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金の道

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金の道

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――長い長い金の道、その半ばにて、セイニィ・アルギエバ率いる防衛隊は、盗賊団たちとの激しい攻防戦を続けていた。

「こいつらぁ、一人一人は弱い癖に大勢になると中々やるじゃないっ!」

 戦闘の最前線に立つセイニィは、一人で五、六人の盗賊団たちを相手に猫を思わせる俊敏な動きで大立ち回りを演じる。

「みんな、もう少し踏ん張るんだっ!」

 武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)が声を出し、周りの士気を上げながら行動予測で盗賊たちの動きを読み、セイニィを死角から狙う攻撃を防いでいく。

「上がお留守ですよ!」

 シャーロット・モリアーティ(しゃーろっと・もりあーてぃ)氷術を使い、セイニィたちとの戦闘で前ばかり見ている盗賊団の頭上に、地下水を凍らせた氷柱を落としていく。

 それぞれが十分な威力と、そしてコンビネーションを伴った素晴らしい攻撃――ではあるのだが、何故かセイニィたちは追いつめられていた。

「もおっ! こいつらどこから湧いてくるのよ!?」

 倒しても倒しても、また現れてくる盗賊団たち――

「もしかして、他の防衛者たちが突破されているのかな……?」

 後ろで援護をしているコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が、不安そうな顔でパートナーの小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)に尋ねる。

「入り口以外にも、金の道に入れるルートがあるのかもしれないよ。あんまり暗い想像ばかりしちゃダメっ、コハク!」

「う、うん! 分かったよ」

 美羽に励まされ、気を取り直したコハクは防衛隊全体にゴッドスピードをかけ、素早さを急上昇させる。

「オラの体に力がみなぎってくるっ!!」

 美羽はゴッドスピードに加え、さらに黄金の闘気を駆使する。すると、体に黄金色の闘気がシュワンシュワンという音を出しながら纏わり始め、髪の毛も黄金に逆立ち始めた。

 シュタン

 わずかな跳躍音だけを残し、美羽が戦闘の最前線へと躍り出た。そして、瞬間移動を思わせる素早い移動を繰り返し、凄まじいラッシュを盗賊団たちに叩き込む。

「ウラウラウラウラァアアッ! これはセイニィの分っ!!」

 渾身の力を込めた美羽の蹴りがヒットし、インパクトの中心部分から盗賊団たちがドミノ倒しの要領で倒れていく。

「なんかあたし、もう亡くなった人みたいじゃなぃ?」

 少し不満げそうな表情を見せたセイニィだが、すぐさま美羽の動きとシンクロし、二人で盗賊団たちを圧倒する。

「……あれが武道を極めた者同士が同じポーズで接触し、力を融合させるという究極融合か……」

どこからともなく姿を現した紫月 唯斗(しづき・ゆいと)が、一人納得したように呟いた。

「融合……甘美な響きだとは思わないですか、北都様?」

 セイニィたちの後ろで怪我人をヒールで回復させていたクナイ・アヤシ(くない・あやし)が、パートナーである清泉 北都(いずみ・ほくと)の手を取り、流れ矢でわずかに指から染み出た血液を舌で舐め取ながら妖しく呟いた。

「ちょ、ちょっとクナイ……今は戦闘中なんだから後にしてくれないか」

「ふふっ、これはいいことを聞きました。つまり、戦闘中でなければ問題ないという訳ですね……」

――なにはともあれ、ここに来て数に勝る盗賊団を相手に徐々に盛り返し始めたセイニィたち。このまま順調にいけば、アムリアナの聖廟を守りきり、金の道の本当の姿を目にする事が出来るだろう……。

「ちょっと待ちなあっ!!」

 盗賊団をだいぶ倒し終えたセイニィたちの前に、洋館で姿を消していた白津竜造が突如として現れた。

「ようやく会えたぜ、セイニィとそのお仲間さんたちよぉ!」

「なによぉ、あんた?! あたしたちに一人で挑むなんて正気なの?」

「ははっ、連戦で疲れ切った猫たちなんて数に入らねえぜ! てめえら、全員でかかってこいよ!」

 セイニィの挑発に挑発で返した竜造は、ゴッドスピードアルティマレガースで急激に俊敏性を上昇させ、さらに金剛力ウェポンマスタリーで攻撃力をも急上昇させる。

「セイニィを侮辱するのは俺が許さないぞ!」

「私も好きな人をここまで言われて黙っていれませんわっ!」

 牙竜とシャーロットがセイニィのために立ち上がり、竜造に攻撃を仕掛ける。が……、

「はははっ! 疲れで動きが止まって見えんぞ」

 竜造の持つ凶剣『梟雄剣ヴァルザドーン』が、二人を薙ぎ倒す。

「シャーロットっ! 牙竜っ!」

 セイニィが吹っ飛んだ二人に駆け寄ろうとするが、その隙を竜造は見逃さない。ヴァルザドーンのキャノン砲がセイニィを狙い打つ!

「危ないっ、セイニィ!!」

 物陰で様子を窺っていた紫月が、咄嗟にセイニィを突き飛ばして、自分がレーザーに直撃してしまう。

「くっ……最後にセイニィの腰の感触が味わえて良かったぜ……」

 紫月はそう言いながら、地面に崩れ落ちた。

「もぉ……あんたはいつもそうなんだからぁ!」

 突き飛ばされたセイニィは、悲しそうな表情を一瞬だけ見せたが、すぐに竜造の方に向き直り、彼を睨みつける。

「あたしの大切な人たちを傷つけて……もぉ絶対に許さないんだからねぇ!」

「ひゃはっはぁああ!! いいぞ、もっと怒れセイニィ! そうだ、俺は強い奴と戦いてぇんだっ!! そのためもっと怒れ、もっと心の底から怒るんだっ!!」

 竜造はそう言って、手薄となった洞窟の通路を突っ切り、そのまま奥にあるアムリアナの聖廟へと猛スピードで向かっていく。

「こ、このぉ! あいつ、聖廟まで傷つけるつもりなの?!」

 怒りに燃えるセイニィは、竜造の後を追って金の道の奥へと進んでいった……