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不思議な雨で入れ替わり!?

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不思議な雨で入れ替わり!?

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「なかなか見つからない。青い物体が飛んでるって目撃情報って本当ですか?」
 鷹村 真一郎(たかむら・しんいちろう)は地祇を追ってここまで来ていた。
 シャンバラ教導団と通信をしているが、電波も途切れ途切れで伝わっているのかわからない。
ヒュウウウー! と激しい音を立てて風と雨が舞う。このまま雷まで鳴って、嵐にでもなるんじゃないかと思えるぐらい、悪天候になった。
 見つけられるのが嫌でこんなことをするのかと疑う。
「一応土地神だっていうのに、結構子供じみているような。でも子供も大人も無い……」
 ぶわっと下から舞い上がるような風が吹いたおかげで、身にまとっていたはずの雨具が吹き飛ばされてしまった。
「うわっ、濡れてしまう!」
 風と共に雨も吹き付けてくれるため、もちろん濡れてしまう。

「この先に蒼空学園もあるし、こっちが近道だ!」
綺雲 菜織(あやくも・なおり)は雨の中を進む真一郎を発見し声をかける。こちらはこんな雨など季節柄もう仕方がないだろうと、特に心配してない。けれど水に浸かったように濡れるのは御免だ。
「助かります!」
 ひとまず校舎の手前、屋根があるところに入るとお互いに衣服の水を絞ったりした。真一郎はなんとかこの状況でも情報を得ようと、聞き出す。
「つかぬこと聞きますが、地祇のことはご存知で?」
「ああ、異常気象の神のことか。少し経てば機嫌を直してくれるといいんだが」
 菜織は長い髪から滴る水気をぎゅっと絞る。
「普段感じない違和感があるな。数日前鍛錬中に変な声が聞こえたりとか」
 それは菜織だけではなく、周りの何人かも感じたらしいことだった。


「なかなか地祇も面白いことをしていますね」
 どうせなら天気予想をあらかじめ知らせてくれたらいいのに、とふと東 朱鷺(あずま・とき)は思う。けれど予想ができないからこそ調べるかいがあるというものだ。
「入れ替わる当事者になれば術式を組むのに役立つと思うのですが……」
 通りかかる人々を観察していると、『室内外にいようが雨が止むと入れ替わる』『一日で元に戻る?』ということは伺えた。
 元に戻るのがクエスチョンなのは、朱鷺はまだ元に戻った人を知らない。見て聞いて、この目で確かめてみたかった。
「弁当―! 弁当はいかがーすかー?」
弁天屋 菊(べんてんや・きく)は弁当を売りに歩いていた。なんでも、この異常気象で突然の雨に濡れる人が続出している。ということは、自然と温かい食べ物を人々は望むものだ。
「ん、腹が減っては戦はできぬ……。弁当を一つ貰いましょう」
 ぐるぐると思考を巡らせていた朱鷺は美味しそうな匂いについ体が動く。
「おまえ御目が高いな! さぁ好きなの選びなよ!」
 菊は気前よく朱鷺に弁当を差し出す。
「なんかおまえのナリだと雨を操ってるように見えるなー」
「操れるならそうしたいところです。……? 雨、止みましたね」
「さすがに降りっぱなしは冷えるもんなぁ……。おっ、あたし服着てんじゃんラッキー?」
「それは私ので、って逆に私の服がない!」
 朱鷺は自分の服と菊と服を取り替えたと思ってしまったが、
「おっ、これあたしか? 自分で言うのもなんだけど、いー体してんじゃん」
と菊(朱鷺)がじろじろと見てくるため、朱鷺(菊)は驚いて飛び退く。八卦術を使おうとしても何も起こらない。
「なるほど、これが入れ替わり……。本当に叶うとは思いませんでした」
「ちょっと迷惑っぽくても、地祇ってやつは面白いやつなのかもな!」
 後ろを向いてくれないか、と朱鷺(菊)の言うまま菊(朱鷺)は後ろを向いた。それから様々なポーズを取らされる。
「しっかり正面から見てみたかったんだよな。はい次、褌外してー……」
「わかりまし……、いやそれは遠慮しておきます。もう既に身軽ですし!」
 そのままの流れで菊(朱鷺)は脱ぎそうになりつつも踏みとどまる。野外で何てことを言うんですっ! と要求は拒んだ。
「ふーん、そうかー。じゃああたしが脱ぐか? 服乾かしたいだろ」
「じゅ、術式でなんとかしますよ」
 自分の体は脱がなくても平気だから、と菊(朱鷺)は脱ごうとする朱鷺(菊)の腕を思わず掴んで阻止する。
「残念! まぁあたしがそんなシャイな表情することもないし珍しいもん拝めたよ」
「私も、逆を言えばそうですね。破廉恥でないことなら、もう少しこの現象を楽しみますか」
「おっし、話はわかるやつだな! じゃあ弁当もう一つサービスだ」
 菊(朱鷺)はころころと表情を変えながら、菊(朱鷺)の肩をばしばしと叩く。
「あたた……、え、もう一つよろしいのですか? 程よい塩辛さが美味しくて」


 真一郎と菜織が雨宿りで会話をかわしているうちに、雨は次第に止んでくれた。ふと顔を見合わせると、突然変異が起こってしまったことにお互い数秒言葉が止まる。
「どっ、ドッペルゲンガー……?」
「どっぺ……、それが地祇に関係あると?」
 入れ替わってしまった真一郎(菜織)は口をパクパクさせて自分の体を指差す。
「自分と同じ外見をした者が目の前に現れるんだ。こういう現象なんだな。ちょっといいかね?」
 聞いた話より面白いと、真一郎(菜織)は菜織(真一郎)の顔や肩などぺたぺた触り出す。
「ほうほう、面白いぞ、真一郎もやってみろ」
「いやっ、あの女性にそれはいけないかと!」
 自分の体、けれど中身は女性に触られている事態に菜織(真一郎)の体は硬直した。同じことを相手にするのはどうかと思う。
「鏡の中の自分は触れないだろう? 不思議なものだな」
 これが入れ替わりというやつなのかと真一郎は焦る。地祇にしてやられてしまったと思った。
「よくわからないが、他人の体の感覚がわかるとかそんな感じだろう?」
 まあいっか、ぐらいにか真一郎(菜織)は思っていないようだ。パニックにならないだけまし……、いや、パニックになっているのは菜織(真一郎)の方か。
「任務があるというのに……っ」
「今話していたことか。特に用事も無いし付き合ってやってもいいぞ」
 突然変異が時間が経てば収まると聞いているが、身に起こった以上、他の人にも生じることは避けたい。
 それに反するように、たまには女性の体もいいかもしれない、なんて頭の隅で思いながら、菜織(真一郎)は真一郎(菜織)と共に地祇を探すことにした。


《面白がるやつ多くないか……? まぁ次、パニックを起こすやつが楽しみだが》

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