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最強! 煩悩吸収型ホムンクルス!

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最強! 煩悩吸収型ホムンクルス!

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第4章 煩悩とホムンクルスと正体

「フハハー! オリュンポスのホムンクルスよ! 煩悩を吸い取り世界を征服するのだー!」
 縮んできたホムンクルスの背もいよいよ、小さくなり。
 元の子供のサイズにもどってしまっていた。
 そんなホムンクルスの横でドクター・ハデス(どくたー・はです)が高笑いをしていた。
 そして、そんな彼を見ては非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)が深く考え込んでいた。
「本当にあの人があのホムンクルスを……?」
 イグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)に聞かれるが、近遠は首を縦には振らず悩んだ。
「さあ、行け煩悩ホムンクルス怪人・ボンノーンよ、校舎を壊すのだ!」
 ホムンクルスへ強く命令するドクターだったが、ホムンクルスはその命令に反し、地面を掘り始めた。
 近遠はその状態を見て、ホムンクルスを操れないドクターが作ったものではないということがわかっていた。
「でも、このままだとドクターの煩悩である世界制服をホムンクルスが叶えてしまう可能性はありますね……そうなると命令に従うこともあるかもしれません……」
 キロスたちがホムンクルスへ視線を戻すと、ドクターのほかにアルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)が横に立っていた。
「さあ、行け、オリュンポスの忠実なる騎士よ。わが秘密兵器ボンノーンを渡すわけにはいかない!」
「了解しました、ハデス様!」
 アルテミスはドクターの顔を見るなり、剣を手に持ちながら走り出した。
 空高くから振り下ろされるアルテミスの剣をイグナが受け止める。
 あたりには金属が打ち付けられる強い音が響いた。
 その間、近遠はホムンクルスの攻撃をよけながらもホムンクルスを観察していた。
 そして、その動きが次第におかしくなっていくことに近遠は気が付いた。
「……なんだか、ホムンクルスの動きに迷いが出てきている気がします」
 ホムンクルスは先ほどの一直線に煩悩を使い暴れていたのと違い、右へ左へ様々な意思を持っているような動きだった。
 その様子にドクターが後ろを振り返り喜ぶ。
「おおっ! ボンノーンよ覚醒し――へ、うおおおおっ!?」
 だが、ボンノーンはその手から白いビームを発射しドクターへと浴びせた。
 その場にドクターは黒焦げの状態で倒れてしまった。
「くっ、やるなお前たち……だが俺はまだやられていない!」
「かってに自爆ですわ……」
 近遠の横で、ユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)が呆れながら言った。
 ユーリカは今まで、近遠の指示もあり崩壊しかけた蒼空学園の修復へと当たっていたのだった。
「校舎の修復終わりましたか」
「もちろんですわ、ところでこの状況はなんですの?」
 近遠は、ユーリカの言葉にわからないと答えた。
 その間に、ドクターはデメテール・テスモポリス(でめてーる・てすもぽりす)を召喚する。
 が、その召喚されたデメテールを見てさらにユーリカは目をみはった。
「……なんで貴女、パジャマ姿ですの?」
 ピンクと白の縞柄パジャマを着たデメテールは、ドクターから事情を聴くとユーリカへ向かって襲い掛かった。
「そんなのどうでもいいでしょ! そんなことより早く貴女を倒して帰らなきゃ!」
 デメテールが投げた桜花手裏剣をふわりと軽くユーリカはよける。
「な、何をそんなに焦ってるのですわ?」
「今、ネトゲのレアアイテム入手率2倍キャンペーン中だから早く帰りたいのっ!」
「え!?」
 ユーリカとデメテールの争いはしばらく平行線で続いて行く。

「大丈夫でございまです!?」
 アルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)は思わずイグナの姿を見て声を上げた。
 アルテミスとイグナの戦いは激戦だった。
 しかし、数か所しか傷を負っていないアルテミスに比べると愕然と傷を負っているのがわかる。
 イグナは振り返る余裕すらなく、アルテミスの剣を受け流すのに必死になっていた。
 が、次の瞬間。
「あっ!!」
 思わずアルティアは目を伏せた。
 イグナの剣は空高く弾かれてしまい、容赦なくアルテミスの剣が襲い掛かってくる。
「……あぶねえな」
 が、その剣はイグナには届かなかった。
「キロスさん!」
 自身の剣を受け止めている人物がキロスに変わったことに驚く、アルテミス。
 キロスはそれをみて、にやりと笑った。
「はっ、煩悩は結構だがどんぱちするのは感心いかねえな」
 アルテミスはキロスの剣を振り払うとあわてて離れ。距離を取った。
「な、なんでしょう、この胸の高鳴りは……?」
 キロスの顔を見ることで、アルテミスは急に胸が高鳴るのを感じていた。
「き、キロスさんでも、オリュンポスの騎士アルテミスが邪魔をさせません!」
 再びアルテミスは剣を構えると、キロスへと切りかかっていった。

