校長室
悪戯双子のお年玉?
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第三章 夢の仕置き人達 「面白い夢はここなのだ」 薫は孝明と一緒に双子を騙して自分達と吹雪達の夢、双子のお仕置き場へと案内した。 「何もねぇぞ」 「面白いものはどこだよ」 殺風景な夢に双子は口を尖らせ、薫と孝明の方に振り向いた。孝高は双子に見つからない様に隠れている。 「……今、始まるのだ」 薫は孝明が設置する『インビジブルトラップ』からする魔力の気配を双子に察知されないように注意を引こうと『天の炎』を双子に向かってお見舞いした。 「何でいきなり攻撃するんだよ」 「やめろって」 天から落ちてくる火柱を避けながらわめく双子。薫が相手をしている間に孝明は速やかに『インビジブルトラップ』を最大個数設置していた。楽しいお遊びはこれからだ。 姿を隠していた孝高の出番がようやく回って来た。 「……慌てるな。今から面白くなる」 孝高はゆっくりと双子の前に現れた。 「……!?」 双子は孝高の姿を見るなり言葉を失った。思い出す。恐怖の熊の人。 「おい、起きてここにいないんじゃなかったのかよ」 「う、嘘ついたのかよ!?」 双子は薫から不在を聞いて安心していたのにすっかり恐怖の予感に真っ青。 「ごめんなのだ」 薫は自分をにらむキスミに軽く謝った。 「年明けから何やらかしているんだ。少しは大人しくしろ!」 効果は無いと分かっているが一応一喝する孝高。 「……大人しくって」 「んなのつまらないよな」 どんな時でもぽろりと本音を洩らすのがこの双子の迂闊なところ。 「……双子ちゃん、素直にみんなに謝るのだ」 薫は怯えながらも図太い双子に呆れている。彼らが謝れば簡単に終わるというのに。 「……ここは夢だぞ」 「そうだそうだ。痛い目なんか大した事ないぞ」 双子は夢を盾に立ち塞がる孝高に強がりで反撃する。何せここに来るまで痛い夢は幾つか超えても無事だったので。 孝高は巨熊に獣化し 「……その通り、ここは夢だ」 双子お仕置きの準備を整える。 「……ヤバイぞ」 「だな」 双子は巨熊孝高を見るなり危機を察知、逃亡に転ずる。 「……逃げられると思っているのか」 孝高は『分身の術』を使い、双子を追い込んでいく。 「……どうせ、こんなの残像だろ」 「大した事なんか……」 双子はただの残像だと孝高に少々怯えながらも強がりを続ける。 「本当に残像だと思うか? ここは夢の中だ」 大勢の巨熊を率いる孝高は意味深な笑みを浮かべる。そう残像ではなく全て実体のある熊なのだ。 「……ち、近寄るなぁぁぁ!!」 近づく巨熊の軍団に恐怖を感じた双子は逃げようとするも足をもつれさせ、転倒してしまう。巨熊軍団はぐるりと双子の逃げ道を塞いだ。 「ちょ、やめろって」 「大人しくするって」 転倒から起き上がるも立ち上がれずにただ迫る巨大な影を見上げ、悲鳴を上げるばかり。 「やめる? ここは夢だ少々大目に見ろ。それにおまえ達ご所望の面白い夢だぞ」 孝高は双子の訴えをあっさり切り捨てた。甘い顔をしたら調子に乗る事を知っているので。 「……ちょ、悪かったって」 「大人しくするって」 ダメもとで必死に反省を口にする双子。しかし、もう遅い。巨熊達は双子を掴み、お手玉にして目を回させる。 自分のお仕置きを終えた孝高は目を回し、ぐったりとしている双子を孝明に引き渡した。 双子が目覚めた時。 「夢とはいえ、少々やんちゃが過ぎるんじゃないかな」 孝明は魔術師殺しの短剣を取り出し、双子に突きつけた。表情はあくまでにこやか。 「ちょ、何物騒なもん出してるんだよ」 「普段優しいとか嘘じゃん!」 突きつけられた刃と笑顔に危機を感じる双子。 「我が言ったのは“普段”なのだ」 キスミの訴えにあっさりと答える薫。あくまでも普段の事を言ったのであって普段で無い時は言っていない。 「何だよ、それ」 「ひでぇ、オレ達をはめやがって」 薫の返しに悲鳴じみた声を上げる双子。 「はめる? そんなつもりは一切無いよ。ただ、双子くんたちの大好きな悪戯さ。それとも新年早々病院送りがいいかい?」 笑顔なのに目は笑っていない孝明。それが一層恐怖を倍増させる。 「……い、悪戯!?」 「……病院ってここは夢だぞ。有り得ねぇって」 双子は必死。 「有り得ないかどうか試してみるかい。極度の精神的ショックを与える事になるけれど」 そう言うなり孝明は双子に向かって魔術師殺しの短剣を振り上げる。 「ちょ、何だよその精神的ショックっていうのは」 「や、やめろよ。マジで」 双子は両手をかざし、目を閉じ孝明の魔術師殺しの短剣から身を守ろうとする。 振り下ろされると思っていた刃は一向に振り下ろされず、双子はおかしいとうっすらと目を開けた。刃は寸前で止まっていた。 「……悪戯もほどほどにね? これに懲りたら大人しくするんだ。さあ、もうお行き」 孝明は魔術師殺しの短剣を下ろし、笑顔で双子を見逃す。先ほどまでしつこく脅してた割にはあっさりと引き下がる。 「……お、おう。逃げるぞ、キスミ」 「急げ」 ほっとした双子は急いで立ち上がり、そそくさとよろけながら逃げて行く。 「……ただし、逃げられるものならな」 孝明は双子を見送りながらぼそり。 そして、 「ふぎゃぁぁぁぁぁあぁぁぁ」 凄まじい爆発と双子の悲鳴が響いた。先ほど孝明が設置しておいた『インビジブルトラップ』が全て見事に発動したのだ。 「……どうやら俺の罠を楽しんでくれたようだ」 威勢の良い悲鳴に満足する孝明。 「あれほど盛大で現実に戻ったらどうするんだ」 孝高が激しい爆発音に一言。 「心配はない。威力は押さえている」 あっさり孝明は答え、ゆっくりと双子の元へ向かう。 「……悪戯っ子の勘で避けられると思ったのだ」 薫は、意外にあっさり罠に引っかかった双子に驚きながら孝明に続いた。 「さて、二人が気を失っているうちに捕まえて引き渡そうか」 孝高も双子の元へと急いだ。 見事に気絶している双子を見て 「起こさないように静かに運ぶのだ」 「起きたら真っ青から真っ白だろうね」 「二人にはいい初夢だ」 薫、孝明、孝高は二人が目覚める前に迅速にさらなる地獄へと放り込んだ。