薔薇の学舎へ

波羅蜜多実業高等学校

校長室

葦原明倫館へ

【架空大戦】絶対無敵! 僕らが奇跡!

リアクション公開中!

【架空大戦】絶対無敵! 僕らが奇跡!

リアクション


01:オリュンポスVS国軍
『こちらトマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)。獅子よりジョーカーへ、レーヴェ小隊全機出撃準備完了。スクランブルを要請する』
 トマスが愛機ザンダーレーヴェのコクピットに座り込んで計器をチェックしつつオペレーターに出撃の許可を求める。
『こちらジョーカー、敵の能力は未知数だ。スクランブルを許可する。帰ったら酒を奢ろう……秘蔵のラムを空けてやる。一緒に飲もうぜ』
 国軍オペレータのルース・マキャフリー(るーす・まきゃふりー)が、そう言いながらハッチを開く操作をする。
『了解。獅子が飲む酒だ、安物じゃ許されないぞ!』
『勿論だ。絶対、飲みに来い!』
『オーケー。レーヴェコップより各機へ、オペレータ殿が酒を奢ってくださる。全員生きて帰るぞ。ザンダーレーヴェ、出る!』
 そして、トマスが指揮するレーヴェ小隊は誰よりも先駆けて出撃することとなった。
「トマス、このまま直進します。例の曲、かけますか?」
 そう語りかけたのはトマスのパートナーのミカエラ・ウォーレンシュタット(みかえら・うぉーれんしゅたっと)。サブシートで機体位置や姿勢制御といった操縦を担当する良きパートナーだ。
「いいね。回線フルオープンで流そうぜ」
 トマスが頷くと、ミカエラはミレリア・ファウェイのアルバムから、獅子の泉(レーヴェンブルン)という曲をかける。ハイスピードかつハイテンションな曲調のそれを聞いて、レーヴェ小隊は一気に勢いづく。
『レーヴェコップより各機へ、踊りをはじめましょうか。敵性体の名称はオリュンポス。敵首領の名はクロノス。神を僭称する愚か者は、国軍の剣で切り裂いてさしあげましょう』
 ミカエラは機体を急上昇させながら配下の各機に告げる。口々に賛同の返事が帰ってきて、上昇するザンダーレーヴェの後に続く。
 音速を超えて進む彼らの目の前に、金ピカの空中戦艦が現れる。
『ジャックナイフよりレーヴェ小隊へ。技術部から回ってきた過去のデータと照合した結果、目の前の戦艦はゴールデン・キャッツって言うみたいだよ。乗ってるのは【オリュンポス先遣隊司令官】マネキ・ング(まねき・んぐ)でほぼ間違い無いと思う」
 そう告げたのはオペレータのリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)
『了解。各機、更に上昇。ダイブアタックを仕掛ける。フォーメーションアローヘッド! ミカエラ、操縦任せた』
『了解です。各機、上昇!』
 ミカエラが操縦桿を握って機体を急上昇させる。ほぼ成層圏ギリギリまで上昇したレーヴェ小隊はそこから急降下を開始する。
 弓矢の鏃のような隊形でほぼ垂直に急降下するレーヴェ小隊。
 20ミリレーザーバルカンをばら撒きつつ行われる急降下は、敵戦艦の対空射撃を回避しながら急速に接近する。
 ゴールデン・キャッツのそこかしこで小爆発が起こるが、マネキは気にした様子はない。
『フフフ……教えてやろう! 王の駆け引きというやつを。猫髭ミサイル発射!』
「はいはい。猫髭ミサイル〜♪」
 武装担当の怪人マイキー・ウォーリー(まいきー・うぉーりー)は踊りながらミサイルのスイッチを押す。
『各機、回避!』
 トマスの号令とともにレーヴェ小隊は機首を引き上げ急上昇を開始する。それとともにランダムに飛行し、チャフとフレアをばらまきECMを全開にする。
 しかし
『うわあああああああ、だめだ!』
『レーヴェアハト被弾! 墜落します!』
 ミサイルは執拗にレーヴェ小隊を追撃し、一機が撃墜された。
『こちらジャックナイフ。レーヴェアハトの搭乗員の脱出を確認。至急回収に向かうよ』
 リカインの報告にトマスは安堵しつつミカエラに反転を支持する。
「ああいうデカブツの弱点は真上か真下だ。上からだとミサイルが迎撃に来るなら、真下に回るぞ」
「了解。解析に専念するのでコントロールを回します。ユー・ハブ・コントロール」
「イエス。アイ・ハブ・コントロール」
 コントロールの全てを受け継いだトマスは機体を操って戦艦の真横を通り過ぎる。
「さてさて、マイキー、あれをいこうか」
「了解。あれだね。レッツシャウト!」
 マイキーが踊りつつボタンを押すと、ゴールデン・キャッツから「ふにゃ〜〜お!」と大音量で、ふ抜けた猫の鳴き声が鳴り響いた。
