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葦原城下コイガタリ ~仁科燿助と町娘~

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第4章  伝達の際

 次こそ城下を脱出した燿助は、一心不乱に走り続けている。
 これからまだ半日かかるのかと思うと、件の娘が心配でならない。

「はぁ、はぁ、待って、て……」

 流石の燿助も、走り通しでちょいとお疲れのご様子。
 額に頬に、汗が流れている。

「鬼ごっこのようで楽しいな。
 あなた達がいればそのまま賊とも戦えるし、速さならスティリアとガディが一番だ!」
「主!
 あまり飛ばすと主の御体に負担が掛かってしまいます!
 ここは私にお任せを!」

 そんな燿助を、遥か上空から2体のドラゴンが捉えた。
 先行するは、グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)の『スティリア【水雷龍ハイドロルクスブレードドラゴン】』。
 『ガディ【聖邪龍ケイオスブレードドラゴン】』の騎手は、アウレウス・アルゲンテウス(あうれうす・あるげんてうす)だ。

「ガディよ、主の御為、目標を捕獲するぞ!
 決して逃がすな!」
(燿助に追い付きたい、イコール、確実に補足したい、イコール、逃がさないよう捕えればいい、ということであろう)

 強く言い聞かせたうえで、ガディを急降下させる。
 アウレウスの眼は、妖しく輝いていた。

「おっと……スティリア、俺達も行こう」

 続いて、グラキエスも下方へと舵を切る。
 風を肌に感じれば、楽しくなって自然と口許も緩んできた。

「往くぞっ、ガディ!」
「うわっ、なになになんなのっ!?」

 射程範囲に入った燿助へ、アウレウスは【ランスバレスト】で襲いかかる。
 更に【龍飛翔突】で、頭上からの突撃も試みたのだが。

「ちっ、すばしっこいやつめ……」
「んもう〜!
 オレ急いでいるんだって!」

 運なのか実力なのか、アウレウスからの攻撃を避けてみせた燿助。
 足は止まらず、そのまま走り続ける。

「よし、それなら俺達が標的の動きを止める!」
「俺の眼からは逃げられないのだよ!」

 グラキエスは、間髪入れず【ブリザード】に【しびれ粉】を放った。
 そうして、最終的に目的を果たしたのはアウレウスの【千眼睨み】。
 自分達は味方であることと、新たに入った情報を燿助へと伝達していく。

「……大丈夫だろうな」
(一応こちらで調べられたことはすべて伝えた……が、問題はエンドロアだ。
 たかが賊に、おくれを取るとは思えないが……)

 こちらは『小型飛空艇ヘリファルテ』のなかでウルディカ・ウォークライ(うるでぃか・うぉーくらい)が呟いた。
 ウルディカは、グラキエスの命により情報を集めていたのである。

「エンドロア……」

 心配は、ほかの者達のように燿助へ向けてではない。
 パートナーであるグラキエスは、身体の衰弱が進んでいるから。

「頼むから、標的を確保したらその場で待機していろよ……」

 当初は援軍などの情報伝達用に、房姫達のもとへ残る予定だったウルディカ。
 だがグラキエスのことを考えると、いてもたってもいられないと。
 その身体で賊のもとへ乗り込むなど、無茶をしないよう切に願い、先を急ぐのだった。