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冬のSSシナリオ

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 それは、とある一日の出来事。
 世界のどこかで日々起こる、物語の切れ端――……




Case:0 (三船 敬一(みふね・けいいち)

 



「こういうのも、随分久しぶりだな」


 丸一日の休日など、どのくらいぶりだろうか。
 買ったばかりの釣具を助手席に、敬一は一人、携帯ラジオから流れる音楽を聴きながら、朝もやの中のんびりと運転していた。
 何も無い日、というのは滅多にあることではない。今日ぐらいはのんびりと、一人で過ごすのも良いだろう、と、折角の休暇を利用して釣りをしよう、と思い立ったのだ。
「釣りスポットを調べてくりゃよかったかな……」
 呟いたものの、別に良いか、とも思う。本格的な釣りをしに行こうと言うのでも無いし、わいわいと賑やかな場所も遠慮したいところなのだ。幸いにして広大なパラミタ大陸は、ほんの少し遠出しただけでも豊かな自然が目の前に広がっている。暫く走らせれば、丁度良い川も見つかるだろう。
 そう思って、まだ日も昇りきらない、薄もやの掛かった朝の景色を楽しみながら運転していると、ラジオの音楽が切れ、最近珍しいファンファーレと共にパーソナリティが「朝早くからお勤めのみなさぁん、おはようございますぅ」とおっとりした声で告げた。
『三曲目の前に、”突撃リポート、今日の気になるあの人!”のコーナーですぅ』
 女性の担当は早朝のラジオ番組のコーナーで、シャンバラ各校で一定の基準を満たした生徒や教師たちの中からランダムに選出された人物を、当の本人ではなくその周囲にリポートして回る、という一種独特のコーナーだ。
 普段はその殆どを聞き流している敬一だったが、発表された「今日のあの人」が知った名前だったのに「へえ」と思わず呟いて、敬一はラジオのボリュームを僅かに上げたのだった。