 その鳴き声は衝撃波となって機体にぶつかってくる。
「くっ! コントロールが!!」
 衝撃波が機体を揺らしコントロールを困難にする。
 トマスはなんとかコントロールを取り戻すが……
『レーヴェゼックスがレーヴェズィーベンと接触! 両機共に中破。パイロットの脱出を確認したよ』
 リカインの報告に安堵しつつ、トマスは怒りを燃やす。
『各機、急速急降下。地上十メートルで変形。アインスとツヴァイは一緒に戦艦を攻撃。ドライからフュンフは周囲の怪物の撃退』
『了解!』
 可変戦闘機で構成されるレーヴェ小隊は全機が変形機構を保有している。それ故に戦術の幅が広く、どのような状況でもひと通り対応できる。トマスがスクランブル要員として自分の部隊を選んだのもそれが理由だった。
 そして、敵のドラゴンが割り込んできて炎を放つ。
 ウィングを振って緊急回避するレーヴェ小隊。
 ドライ、フィーア、フュンフが急旋回しつつドラゴンを取り囲む。
 20ミリレーザーバルカンの連撃がドラゴンの鱗を弾き、ドラゴンは悲鳴を上げながら墜落する。
 その姿、狩りに興じる獅子のごとく。獅子の群れが幾多の怪物を血祭りにあげていく。
「ほう、なかなかやるな……」
 マネキはひとりごちると大きく息を吐いた。
「ねえねえ、心の友。やっちゃう〜?」
「いや、まだだ。もう少し遊ぼうじゃないか」
 マイキーの問に、マネキは余裕を持って答える。
「つまんないなあ」
 マイキーはそう言うとミサイルのボタンを押して後続の国軍を攻撃する。
「させるか!」
 対神スナイパーライフルでミサイルを狙い打つ。
 国軍からも対ミサイルミサイルが放たれてミサイルを撃墜するが、全てを撃ち落とすことはかなわず何機かは被撃墜する。
「ふ〜ん。ぽちっとな」
 マイキーが更に踊りながらボタンを押すと、超長距離ビームが放出される。
 それは援護に来ていた国軍をなぎ払う。
『ティーゲル小隊が!? おい、夜刀神、急げ!』
 ルースが叫ぶ。
『全速力で向かってるよ!』
 それに対して、ブリッツ小隊小隊長の夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)プラヴァー(高機動パック仕様)を駆りながら答える。
『距離3000。間もなく射程に入ります。エンゲージまで10秒……9……8……エンゲージ!』
 ブリジット・コイル(ぶりじっと・こいる)がレーダーを見ながらカウントダウンする。そしてエンゲージした瞬間、甚五郎が命令を発した。
『総員攻撃開始!』
 円陣を組んだブリッツ小隊から一斉にビームアサルトライフルが放たれる。
 弾幕で数多くの巨大生物が撃墜されていく。
『よし、フォーメーションα』
 甚五郎の指令とともにブリッツ小隊は散会する。
『ブリッツ1、英輝少尉、おぬしはわしについてこい。エースのおぬしにわしの背中を預ける』
『ブリッツ1了解。大尉の背中は任せて下さい』
 甚五郎に指名された柳川 英輝(やながわ・ひでき)は、プラヴァー(デフォルト)を上昇させると甚五郎の背後に付いた。
『よう、待たせたな、トマス大尉』
 アサルトライフルについている銃剣で巨大カブトムシの腹を突き刺しつつ、甚五郎が無線で話しかける。
『待ちましたよ。こっちはもう全滅寸前です……ですが、それなりにデータは手に入りました。いま、基地に送信中ですよ』
 巨大クワガタの突進をパイルバンカー・シールドで防ぎつつ剣で突き返しながらトマスが答える。
『私達は兵士です。軍が勝利するために必要な踏み石になら、喜んで。……流石に、捨て石にはなりたくないところですが』
 モニタを流れる様々なデータを処理しながらトマスのあとにミカエラが続く。
『違いない。おぬしの部隊の犠牲は無駄にはしない。あとはわしらに任せてもらおう』
 甚五郎がイフリートをMVブレードで切り裂く。イフリートが発する熱でコクピットの温度が上がり、ヘルメットの中で汗をかきつつもイフリートを切り刻む。そして、「どうやら通常兵装でも行けそうだ」と呟いた。
『そう簡単に引き下がるわけには行きません。戦えるうちは、戦わないとね。それに、そちらもほぼスクランブルでしょう? 後続の準備が整うまでは持たせないと』
 アサルトライフルで飛び回る巨大昆虫たちを撃ち落しながらトマスが答える。
『違いない。ルース大尉の秘蔵のラム酒を飲むためにも、なんとか生き残らんとな』
 甚五郎は空中機動で敵を翻弄しつつウィッチクラフトピストルで次々に敵を打ちまくる。
『大尉、俺にも飲ませてくださいよ!』
