていそうな小さな祠があった。
 植物からうまく逃げのびたエースとメシエ、セレンフィリティとセレアナ、そして蔦から力づくで脱出したラルクら一行は、その祠の前に立っていた。
 ちなみに、蔦に襲われていた佐倉 留美や雨宮 七日らはラルクと『闘神の書』とガイの三人によって救出され、ジャウ家で休ませてもらっている。
「さあて、いよいよ秘宝をこの目で拝める時が来たぜ」
 今までの苦労もこの一瞬のため、と眼を輝かせるラルク。
「意外に簡単だったわね。もうちょっと探しがいがあるかと思ってたのに」
「そんなに上手くいくかしら……」
 あくまでも楽観的なセレンフィリティに、どこか懐疑的なセレアナ。
「もし、秘宝が見つかったならまず分析だな。何か問題を起こすようなものではないかどうか。その後、ジャウ家の当主に渡そう」
「え……」
「えーっ」
 エースの言葉に驚きを隠せないラルクとセレンフィリティ。
 特にラルクの落胆ぶりは著しい。
「だって当然だろう。財宝の管理責任は当主にあるんだから」
「まあ、気持は分からないでもありませんけどね」
 涼しい顔で正論を唱えるエースの隣りで、メシエが小さく笑う。
「さあ、開けてみよう」
 エースは祠の扉を開く。
「あれ……」
 そこには、何もなかった。
 からっぽの空間があるだけ。
 何故、ここに秘宝がないのだろう。
 誰かが先に盗んで行ったのか。
 それとも…… 見ている者たちの間に、疑念が膨らんでいく。