 アルティアはその一部始終を見届けながらも、傷ついたイグナの看病をした。
「……なんとかあの、ホムンクルスを何とかできないでございますの?」
「もしかして――!!」
 少し離れたところでホムンクルスへ攻撃を仕掛けながらも観察していた近遠が叫んだ。
「どうしたのでございますの?」
「ホムンクルスを自滅させることができるかもしれない!」
 近遠からアルティアは近遠のひらめいた自滅方法を聞く。
 その方法はとても簡単だった。
「世界征服!」
「せ……かいせいふく……せかいせいふく! せかいせいふくせかいせいふく!」
 近遠がホムンクルスへと向かって突然叫ぶ。
 ホムンクルスは今まで通りにドクターの煩悩をつぶやき始める。
「アルティアの煩悩は、平和を望む、平和な日常であり続けて欲しいと思うでございます」
 続けてアルティアが自身の煩悩を言うとホムンクルスの呆けた表情が一転した。
 目を見開き左右に小刻みに揺れ始める。
「せかいせいふく……せかいへいわ……せいふくへいわせいふくへへへへへへ」
「あの……なんだかこわいのですわ」
「……うまくいけば、何ならかの変化がホムンクルスに起きるはずです」
 近遠達は静かに、壊れ始めたホムンクルスを眺めた。 
「にーとーげーむーおかーしぃーこたーつでごろごろーひきこもー」
 まるで、壊れた洗濯機の要に小刻みに動くホムンクルス。
 しばらくしてると、足下から液体へ還っていった。
「なっ、ボンノーンが!!」
 黒こげのままドクターが慌てて、溶け出したホムンクルスへ近寄る。
「……もう無理です。その子は、みなさんの煩悩を回収したことで煩悩のジレンマにはまったんですから」
「なっ、まさかそんな弱点があるとはっ!!」
 ドクターは驚愕し、ホムンクルスを修復しようとしたが、元に戻せる気配はなかった。

 身体半分まで液体化が進んだホムンクルス。
 もう、ホムンクルスは何もしゃべらず、そして動こうともせず、ただすべて消えるのを待っているようになっていた。
 そんなホムンクルスのそばに杜守 柚が近づき、手の平をそっとホムンクルスの髪に当てるとゆっくりと、やさしく撫でた。
「偉いね」
「えっ?」
「だって、みんなの抱えてる悩みを解決してあげようってこの子は動いてんじゃないかなと思うんです」
 ホムンクルスを撫で続ける柚の言葉に近遠ははっとなった。
(まさか……このホムンクルスの目的は、単に煩悩を実体化し何かを仕様としていたわけでは無く、悩みを助けたくて?)

 キロスはただ、その様子を静かに見守ることしかできなかった。
 が、ホムンクルス自体は悪気があったわけではないのかもしれないなとキロス自身もうすうす気がついていた。
「ふっ……まあ、なんだかんだで楽しませてもらったぜ。つっても、もう煩悩はこりごりだけどな!」
 9割消えかかったホムンクルスに向かってキロスは笑いかけた。
 そして、そのまま静かにホムンクルスは静かに消えていった。


担当マスターより

▼担当マスター

朱坂理樹

▼マスターコメント

 お疲れ様でした! この度は「最強! 煩悩吸収型ホムンクルス!」にご参加ありがとうございました。
 ひとまず無事に解決できました。ありがとうございます!
 今回のリアクションを書かせていただくにあたって感じましたのが、皆様のキロスに対する
愛情が素晴らしかったです。どのような形であれ(笑)
 また、煩悩もそれぞれユニークなもので楽しませていただきました。
 ホムンクルスを作った犯人。ホムンクルスの謎を究明するアクションも楽しかったです。
 ホムンクルスに追及するアクションがあったからこそ、このような結末にたどり着くこともできたのではないかなと
書いた本人ながら思っております。

 それでは、また皆様とお会いできますことを心から楽しみにしております。