校長室
買い物禁止!? ショッピングモールで鬼ごっこ!
リアクション公開中!
「あらあら! 人質もマシーンも取られてしまいましたかあああー! んぅ〜残念! ゲームは私の負けのよーですねぇー。敗者はただ立ち去るのみ……ですかぁ!?」 「そうはさせない!」 「おーっとっと! いきなり穏やかじゃないですねぇ? せっかくの機会なんですからアア! もっと楽死んでもいいんデスよ?? 機械だけに……なああああんて!」 「……これはほんとに狂ってるな。さっさと捕まえたほうがいいよ」 「そのつもりです。シル・エッター。あなたは包囲されている。大人しくしたほうがいいですよ」 「おおう! これが憧れだった『お前は完全に包囲されいてる!』状態なんデスね! 胸が熱くなりまあああすううねええ!」 狂ったように笑い、隙だらけのシル・エッターに詰め寄るのは御凪 真人(みなぎ・まこと)とトーマ・サイオン(とーま・さいおん)だ。 今回の主犯であるシル・エッターは放っておけないと密かにシル・エッターを探していたのだ。 「どんなにあがこうとこの状況はあなたにとって不利です。抵抗するだけ痛い目を見ますよ」 凄む真人。今にもスキルを打ち出さんばかりにシル・エッターに詰め寄る。一方のシル・エッターは未だに笑っていた。 「怖い! 怖いよおマミー! こんなに殺気ビンビンの人の方が悪い人じゃないかしらあ?」 「ふざけるな! どう見てもお前が事の発端だろうに!」 シル・エッターの態度がどうにも解せないトーマが吠える。追い詰められているという自覚がまったくないかのような。 「抵抗しないのなら手は出しません。残り10秒です」 真人がカウトダウンを開始する。 「10、9、8、7、6、」 「オーマイガァ! これは死へのカウントダウンってやつですねぇ!? 今日は貴重な体験ばかりできてすんばらしいですね!」 「5、4、3、2、1……0!」 カウントダウン終了と同時に真人とトーマがシル・エッターに駆ける。捕獲まであと数秒、のところで体が止まる。 「!? か、体が重いっ」 「な、なんだよこれ!?」 「ああっと! すいません……言い忘れておりました……実は人格シャッフルには一つだけ欠点があるのですよぉ」 「欠点、ですって……?」 「実は……あんまり長時間人格を変えたままでいると肉体の方にガタがきちゃうんですよねぇ! なにせ突貫工事の無茶無茶で作った代物ですからねぇ? まあ別に死にはしないから平気ですよぉ? お強い貴方たちなら直になれるでショウタイム!」 「くっ、こんなことまで計算づくとは」 シル・エッターがただの狂人でないことはわかっていた。けれどそれ以上だった。 「さて、お別れは寂しいもの、で・す・があ! そろそろお腹も空き空きなのでぇ、先に帰らせていただきますね? ゲームの勝利報酬として、マシーンと人質は差し上げますよーそれでは」 シル・エッターが優雅に去ろうとして、止まる。真人たちではない別の気配、それに自分と似た空気をかもし出す気配を見つけたからだ。 そうして、シル・エッターは笑った。 「へぇ……正義の味方側にも狂人がいるとは、いやはや! 本当に今日は素敵な一日ですねぇ?」 「そない褒めなやシルシル。何もでーへんで?」 「ちょ、ちょっと兄貴! ここは様子を窺いつあいつを捕まえるって!」 「無理無理、あんな? 同じもんは同じもんに引かれんねん。どれだけうまく隠れとったって、オレにはシルシルがわかるし、シルシルにはオレがわかる。やな?」 「同じ狂人でありながら、ベクトルの違う狂人さんの匂い。久方ぶりにかぎましたよぉ! いやはや同属嫌悪ですなあ?」 シル・エッターと意気投合したように話すのは瀬山 裕輝(せやま・ひろき)、瀬山 慧奈(せやま・けいな)の二人だ。 真人たちの後を追ってここまでたどり着き、様子を窺っていたのだ。 「助かりました。危うく、何もできずに逃げられるところでした」 「サンキュー! 二人とも!」 何とか立ち直った真人とトーマ。そこに裕輝と慧奈も加わり、4対1。シル・エッターもさすがのこの状況では動揺もするだろう。そう三人は考えた。 「あらへんあらへん。狂っとる奴が数の差で同様するなんて、地球が壊れてもあらへんて。それにこいつ、そんじゃそこらのなんちゃってとは違う、マジもんや」 「あらら! お褒めに預かり恐悦至極ですよぉ? そういうあなたも悪者に『この卑怯者!』とか言われて喜ぶタイプじゃないですかぁ?」 「そないなひどいこようできへんわぁ。なあ?」 「いや、してるじゃない」 冷静に慧奈に突っ込まれる裕輝。 「とにかく、今は四人で協力してシル・エッターを捕まえましょう。