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【第三話】始動! 迅竜

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【第三話】始動! 迅竜

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「またあいつらか。ツァンダの時は参加できなかった分、今回は大暴れさせてもらうぜ」
 フラフナグズのメインパイロットシートで斎賀 昌毅(さいが・まさき)は意気込んでいた。
「ニルヴァーナで新型機、新武装が手に入ったしコイツら相手だったら性能テストするには十分すぎるだろ。海京から仲間と一緒に駆けつける形になったが、待ち遠しかったぜ」
 土佐に乗艦してきた昌毅は戦場に着くなりフラフナグズを駆って飛び出した。
「テストが副目的だから、敵エースは他の奴に任せて俺は周りのモブ共相手にするか――ニルヴァーナで手に入れた新型機を“ドンナー”相手に腕ならしだ。今回は格闘戦でいってみるか」
 “ドンナー”の一機を正面に捉えると、昌毅はコンソール上に指を走らせ、操縦桿を倒す。
 それを受けてフラフナグズはハードポイントに懸架されている機晶ブレード搭載型ライフルを抜いた。
 “ドンナー”はフラフナグズに気付くと、脇目もふらずに向かってくる。
 高速飛行からの突撃で勢いの乗った“斬像刀”の一撃が振るわれる中、フラフナグズはそれを機晶ブレードで受ける。
「全く……テストもいいけど一番は敵を倒して被害を減らす事ですからね」
 そう窘めるのは、サブパイロットのマイア・コロチナ(まいあ・ころちな)だ。
「今回確認されている機体……“ドンナー”でしたっけ? って人間の動きに近いんですよね。それと前回までに確認されている情報を合わせるときっと相手は単座式ですよね。天学のイコンは三位一体。メインパイロットとサブと機体……整備士とオペレーターと……あれ? 何か一杯です」
 昌毅に語りかけながらも、マイアの機体管制や情報処理は一切の抜かりがない。
「格闘戦は今までの射撃主体の戦い方と違って、相手の僅かな息遣いに注意を払わないといけません。ここで複座の強みです。昌毅が相手に集中出来るようにその他の雑事はボクにお任せです」
 そこまで語った後、マイアは一拍置いてから言い切った。
「――この戦い勝負の分かれ目はボクの存在って事です。多少卑怯な気もしますがボク達なりの格闘戦を見せ付けてあげましょう」
 自信を持って言い切るマイアに笑みを向けると、昌毅は威勢の良い声を上げる。
「期待してるからよ! ――じゃ、いくぜっ!」
 マイアのサポートを受け、昌毅は微塵の迷いもなくコンソールや操縦桿、そしてペダルを操っていく。
 フラフナグズは第三世代機としての性能を遺憾なく発揮し、格闘戦に特化した“ドンナー”とすら互角の格闘戦を演じつつあった。
 とはいえ、“ドンナー”はやはり格闘戦特化の機体。
 次第にフラフナグズの攻撃を捌くとともに、自分の攻撃の精度を上げてきている。
 幾合目かの打ち合いの末、“ドンナー”は一気に勝負をつけようと“斬像刀”を大きく振りかぶって斬りかかってくる。
 一方、フラフナグズも機晶ブレードを振りかざし、その一太刀で迎え討つ。
 だが、そう見えたのは一瞬、剣先が“ドンナー”の方を向いた瞬間、昌毅は躊躇なく操縦桿のトリガーを引いた。
 機晶ブレードの本体部分にあたるライフルから放たれた銃撃は至近距離から“ドンナー”の胴部を直撃し、貫通して大穴を開ける。
「まぁ、卑怯臭えけど――」
 そう呟きつつも、昌毅は更にトリガーを引き続ける。
 操縦桿のトリガーからの信号を受けてライフルは次々に撃発され、“ドンナー”の身体にはどんどん穴が増えていく。
 それでも昌毅は銃撃を止めず、遂には“ドンナー”の両腕が吹き飛ばされ、事実上の丸腰同然という状態まで追い込んだ。
「――テストだなんだとは言っているけど、俺達の後ろには戦えない人々がいるんだ。敗色濃厚だと踏んだら、固執せず得意な遠距離戦に切り替えるさ」
 一言、昌毅がそう呟いた直後、“ドンナー”は自爆装置の作動により木端微塵に爆散した。