 敵の突進を紙一重で回避しつつ、銃剣で突き刺しながら英輝が言う。
『当たり前だ。アルテラ少尉、おぬしも飲むか?』
 らせん状に上昇しながらアサルトビームライフルを撃ち放つ。
『いえ、私はまだ19ですので遠慮しておきます』
 英輝のパートナーのマナ・アルテラ(まな・あるてら)が、英輝の機動に合わせて各所のエネルギーをカットしたり増幅したりしながら冷静に断りを入れる。
『それは残念だ。大人になったらぜひ飲もう。くっ!』
『被弾。ダメージは軽微。かすり傷です』
 被弾状況をブリジットが冷静に報告する。
『大丈夫ですか、大尉?』
『問題ない。それより、集結をかけるぞ。空飛ぶ砲兵大隊だ』
 マナの心配どこ吹く風と、甚五郎はあらたなる作戦の指揮を出す。
 ナポレオンの戦術を三次元空間上にアレンジしなおしたこの戦術は、集中砲撃と移動を繰り返して行うものだ。特別な連携訓練を必要とするが、ブリッツ小隊ならば可能だった。
 そして、ブリッツ小隊は勇猛果敢に戦い、敵の戦線に穴を開けていく。だが――
 要塞からの超長距離狙撃。
 それがブリッツ小隊を一機一機撃ち落としていく。
 そして甚五郎にも――
『ガハッ!』
『機体損傷度80%。戦闘の継続は不可能です』
 ブリジットが無情な現実を告げる。
『仕方がない。機体を放棄する。脱出だ。柳川少尉、おぬしも無茶はするなよ……』
 甚五郎は自爆スイッチを押すと機体から脱出する。
『最後に、一矢報いてください』
 ブリジットは敵中心部にオートパイロットで機体の進路を固定すると、それから脱出した。
 敵の中枢に突っ込んで自爆するプラヴァーは、それなりに巨大生物の群れを駆逐したようだった。
「柳川少尉、後を頼む」
 甚五郎は敬礼をすると、ブリジットとともに機体から持ちだしたバズーカで最後の抵抗を始めた。
「英輝。要塞からの超長距離狙撃は防げません。こちらもそのうち撃墜されるでしょう。ですが、その前に少しでも多くの敵を討ちましょう」
「了解だ、アルテラ。サポートは頼む」
 そうして、柳川少尉の孤独な戦いが始まった。
 バーナーを全開に吹かしての高速機動からの一撃離脱で、次々と巨大生物を屠っていく。
『少尉、無茶をするな』
 トマスが諌めるが、『ここで、少しでも無茶をしないと』と英輝は激しい機動で敵陣に突っ込んでいく。
「人間を舐めるなよ、化け物ども!」
 英輝はアサルトビームライフルをフルオートで連射しながら巨大生物たちをかき乱す。
 接近すると銃剣で斬りつけつつ同時にビームもお見舞いする。
 攻撃は常に紙一重で避けつづけ、敵を屠り続ける。だが――
『ふぅはははははは、やるじゃないか!』
 そんな通信とともに、高塚 陽介(たかつか・ようすけ)プラヴァー(デフォルト)が襲ってくる。
 急接近からのパイルバンカー。
 英輝は回避する暇も与えられないままにパイルバンカーが突き刺さり、英輝のプラヴァーが大破する。
「なっ、動型機?」
「ですが、速度、パワー共に向こうが上です」
 驚く英輝に冷静に分析するアルテラ。
『はっはっは、さすがに狙撃で潰すのは惜しかったからなあ。俺が直々に出向いてやったぜ!』
『何者!?』
『俺か? 俺は炎の魔術師。貴様らを滅殺する存在だ』
 英輝の問に陽介が答える。
『ハハハハハ!! 最高だ、最高に楽しいぞ!! 明確な敵が居るってのは、最高だッ!!』
 そしてサブパイロットのクレイ・ヴァーミリオン(くれい・う゛ぁーみりおん)が心底楽しげに笑う。
『次は、貴様だ!』
 クレイの叫びとともに、プラヴァーが高速移動し、トマスのS-01に接近する。
『敵機急速接近!』
 ミカエラはとっさに機体を変形させ急発進させる。
 とっさのことで攻撃を回避したザンダーレーヴェは、そのまま急加速を続けて陽介のプラヴァーを引き離す。
「あいつはやばい。ミカエラ、可能な限り引き離して!」
「了解!」
 高速で飛び回るザンダーレーヴェ。しかし
『甘い!』
 陽介は一瞬でトマスの前に回ると、ビームアサルトライフルをオートで放った。
「くっ!」
 ミカエラが回避行動をとるがその銃撃はしつこく食らいついてはなれない。戦闘機とビームの追いかけっこ。だがそれは、戦闘機がビームに追いつかれて終演を迎える。
「うわあああああああ」
「きゃあああああああ」
 悲鳴が通信回線を占領する。
 ルースが、思わずデスクを殴る。
「情けない! 仮にも国軍でしょう!」
 リカインが暴れて、周囲に制止される。
「もう、知らない!」
「あ――」
 ルースが絶句する。リカインの行動、それは封じられた獣の開放を意味していたからだ。