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村と生物との行方

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村と生物との行方

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第一章 疑問に思う者達

「うーむ、どうにも腑に落ちんの。退治が必要なドラゴンがいるような森には見えんが?荒らされた様子もないし何のために倒そうとしておる……?」
 草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)が生い茂った森を見て呟いた。
 オリバー・ホフマン(おりばー・ほふまん)が別の方向……切り株が目立つ一角を見て、
「確か、共存路線で進んでいた村だったと思ったんだが……それに、開発の跡があるが……あれは無理やりと言うかでたらめな開発の感じがするな」
 少し考え込み、
「ひょっとしてそれでドラゴンと敵対したのか? そうだとしたら、ドラゴン退治は筋違いだぞ、村の人間の考え方を改めさせねぇと」
 呟いた。
「どーもきな臭いな」
 夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)が横で呟いた。
「ふむ、コレは詳しい事を調べる必要がありそうですがどうしましょうか。やはり、自警団の人間を捕獲し尋問する必要がありそうですね」
「そうじゃの」
 ブリジット・コイル(ぶりじっと・こいる)の提案に羽純が同意した。
「いや、情報が少ない。もう少し情報を集めるべきだな」
「そうだな……あそこに瑛菜がいる、話をしてから考えよう」
 オリバーが反対し、甚五郎は瑛菜がいる方向を見ながら提案し、歩き出した。
 甚五郎は移動中にオリバーに村や森について話を聞いた。

「……パラ実生にもああいう目をしている奴が多いけど、あの目は何かを企んでいる、人を騙そうとしている目だわ。あの村長と名乗った青年、注意した方がいいわね」
 熾月 瑛菜(しづき・えいな)は視線だけを動かして後ろを見て、森へと入っていきました。
「あら? 奇遇ね、瑛菜……私も全く同じ事を考えていたわ。余所者に対し村の若い衆だけが出て来る。裏があるわ」
「ローザ達も来ていたのね」
 瑛菜の傍に光学迷彩とベルフラマントで姿と気配を消したローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)
が近づいてきた。
 ローザマリアは、瑛菜の近くに生えている木に手を付き、人の心、草の心を使い、村や森について情報を集めた。
「瑛菜……やっぱり、ドラゴンが悪事をした感じには、見受けられないわね。悪しきドラゴンならお構いなしに荒す筈の森が、静かだわ。それに老人とそれを守るように数人の人間が森の奥へ行ったらしいわ」
「その老人が長老か……もしかしたら村長かもしれないわ」
 ローザマリアが瑛菜に木から得た情報を伝えた。
「情報が少ないわ、ローザ、どうしようか」
「オリバーが言うには、この辺に住んでるドラゴンは思慮深い知性的なドラゴンだと聞いてるんだが。その老人一行は、ドラゴンに頼み事を言いに行っているんではないか?」
「そうかもしれんが、やはり情報が少なすぎだな」
 瑛菜の元に歩いてきた甚五郎は歩いている時にオリバーから聞いた情報を話し、グロリアーナが返した。
「此処で森の生物を無暗矢鱈と殺せば永劫残る禍根になる……開発とは云え、代替の安住地すら与えられない森の先住生物が攻撃的になるのも無理はないわね」
 甚五郎の話を聞いたローザマリアは呟いた。
「そうね、ローザの言う通り、これ以上生物を攻撃しても話は好転しないわ。状況が分かるまで自警団の様子を見ながらドラゴンの元に行くわ」
 考え込んでいた瑛菜が全員に声をかけると全員は頷いた。
「では、妾が先陣を……鎮まれぃ!」
 グロリアーナが王騎竜『ア・ドライグ・グラス』に乗ると、会話中に近づいてきた狼や巨大蜘蛛に龍の咆哮を放った。
狼や巨大蜘蛛は戦意を削がれ、蜘蛛の子散らす様に森の奥へと逃げていった。
「おいおい、あんたら討伐するつもりはあるのか?」
 自警団の一人が近づくと、迷惑そうな顔をして話しかけてきた。
「最終目標はドラゴンであろう? なら、無駄な体力を使わずに移動する方が攻撃的であろう」
「そうか……分かった、頼んだぞ」
 グロリアーナの答えを聞いた自警団の一人は納得して戻っていった。
「私は敵の奇襲を警戒してまた姿を消して付いて行くわ」
 ローザマリアが再度、姿と気配を消しながら瑛菜に声をかけた。
 瑛菜はそれを確認して森の奥へと再度、歩みを進めた。