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夏合宿 どろろん

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夏合宿 どろろん

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    ★    ★    ★
 
「よろしくお願いしますう」
 大谷文美さんが、十文字 宵一(じゅうもんじ・よいいち)くんにぺこりとお辞儀しました。反動で、みごとなたっゆんが大きくゆれます。
「おおお、乱数の女神様ありがとう」
 フラれてからずっと落ち込んでいた十文字宵一くん、陰で思いっきりガッツポーズです。
「?」
 なんだろうと、大谷文美さんがきょとんとします。
「ああ、なんでもないぜ。さあ、行こう!」
 そう言うと、十文字宵一くんが大谷文美さんの手を取って出発しました。
「なんだかあ、寒いですねえ」
 森に入ってしばらくして、大谷文美さんが言いました。
「ふっ、問題ないさ」
 十文字宵一くんが、コートを広げてその中に大谷文美さんを入れました。頑張ってます。でも、内心は結構必死です。
「お師匠様、私はお化け役頑張っています。お空から見ていてくださいね」
 そう言って、リース・エンデルフィアさんが空を見あげました。いや、アガレス・アンドレアルフスくんはまだお星様にはなっていません。今は、救護所で抱き枕をだいて……いや、抱き枕志望のリイム・クローバーくんにだきしめられています。
「さあ、そろそろ次の人を……」
 少し満足したリイム・クローバーくんが、周囲を見回しました。
 さてさて、救護所の様子はもういいとして、何かいい感じの十文字宵一くんと大谷文美さんでしたが、そう簡単にはすみません。
「リア充か……」
 どこからか、そんな声が聞こえてきました。
「えっ、そう見えるかなあ。いやあ、そう見えるか、あはははははは……」
 十文字宵一くん、照れ隠し笑いをします。そんな状況ではないのですが……。
「そうか、リア充か」
「リア充なんだな」
「リア充滅べ」
「切り刻め〜」
 いきなり、紙袋を被り両手に血塗れた鉈を持ったスクール水着の葛城吹雪さんが、十文字宵一くんと大谷文美さんを取り囲むようにしてたくさん現れました。これは怖いです。
「きゃあ!!」
「うわー!!」
 一目散に、大谷文美さんと十文字宵一くんが走って逃げだします。さすがに、先ほどまでの余裕は微塵もありません。
「はははは、今であります、行け! 必笑、火星人もどき!」
 ここぞとばかりに、葛城吹雪さんがイングラハム・カニンガムくんをけしかけようとしました。
 しーん。
 反応がありません。
「やはり、奴は自分たちの中では一番の小物であったか……」
 やっぱりという感じで葛城吹雪さんがつぶやきました。
「うわー、うわー、うわー!」
「きゃー、きゃー、きゃー!」
 十文字宵一くんと大谷文美さんの方は、思いっきり怖がって逃げて行き、なんとか海岸へと抜け出しました。
「ふう、なんとか逃げられたぜ」
 十文字宵一くんがあらためて強気を装いますが、ちょっと遅いです。
「あ、あ、あ、あれ!!」
 大谷文美さんが、海に浮かぶ者を指さしました。その身体の震えが、十文字宵一くんにも伝わってきます。
 なぜか、海に巨大な氷の塊が浮いています。そして、その中に人が入っているのでした。
「うわー、うわー、うわー!」
「きゃー、きゃー、きゃー!」
 またもや、十文字宵一くんと大谷文美さん、全力疾走です。なんだかんだで、行動がシンクロし始めています。
「も、もう少しだからな。俺の後ろに……」
「は、はい……きゃあ!」
 やっと、洞窟になだれ込んだ二人でしたが……。
「み〜た〜な〜」
 いつの間に回り込んだのか、二人の背後に血まみれの水死体が……。曖浜瑠樹くんです。
「うわー、うわー、うわー!」
「きゃー、きゃー、きゃー!」
 逃げます。
「リア充は、爆発するのです!!」
「うわー、うわー、うわー!」
「きゃー、きゃー、きゃー!」
 不気味なぬいぐるみからギリギリキャンディを投げつけられながら逃げます。
 逃げます。逃げます。収めます。逃げます。逃げます。逃げます……。
 なんとか貝殻を収めて、やっと、スタート地点に戻ってきた十文字宵一くんと大谷文美さんでした。もうボロボロです。
「す、すいません、治療を……」
 這うようにして、救護所に辿り着きます。
「どうしたんですか、宵一くん、ボロボロです」
 コア・ハーティオンくんの抱き枕になっていたリイム・クローバーくんが起きあがりました。
「とりあえず、この人から治療頼む」
「はいです〜」
 十文字宵一くんに言われて、リイム・クローバーくんが二人の治療を始めました。