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リアクション
「テロリストの『シングルズ』か……」
武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)は、セイニィ・アルギエバ(せいにぃ・あるぎえば)から掲示板で噂になっているテロリストの話を聞き、厳しい顔をした。
「すまない、折角誘ったのに。でも俺は、事件が起きてるなら見過ごせない」
牙竜は、セイニィの目を見て、そう答えた。信念を曲げて遊園地を楽しむことなんて、できない。そう、牙竜ははっきりと告げる。
「だからさ、一緒に恋人達の時間を守りに行こうぜ。流石に、あの行為はやりすぎだ」
「あたしだって、目の前にテロリストがいるのを見過ごしたりなんかできないわよ」
二人の様子を窺っていたツール・エクス(つーる・えくす)が、そっとセイニィの元に歩み寄る。
「セイニィ殿。こんなこともあろうかと用意した、獅子の面と女性用ヒーロー衣装でござる。どうか、服の上から着用してみて下さらぬか」
「こ、今回だけよ」
「ああ。一夜限りのヒーローってことでな」
セイニィに、牙竜は微笑みかける。
「浮世をしばし忘れ、正義のヒーローを演じるのも一興でござるよ」
エクスもうんうんと頷く。
「遊園地のスタッフには、話を通しておいたでござる。正義のヒーローショーの始まりでござるよ!」
パレードに乱入する、全身黒タイツの集団。全員マスクをして顔を隠している。
そこに、牙竜が向かいの建物から飛び降りた。
「ケンリュウガー、剛臨!」
「アルギエバー、剛臨!」
パレードを見ていた客たちがざわつき始める。
「人々の愛ある平穏を乱す悪の組織シングルズ、貴様らの邪悪な野望は、この俺達が許さん!」
「さあ、覚悟するのよ!」
「カップルで正義のヒーロー気取りだと……?」
数名の黒タイツが牙竜たちを睨みつけた。途端、目で追う間もなくセイニィがフロート車に飛び乗る。
「とうっ!」
牙竜の蹴りがシングルズの男を捉えた。
「はぁっ!」
セイニィの拳が、牙竜に向かって突進してくる男の腹にめり込む。
「さあ、かかって来なさい!」
なんだかんだ言って、すっかりヒーローらしい態度を見せるセイニィに、牙竜は内心笑みを浮かべる。
そんな二人の耳に、子供たちの声援が聞こえた。頃合いか、と牙竜はエクスに視線を送る。
「いくぞ、エクス!」
牙竜が、エクスの変形した近距離型ギフト フェイズ0を手に取る。
「アルギエバー、手を添えてくれ!」
セイニィは一瞬躊躇する素振りを見せたものの、剣を握る牙竜の手にそっと掌を重ねた。
「ソード、コネクトォォォ! エクスソォォド!!」
牙竜たちが叩き付けた剣の先から、放たれるスタンクラッシュ。黒タイツの集団は吹き飛ばされた。どよめきとともに、観客からの拍手が送られる。
すかさず、牙竜とセイニィと決めポーズを取る。大通りに立ち止まっている夫婦の拍手と、その子供の歓声が牙竜の目に留まった。
こうして、パレードに乱入したテロリストの騒ぎは、無事サプライズのヒーローショーとして皆の記憶に残ったのだった。
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