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【WF】千年王の慟哭・後編

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【WF】千年王の慟哭・後編

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 一方、その頃。
 霊廟の外へと向かっていた契約者たちは、フロアを抜けて表に到着していた。

「何人か来てくれたのか」

 戦いの準備を進めていた佐野和輝は、戻ってきた仲間たちの姿を見つけてそういった。
「敵の増援は?」

 桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)は和輝たちの元へ駆け寄ると、現状を把握するために話を聞く。
 和輝は偵察に出している従者たちからの情報を仲間たちに伝えた。

「ねえ、小型飛空艇ってない?」

 と、ルカルカ・ルーが和輝にそう聞いた。

「小型の飛空艇か……よく調べてはないけど、乗ってきた飛空艇の中に緊急脱出用のがあるかもな」
「わかった。調べてみるわね」
「あっ、おい! まさかそれで敵の集団に突っ込む気じゃないだろうな!?」
「そんなことしないわ。私たちはティフォンを迎えに行くのよ!」

 ルカルカはそういうと、ダリルを連れてここまで乗ってきた飛空艇を調べに向かう。
 そんなルカルカたちを見て、柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)がぽつりとつぶやく。

「俺も調べてみるか……敵と戦うんなら空を飛べた方がいいしな」

 そして恭也も飛空艇を調べに向かった。


                                        ***


 飛空艇の内部。
 小型飛空艇を探していた者たちは、それぞれ乗り物を見つけて駆け寄っていく。

「行くわよ、ダリル。ティフォンの元まで案内お願いね」
「ああ、まかせてくれ」

 小型飛空艇ヴォルケーノに跨ったルカルカとダリルはそんな会話を交わすと、エンジンを吹かしてティフォンを迎えに行くために飛び出していく。

「俺はこれを使わせてもらうぜ」

 恭也はそういうと、小型飛空艇ヘリファルテの操縦桿を握りしめ、表へと飛び出した。 そして空に舞い上がると、遠くの方にいくつかの黒い影が見えた。

「どうやらティフォンより早く、別のお客さんが到着したみてぇだな」

 そうつぶやいた恭也は、下の仲間たちに向かって敵の襲来を告げる。
 それを聞いて、契約者たちは戦闘態勢に入った。

「敵の数はこちらよりも多い。油断しないで挑もう」

 和輝はそういって、周囲の仲間たちを見回す。
 仲間たちはそれにうなずいて答えた。

「行くぜ……!」

 恭也はヘリファルテのエンジンを全開にして、敵集団へと向かう。
 そして、通常の小型飛空艇の2倍のスピードで翔けるヘリファルテは、あっという間に敵の元へとたどり着いた。

「全部で6隻か……まあ、あのデカイ千年王を運ぼうってんだ。数はいるか」

 恭也はそんなことをいいながら、機晶爆弾を一隻の飛空艇に向かって投げつけた。
 すると爆弾は飛空艇の外部装甲に当たり、爆発を起こして大きな穴をあける。
 それを確認すると、恭也はワイヤークロー剛神力を穴に向かって打ち込み、ワイヤーを素早く巻き上げて飛空艇に近づいていく。
 だが、相手も黙ってそれを見ているわけではない。
 攻撃されたことで敵の襲来を知ったWFの構成員たちは、穴の開いた場所に集まり、手にしていた短機関銃を撃ちまくる。
 だが恭也はそのまま近づくことを止めず、ある程度の距離に近づくとヘリファルテから飛空艇に開いた穴に向かってジャンプした。
 ゴロゴロと転がるようにして飛空艇内部へと躍り込んだ恭也。
 彼はすぐさま態勢を整えると、近くにいた敵に携行用パイルバンカーを叩き込んだ。

「この飛空艇は頂くぜ、悪党共!」

 そしてそう宣言した恭也と敵の乱戦がはじまる。
 一方。
 味方の飛空艇が攻撃されたのを見て、警戒を強めていた他の飛空艇のレーダーに多数の熱源反応が近づいてくる。
 内部にいたWFの構成員がそのことを慌しく報告していると、飛空艇に衝撃が走った。

「目標WF飛空艇群。第一波、命中。次の攻撃へと移行します」

 スナイプの技術を使い、地上から敵飛空艇の機関部を狙ってミサイルを発射したヴァイス・フリューゲル(う゛ぁいす・ふりゅーげる)は、今度は別の飛空艇に狙いを定める。

「――照準完了、全弾発射」

 展開した六連ミサイルポッドから再びミサイルを撃ち放つヴァイス。
 彼女は敵の動きをつぶさに観察し、持てる武装をフルに活用して敵の進軍を止める。
 そんなヴァイスの攻撃の前に何隻かの船は、炎を上げた。

「今がチャンスだッ!」

 それを見た練は背中から氷の翼を発現させ、手にした大剣・ヴァルナガントを握りしめて空へと舞い上がる。

「うおおおおおッ!」

 炎を上げている飛空艇へと近づき、練はヴァルナガントを振り上げた。
 そしてウェポンマスタリーの剣技、アンボーン・テクニックの魔力による身体強化、サイコキネシスで剣を加速させた必殺の奥義、真・雲耀之太刀で敵飛空艇を一刀両断する。
 ラヴェイジャー・練の破壊力のある一撃は、稲妻の如き速さで船体を断ち、飛空艇は爆発炎上していく。
 そんな飛空艇の惨状を見て、敵たちは強行突破を試みる。
 残っていた4隻の飛空艇は一斉に速度を上げ、霊廟に向かって突っ込むように進む。
 そして搭載していた人員を予定よりも早く地上へと投下し、契約者たちの制圧へと向かわせた。

「来たな……!」

 拠点からその様子を見ていた佐野和輝は両手に握っていた曙光銃エルドリッジを構え、拠点の守備と管理を親衛隊にまかせて敵を迎え撃つために前へ出る。

「第1シーケンス終了、これより第2シーケンスに移行」

 持てる弾丸を撃ち尽くしたヴァイスはそういうと、全パーツをパージしてユル=カタブレードをその手に握る。

「オーバードライブ起動。WF構成員を無力化します」

 ――兵は神速を尊ぶ。
 戦う者としてその事をプログラムされているヴァイスは、その場から素早く動き出し、地上へと降り立った敵へと急接近していく。