こちらが合わせます」 「あんまり気にせんといかしてもらうけど堪忍なあ? それじゃはじめぇ」 「……いや戦いなさいよ!」 「そやったそやった。あっはっは!」 「それじゃ今のうちに私は逃げると致しますね? あっはっは!」 「そない連れないこと言うなやシルシル、ちょっと遊んでいこう? なあ?」 ニタリと笑いながら『メンタルアサルト』を使用してでたらめにシル・エッターに近づく裕輝。 「人の体で、あんまり変な動きしないでよ!」 「トーマ、お二人に合わせますよ」 「えぇ!? あの動きに合わすってどうやって!」 「……何とかしてください」 「そんな無茶な!」 そう言いつつ、【下忍】などを駆使してシル・エッターの逃げ道を塞ぐ。が、あえて逃げやすい道を一つだけ作る。 逃げ切ったと油断させたところで捕まえようと考えていたのだ。 「ほれほれシルシル! もっともっと遊ぼうやあ!」 「素敵なお誘いですねえ?! それでは魔法を一つごあんなあああい!」 シル・エッターが懐からカラーボールのようなものを投げつける。ひらりと避ける四人。 「うわ、壁にぶつかって中から煙が……」 「ふぅん、中々オモロイ手品やけど。で?」 「いやはや、もう少し貴方たちと遊んでいたのですが、残念ながらお時間のようでして」 「そうですね。あなたを捕まえるにはもういい時間です」 「逃げないのならいっそここで捕まえちまうぜ!」 トーマがシル・エッターを捕獲、したと思った瞬間に爆音が鳴り響く。 エマージェンシーエマージェンシー カイジョキー ヲ ソウニュウ シテクダサイ! 無機質な音声がモール全体に響く。 「な、なんだよ! あと少しだってのに!」 「……何をしたんです?」 「私はなにもお? ただマシーンの方が調子悪いだけでしょう。好きなものを食べさせてあげたら、機嫌も良くなるかもしれないですねぇ?」 「……最初から仕組んでたわね?」 「はて? 何のことやら? それでは私もそろそろ本当においとましますねぇ? 中々に楽しめましたよ。またどこかで遭えることを祈っております」 そう言って背を向けるシル・エッター。その後を追おうとする四人だが、動けない。 「……さっきの煙、三半規管を狂わせる遅延性の毒があったようね」 「体が、うまく動きません」 「ち、ちっくしょー……一度ならず二度までも」 「まあ、しゃーない。これ見よがしに落としていったあの解除キー持って、マシーンのとこいこか。そりゃもうゆっくりと、ヒーロー気取りで」 シル・エッターの姿はもう見えない。 名残惜しくもあるが、今はそれどころではない。 目の前の事態を解決するべく、マシーンの場所へと極力急いで向かう四人だった。 「……そうなのね」 「すまん、我が教師人がこうも容易く抜かれるとは。奴を侮りすぎていた」 「まあ、雅羅は助かったしモールも解放されたんだ。それだけでも大勝じゃないか」 雅羅、山葉、海が喋る。あの後、四人が持ってきた解除キーでマシーンの暴走を止め、人格を元に戻して事態は収束した。 残念ながらシル・エッターだけは捕まえられなかった。 「私の体質が叫んでいるの。またあいつと出会って、ロクな目に遭わないって」 「……災難体質、本気でどうにかした方がいいんじゃないか?」 「いろいろ試した後だって言ったら?」 「……ご愁傷様」 またいつか会う気がするシル・エッターにうんざりしながらはぁとため息をつく雅羅だった。 その後、ショッピングモールは無事にオープンとなり、今回の事態を解決した契約者たちには相応のモール内で使える商品券が送られた。 マシーンの方も研究施設に送られて、現在は修理中だそうだ。 ともあれ、雅羅と海もモールでショピングや食事を楽しみ、今回の事件は無事に解決された。 「ん、何か今声が聞こえような……? それに私の災難細胞が警告を……」 「おい雅羅、次はあれ食べようぜ」 「ちょ、ちょっと? まだ食べる気? って待ちなさい! 人の商品券を勝手に、こらー!」 「ほっほっほ、いい笑顔ですねぇ? でも次はどうでしょうか、ね? あっはははあ!!」 どこかで狂人が一人、笑うのだった。
▼担当マスター
流月和人
▼マスターコメント
雅羅救出、お疲れ様でした。 残念ながらシル・エッターは逃げてしまいましたが、 ショッピングモールは無事に開かれて一安心です。 さてはて、シル・エッターはまだ何かやらかしそうですね。 次回もコメディタッチなのか、 少しだけシリアスに狂ってくれるのか、 あるいはそのまま消え行くのか、それはわかりません。 ですがもし見かけましたら是非是非捕まえてください。 それでは、また会うことがあればよろしくお願いします。
▼マスター個別コメント