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リアクション
杜守 三月(ともり・みつき)の提案で、ニルヴァーサルスタジオで遊び通した後は、近くにある【獅子の湯】の温泉で、皆で一泊することになった。
「お前等いい加減にしろよ」
ニルヴァーサルスタジオでの支払いは、全てキロスの財布から出た。
更に宿泊代まで出させる気かよ、と言うキロスに、
「何言ってんの」
と五十嵐 理沙(いがらし・りさ)が言い放つ。
「君に恋人が出来たらパラミタきっての大事件扱いで噂千里を走るわよ。
いつの日か来るかもしれない未来の為に、皆を連れてニルヴァーナデートスポット巡りをするのはあなたの使命よ!」
「いつの日か来る未来にお前らは関係ねえだろ」
「リア充目指す男女がキャッキャウフフできる施設なら、ニルヴァーナ温泉【獅子の湯】は最適じゃない!」
「聞いちゃいねえな」
「男湯、女湯の他に混浴や露天風呂もあり、多彩なニーズに応えられ、宿泊もでき、売店やゲームコーナーも充実よ! 当然卓球もできるわ。
皆の水着姿が見れるわよ!」
「何が当然なんだよ。デートで泊まりなら、そっちの覚悟も当然あるんだろうな?」
「さ、行きましょ! 水着で混浴なら、“皆で”遊べるわ!」
というわけで、皆で混浴に入ることになった。
「柚も一緒に混浴に入ろう」
三月に誘われて、皆と一緒に混浴に入って、杜守 柚(ともり・ゆず)は、のんびり湯に浸かっているキロスに
「いいお湯ですね」
と話しかけた。
「混浴なら出会いもあるかもね……と言いたいところだけど、今のところ知り合いしか入ってないみたいだなあ」
いい具合に空いている露天風呂を見渡して三月が言うと、キロスは黙って肩を竦める。
(でも、キロスくんもてるのに恋人いないのって、理想が高いんでしょうか?)
ふと、柚は疑問に思った。
「キロスくんの、好きなタイプってどんななんですか?」
キロスはふっと笑った。
「そうだな、あんたみたいなタイプかな」
「え?」
「明日は他の連中を撒いて、二人でデートといかないか? 柚」
「でも今回は、皆で遊ぶのが目的だろ?」
三月が真面目にそう言って、キロスはふんと肩を竦める。
「お互い、目指せリア充ですね!」
解っていない柚は、リア充を目指す同士(と柚は思っている)キロスの手を握って、互いへのエールを送る。
「……いいけどよ」
キロスは呟いて、特に何も言わなかった。
「キロスくん、何か疲れてます?」
柚はきょとんと首を傾げた。
「さあ! 温泉の後は卓球勝負よ、キロス!」
びしいとラケットを向けて勝負を挑む理沙は、キロスと並んで、くすっと笑う。
「あら身長同じ」
「でかい女だな」
キロスは肩を竦めた。
苦笑しながら二人を見ていたセレスティア・エンジュ(せれすてぃあ・えんじゅ)は、風呂上りの雅羅とラクシュミの姿を見つけた。
「お二人も、いらしていたんですの?」
「うん、今日こっちに来たの」
ラクシュミが答える。二人は女湯に入っていたのだ。
「会えてよかったです。お二人に差し上げたいものがあったのですわ」
少し待っていてくださいませ、と言ってセレスティアは走って行き、何かを持って戻って来る。
「【にゃんこカフェ】で売っている、魔除のお守りですの」
ニルヴァーナの猫っぽい生物、キャットシーをモチーフにした、翼のある黒い子猫をあしらった可愛いチャームを、セレスティアは二人に渡した。
「雅羅さんも今年は幸運の年明けでしたし、きっといいことが沢山ありますわ。
何かあっても、皆さんがいるからきっと大丈夫」
セレスティアは、にっこりと微笑む。
雅羅はお守りをじっと見て笑みを浮かべた。
「ありがとう。大切にするわ」
「実は私も、キロス君にプレゼントがあるのですが」
風呂上りのキロスに、柚は隠し持っていたプレゼントを取り出して渡す。
三月と一緒に選んだアクセサリーだ。
「うん?」
受け取って、中を取り出したキロスに、三月が言う。
「小さな剣の柄に、トパーズが付いてるんだ。つけてくれると嬉しいな」
「トパーズは、キロスくんの誕生石ですよね」
「誕生石? そうなのか」
「剣につけてもかっこいいですよ。
一番赤みがかかったのを選びました。石言葉は『誠実』らしいです。
キロスくんにピッタリですよね!」
「何だそりゃ。嫌味か」
キロスは苦笑したが、特に気分を害した様子ではない。
「綺麗だな。サンキュ」
笑顔で礼を言ったキロスに、柚も嬉しそうに笑った。
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