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危険な香りを退け、汚部屋住人を救出しろ!

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危険な香りを退け、汚部屋住人を救出しろ!

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「しかし、ここまで汚いのは久しぶりに見たかも知れないのぅ」
 ルファン・グルーガ(るふぁん・ぐるーが)は城に足を踏み入れるなり、苦笑を浮かべた。
「ダーリン、書斎を片付けに行くよ!」
 イリア・ヘラー(いりあ・へらー)は近くに転がっている本を丁寧に拾い上げ、埃を払う。「うむ。本を元に戻さねば」
 ルファンも本を拾って埃を払った。ごみに混じってたくさんの本が散らばっている。この様子ではおそらく本棚は機能していない。忙しくなりそうである。
 二人は本を拾いながら朋美達が発掘した道を歩き、書斎に向かった。

 書斎。

「まずは換気じゃ」
「開けるよ」
 ルファンとイリアは書斎に到着するなり一斉に窓を開け放った。
 この部屋には久しぶりと思われる新鮮な空気が室内に入り込んでくる。
「……本棚は。うわぁ、埃ばっかり」
 本を棚に並べる前に指でなぞってみるとべったりと埃。
「ダーリン、少し持ってて。本の置き場所を綺麗にするから」
 イリアは自分が抱えていた大量の本を一時ルファンに預け、椅子を掃除した。
「どこもかしこも埃まみれじゃな」
 綺麗な場所は数ミリも無い室内にルファンは苦笑しか浮かばない。
「綺麗になったから本を置いて大丈夫だよ!」
 掃除を終えたイリアはルファンに言った。
 二人は絶妙なバランスを保ちながら大量の本を全て椅子に置いた。
 それから二人は本棚と机に別れて掃除を開始。
「よーし!」
 イリアは一段ずつ埃やごみを払い、綺麗に拭いていく。『清掃』を持つイリアによって本棚はみるみる本来の姿を取り戻していく。
「……聞くと見るとは違うのぅ」
 ルファンは机に散らばる紙類をまとめる。
その際、オルナの凄まじい悪筆を目にする。ササカから聞いてはいたが、その予想を上回る悪筆さ。紙類が終われば、机上の埃やごみを片付け、丁寧に拭いていく。

 二人が掃除を始めた頃、
「手伝いに来たよ」
 シオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)月詠 司(つくよみ・つかさ)ミステル・ヴァルド・ナハトメーア(みすてるう゛ぁるど・なはとめーあ)を引き連れ、掃除兼物色をしにやって来た。
「……大変そうですね。お手伝いします」
 司はぐるりと部屋を見渡してからゆっくりと床に散らばる紙類を拾い始めた。
「ありがとう! 紙類はまとめてから机だよ」
 イリアが司に拾った後の事を指示した。その間も本棚を掃除している。
「これは楽しい予感♪」
 シオンは床に転がっている眼鏡ケースを発見し、開けて見ると中に入っているのはただの色眼鏡。しかし、『博識』を持つシオンにはただの色眼鏡ではない事はお見通しだ。
「……」
 静かに足音を立てずに屈んで紙類を拾っている司の背後に忍び寄り、色眼鏡を装着。
「えっ、ちょ……逢儚」
 驚いた司は顔を上げるも表情から正気が消えてベッドに向かってぼそりと誰かの名前を呟いたと思ったら拾った物を机に置き、ふらりと部屋を出て行った。
「ん? ツカサ。ねぇさまの本体の方と同じ名前を言ったような。ごめんね、ワタシ、ツカサを追いかけるよ」
 シオンは司が呟いた言葉が気になるも急いで出て行く司を追った。
「気を付けてね」
 イリアは掃除をしながら見送った。
「慌ただしいのぅ」
 ルファンも見送り、自分がまとめた紙類と司が拾った物をまとめた。
 すると新たな客達がやって来た。

「匂いの脅威にも負けず、我々、葛城探検隊はごみ屋敷の住人の書斎に到着したであります! 散らばる本、残された暗号! 住人は一体どこに!?」
 周囲に散らばる本や紙類を見て危機迫る調子で解説する吹雪。
「……暗号ってただの悪筆なメモ」
 吹雪に冷静なツッコミを入れるコルセア。きちんと観察と記録は怠らない。
「さらに奥へ進むであります!」
 一通り観察が終わるなり、吹雪はコルセアと共に別の部屋へと向かった。ルファンとイリアが声をかける隙間はなかった。

「……探検隊?」
 思わず吹雪が言った言葉を口にするイリア。少し変わった登場に驚いた。
「……賑やかじゃのぅ」
 ルファンもあっという間の出来事に言葉を洩らす。司達が来たと思ったら今度は吹雪達。書斎はなかなか人気スポットのようだ。

 最後に登場したのは
「洗濯物は無いか?」
 洗濯物を回収しに来たダンだった。手に持っているかごには溢れるほどの洗濯物があった。ここに来るまでに脱ぎ捨てられた服を数多回収したのだ。
「あるよ!」
 イリアは勢いよく答え、散らばっている服を手早くダンに手渡した。
「なかなか多いな。他にはあるか」
 他には無いかとダンは二人に確認する。
「これも頼もうかのぅ」
 ルファンはベッドカバーやシーツ、掛け布団カバーをはぎ取りダンに渡した。
「これだけか?」
 二度目の確認。
「これだけじゃ。枕やマットレスを干す場所はあるかのぅ」
 ルファンは大量の洗濯物を確認しながらダンに訊ねた。
「……それは大丈夫だと思うが」
 頭の中で状況を確認しながら答えた。
「ふむ。掃除を終え次第、干しに行くので場所を空けておいて貰えるとありがたい」
 ルファンはすっかり湿っている枕とベッドに視線を落とした。
「分かった。用意しておこう」
 そう言い、ダンは書斎を出てアメリの元に戻った。一度大量の汚れ物を空にする必要がある。
「イリアもここが終わったら手伝いに行くね!」
 そう言ってイリアも見送った。
 二人は再び掃除に戻った。
 そして、あっという間に終わらせた。
「ふぅ、綺麗になると嬉しいね」
「うむ、これで書斎として機能するじゃろう」
 イリアとルファンは満足げに綺麗になった書斎を見渡した。
 大きさ、種類、題名順にきちんと並べられた本棚。綺麗に整理され、いつでも作業が出来る机。書斎はあるべき姿に戻った。
「さて、運ぼうかのぅ」
 ルファンはマットレスを抱えた。
「ダーリン、手伝うよ!」
 イリアは枕と掛け布団を持った。
 二人はまだまだごみに溢れる廊下を歩き、第二の戦場と化している外に出た。