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すいーと☆ペンギンインベーション

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第一章


 アンズーサンタは願いを叶えた。
 そう、叶えてしまった。
 この事態を招いた張本人の一人フユ・スコリア(ふゆ・すこりあ)は歓喜に震えていた。
「スコリアのクリスマスのお願いが叶ってる……す、すごーい!」
 観客席で乱立しだすお菓子の像。
 望み通りの光景に、テンション最大。
 しかし、その思いはどこか場違いに思える。
「す……スコリア?」
 スコリアを見るユーリ・ユリン(ゆーり・ゆりん)の頬からは汗が滝の様に流れている。
「もしかして、この元凶って――」
「ユーリちゃん! 見てみて! みんなチョコや飴になっちゃってるー!!」
 ユーリの問いを無視し、指差すのはルシア・ミュー・アルテミス(るしあ・みゅーあるてみす)
「ルシアさんがチョコにされてる……って、そんな暢気に言ってられないよ! 早く退治しなきゃ危ないよ!」
「えー、そうかな?」
「人がお菓子に変わってるんだよ!?」
「そうよ、ユーリの言うとおりだわ」
 トリア・クーシア(とりあ・くーしあ)もユーリに加勢する。
「人をお菓子に変えるなんて、なんて恐ろしいの」
「甘くておいしそうだよ?」
「それで食べられたらどうするのよ!?」
「そうだよ。早く退……って、スコリア!?」
 あろうことか、スコリアは「この子たちのおかげだよね」とDSペンギンに近づいていた。
「危ないから! お菓子に変えられるよ!」
「そんなこと無いもん。ね?」
 そっとDSペンギンを胸に抱える。
「ペンギンちゃん、どうやったらお菓子に変えれるのかな?」
 抱えられたDSペンギンは一度羽ばたくと嘴を開け、『すいーつ☆キャノン砲』を見せる。
「そっかー、これで変えてるんだね。なるほどなるほど」
「DSペンギン抱いたりして何を――」
 話を終える前にDSペンギンの口からすいーつびーむが発射されユーリを包む。結果、ユーリはミルクチョコレートの像に。
「わーい! ユーリちゃんチョコレートだ!」
「きゃぁ! ユーリがチョコにされちゃったわ!?」
 対照的な叫びを上げる二人。大喜びのスコリアは矛先をトリアに向ける。
「トリアちゃんもお菓子に変わっちゃえー!」
「私も逃げないと……えっ、きゃぁ!」
 足を動かそうとした。が、びーむが掠ったのか足だけチョコレートに変わってしまっている。動くに動けない。
「これじゃ、逃げられない……」
「さあ、トリアちゃんもー」
 これはもう覚悟を決めるしかない。
「ど、どうせお菓子にされるなら、ユーリに抱きついて――」
 無情に発射された光線はトリアをホワイトチョコレートへと変える。
「お、遅れました……って、何だか大変なことになってる!?」
 息せき切って走ってきた白鐘 伽耶(しらかね・かや)は驚愕した。
 目に映るのは黒と白のチョコ像。それもユーリとトリア。
「伽耶ちゃん、やっほー」
「スコリアさん、これはいったい……」
「スコリアのクリスマスのお願いが叶ったの!」
 Vサインを決める。
「そういうことじゃなく……えっ? これはスコリアさんのせい?」
「そうだよー」
「な、何してるんですか!? このままじゃみんな食べられちゃうじゃないですか!」
 DSペンギン達はユーリとトリアの像に群がり、舐め始めていた。
「ユーリさんとトリアさんも危ないです! スコリアさん、遊んでないでペンギンさんたちを止め――」
 伽耶の制止は最後まで紡がれなかった。
「はわわ、伽耶ちゃんがあめちゃんになっちゃった! お味は何かな?」
 ペロリッと一舐めして味を確かめるのは空降 冷花(そらふり・れいか)だった。
「ふむ、これは桃じゃな」
「あ、冷花ちゃん。ということはマリリンちゃんも?」
 スコリアと同じよう、胸にDSペンギンを抱えたマリリン・フリート(まりりん・ふりーと)が現れる。
「これは甘い事件、ええじゃないか!」
「さっきのびーむはマリリンちゃんだったんだね」
「もちろん! お菓子の国の魔女、実にいい気分だ!」
 DSペンギンの頭を撫でる。
「こいつを家に持って帰りたいぜ。そうすれば夢のお菓子ワールドが作れる!」
「おおー、それはいい考えだね!」
「ここいらに居る奴らは、わらわが【氷術】で溶けぬようにしておけば問題なかろう」
「冷凍保存は長持ちするもんね!」
 どんどんと論点が危ない方向にずれていく。
「先ずは近くから夢の実現だね」
「そうだな! 撃って撃って撃ちまくる!」
「みなひえひえのアイスにしてやるのじゃ!」
 乱射される『すいーつ☆キャノン砲』。
 我先にと逃げ惑う人々。混乱は更に加速する。
「ふふふ、次にお菓子になりたい奴は誰だい?」
「お菓子にされた気分はいかがかの?」
「わーい! お菓子、お菓子! スコリアもいっしょーけんめいがんばるもん!」
 誰彼構わず四方八方撃ちまくる三人。
 そして――
『あっ』
 完全に油断した。
 何かに反射した光線は、自身達へと放たれる。
「ぬ、鏡じゃと……?」
 ひんやりしたシャーベットへと変化する冷花。
「文字通り甘い夢だったということかー!」
 マリリンはカラメルたっぷりぷるぷるプディングに。
「これはこれで本望だよね!」
 レモンアイスとなったスコリアの顔は笑顔に溢れている。
 今にも崩れてしまいそうな三名。
 冷気だけが、彼女達を守るすべとなった。