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死んではいけない温泉旅館一泊二日

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死んではいけない温泉旅館一泊二日

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3、宴会 〜茨の廊下〜

「さて……少々、入るには気が引けるが。仕掛けやってくださいと言われた以上はしかたない」
 全員が浴室で苦闘している間、誰もいない女子更衣室に、ローグ・キャスト(ろーぐ・きゃすと)は周りを警戒しつつ入った。
 もちろん仕掛け人である。
 しかし、普通の仕掛け人とは違い、普通以上にスリルがあった。
「速いところ……すり替えてしまうか」
 作業中にドアが飽かないことを祈りつつ、ローグは女子更衣室の細工を素早く済ませたのだった。

         §

「え……」
 いち早く、その細工に気がついたのは御神楽 陽太(みかぐら・ようた)のパートナー、御神楽 舞花(みかぐら・まいか)だった。
 どうにか洪水地獄を風船1つの犠牲で抜け出した舞花は、服を着替え足早に宴会会場へと向かおうと考えていた。
 が、ここで一つ問題が発生したのだった。
「なぜ、メイド服になっているのでしょうか?」
 舞花は首を傾げながら、他の人のロッカーをのぞき込むも、どこもすべてメイド服へと替わっていた。
「特に、メイド服自体に罠はなさそうですが……」
 舞花は冷静にその場を切り抜けようと頭を働かせた。
 結果、すり替えられたメイド服を着るという選択を選んだのだった。
 メイド服しかないことに、精神的ダメージを受けふうせんが割れていく中でも、唯一冷静だった。

「……」
「おお! そこの少女も逃げた方が良いぞっ!!」
 舞花はそのまま宴会会場へ向かおうと廊下に出るなり、通路の奥から、ドクター・ハデス(どくたー・はです)が息を切らしながら走ってくる。
 その後ろには直径5メートルはあるだろう、大きな黒い鉄球が転がってきていた。
 ドクターは内心、きっとこの少女も一緒に罠に引っかかるだろうと思っていたが、その期待はすぐに裏切られた。
「忠告、ありがとうございます」
 そう言うと、少女はドクターと鉄球が目の前に来る前に更衣室へと身を潜めてしまった。
 つまり、結局罠に引っかかってるのはドクターだけなのである。
「くっ、なっ、なんなのだあああああっ! この宿屋はっ!」
 ドクターは全速力で廊下の通路を突き進んでいく。
 不思議なことに旅館のスタッフが誰も通路にいないことドクターは気がついた。
「まさか、俺はだまされたのか!?」
 格安宿屋という言葉だけでこの宿屋を選んでしまったことを、亜hで素は今頃公開しつつも逃げる道を探す。
 が、探すまもなく通路は行き止まりにさしかかってしまった。
「ぐぬおおおおっ!??」
「私にまかせるのだ!」
「おおっ!?」
 ドクターが立ち止まりあきらめかけた時、突然男子更衣室からコア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)
声を上げて全速力で鉄球に向かって走ってきた。
 メタルボディな身体を持つコアならこの鉄球を止められると期待しているドクター。
 が、突然走ってきていたはずのコアの足がぴたりととまった。
「ど、どうしのだ!?」
「動けない……どうやら関節部分が錆びてしまったようだ」
 メタルボディにも弱点があった。コアは先ほどまで温泉につかっていたのだ。
 それが原因で錆びてしまっているようだった。
 ドクターの期待は大きく裏切られた。向かってくる鉄球にドクターはただ、無言で下敷きになってしまったのだった。

「うわあああああああああっ!?」
 次々と生徒達が巨大鉄球に追われていく。
「これは、また大きいですね……さて……」
 鬼龍 貴仁(きりゅう・たかひと)はしばらく鉄球に足止めをされていることに、そろそろうんざりしていた。
 このままでは、料理にもありつけないのではないのかという疑問さえ抱きながら、通路に出る。
「あ……」
 鉄球が音を立てて、貴仁へと向かってくる。しかし、貴仁は慌てずに足下を見た。
 鉄球が転がってくる原因は、すべて足下の感圧スイッチによって、自動的に転がってくるという画期的な物だった。
 貴仁は急いで、トラップ解除すると鉄球から逃げ回った。
「……まあ、そうなりますよね」
「こっちに!」
 彩光 美紀が、突然本来は閉まっているはずの部屋から顔を出すと、全力疾走している貴仁を部屋の中へと引き入れた。
 この部屋はもともと、リネン室でスタッフしか出入りできないはずだったが、鍵をどこからか拾ってきたのだった。
「ありがとう」
「いえ、お力になれてよかった」
 貴仁と美紀は罠の攻略に成功したのだった。。