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賑やかな夜の花見キャンプin妖怪の山

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賑やかな夜の花見キャンプin妖怪の山
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「うぉーーー、すげぇ、きれーー」
 花見会場に到着したアキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)はハイテンションに駆け回りつつ花見ポイントを探しをする。妖怪の山は馴染みの場所のため、ここに来る間もずっとハイテンションだった。
「……アキラ、落ち着くのじゃ。他の客に迷惑じゃろ」
 ルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)は走り回るアキラをどついて大人しくさせる。
「って、痛っ!!」
 アキラはどつかれた場所を撫でながら不満そうに口を尖らせた。
「ここにするぞ」
 ルシェイメアはテント代わりに持参したバーバ・ヤーガの小屋を設置した。花見のための荷物もこの中にしっかりと詰めている。

「早速、料理を用意しますね」
 セレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)は前日から弁当の下ごしらえを開始し当日も早起きして気合の入った豪勢なお料理を作っていた。バーバ・ヤーガの小屋に積んだ荷物の中には下ごしらえをした材料や調理した品々が入っているのだ。セレスティアはそれらを温め直したり手を加えるために小屋へと向かった。
「運ぶの手伝います」
ヨン・ナイフィード(よん・ないふぃーど)はセレスティアを手伝うために一緒に小屋に入った。
「それじゃ……」
 突然、アキラは夜光桜を登り枝に座って会場を見渡し始めた。
「おー、見晴らしいいなぁ。せっかくだから妖怪と花見したいなーー」
 妖怪好きのアキラは妖怪と出会える事を想像し、ワクワクしていた。
「アキラ、早く降りるのじゃ」
 地上からルシェイメアのお叱りが響いてきた。
「ルーシェ、こいうのはどうかな。光る花吹雪〜」
 ルシェイメアにそう言うなりアキラは『風術』で枝を揺らし、花びらを撒き散らす。
「無闇に揺らすな!」
 お怒りのルシェイメア。
 そして、
「大人しくしろと言うておろう」
 アキラが木から下りて来た所でルシェイメアは二発立て続けにどついた。内訳は木に登った事と花を落とした事だ。
「って痛っ!!」
 アキラは顔をくしゃくしゃにしてルシェイメアをにらんだ。
「料理が出来ましたよ」
 セレスティアが花見の準備完了を知らせた。他の参加者からのおすそわけもたっぷりある。

「春先とはいえ、夜は冷え込むの」
 そう言ってルシェイメアは焔のフラワシを『降霊』で呼び出して暖を取る。
 料理も寒さ対策も整い後は花見を楽しむだけだ。
「たくさん作りましたのでおすそわけに行って来ます。先に始めていて下さい」
 セレスティアは料理が載った大皿片手におすそわけに行った。
 残った三人で始める事になった。
「食べるぞ〜♪」
 アキラは待ってましたとばかりに次々と料理を平らげていく。
「あれほど桜を楽しんでおったのにの。花より団子じゃ」
 アキラの猛烈な勢いにルシェイメアはため息を洩らした。そう言うルシェイメアもちょこちょこと料理をつまんでいた。
「あまり詰め込むと喉を詰まらせますよ」
「ん〜、ありがとう」
 心配したヨンがアキラに飲み物を渡した。アキラは渡された飲み物もグイっと飲み干してはまた料理を楽しんでいた。
「よし、満腹になったし、ちょっと散歩行って来る」
 満腹のお腹をさすって夜光桜を眺めた後、アキラは虹を架ける箒にまたがり、空へ。
 狐火童の情報が入り、アキラはどんな妖怪なのかと大いにワクワクしていた。

「……ただいま戻りました。あら?」
 セレスティアは空っぽになった大皿を手に戻って来るなりアキラがいない事に気付いた。
「アキラなら満腹になって空の散歩に行ったのじゃ」
 ルシェイメアが頭上に目を向けながら答えた。
 虹を架ける箒にまたがったアキラが虹の尾を引きながら夜空を駆けていた。
「……楽しそうですね」
 セレスティアはアキラの姿を確認するなり微笑ましそうに笑みをこぼした。
 そして、一段落ついたとして料理担当のセレスティアと給仕担当のヨンも花見を楽しみ始めた。時々、アキラが空腹を満たしにやっては来るが、すぐに空に戻っていた。

「……風流じゃな」
 舞い散る花びらを眺めながらちびちびとやるルシェイメア。ゆるりと流れる時に身を任せ静かに楽しんでいる。
「アキラさん、楽しんでいますね」
 ヨンはジュースを飲みながら楽しげに散歩するアキラの姿を追った。
「本当に落ち着きのない奴じゃ」
 ルシェイメアは呆れながらアキラの姿を見たが、どこか楽しんでいるようだった。
「……四人で過ごす事が出来てとても楽しいです」
 セレスティアは自分の仲間である三人の姿をそれぞれ見て、満足そうに言葉を洩らしていた。
 それから少し経って
「……すみませんが、お先に休ませて貰いますね」
 早朝から花見の準備をしていたセレスティアはとうとう眠気に襲われ、小屋に引っ込むことにした。
「後片付けは私がするから、ゆっくり休んで下さい」
「……昨日から頑張っておったからの、ご苦労じゃった」
 ヨンとルシェイメアは小屋に入って行くセレスティアを労った。昨日と今日と花見のために気合いを入れて頑張っていたので眠気が襲うのも当然である。
「はい。では、おやすみなさい」
 セレスティアは眠たそうな顔でもう一度だけルシェイメアとヨンに挨拶をしてから小屋に入り、休んだ。

 セレスティアが休んでから少し後、
「……空になったお皿とか片付けて行きますね。ルーシェは気にせず、ゆっくりしていて下さい」
「あぁ、すまんの」
 ヨンはまだ楽しんでいるルシェイメアのために軽く料理を残しながらてきぱきと後片付けをしていた。
 この後、ヨンにも眠気が襲い、小屋で休みについた。
「……元気なのはアキラだけか」
 残ったのはルシェイメアとアキラだけだった。
 いつの間にか狐火童も出現していた。

 夜空。

「うぉ〜、空から見る桜も綺麗だなぁ。狐火童の姿もよく見えるなぁ」
 アキラは空から光の海と見紛うほど美しい夜光桜とその間を飛び歩く狐火童の姿を存分に楽しんでいた。
「何か飛んでると思ったら人かよ」
 長細い白い布にまたがった河童のような少年妖怪がアキラの前に現れた。
「おっ、もしかしてこの山の妖怪?」
 アキラは妖怪の出現に大喜び。
「おう、見ての通り妖怪だ。この山の川に住むがんぎ小僧の銀太といったんもめんの木綿だ。こいつは無口だから滅多に喋らねぇけど、良い奴だ。こいつと一緒に穴場の川に行って大好物の魚を捕って食べて来たんだ。ここの魚ばっかりは飽きるからな。ご馳走してやるから来いよ」
 銀太は魚の骨もかみ砕きそうな鋭い歯を見せながら自己紹介をした後、アキラをご馳走に誘う。
「行く行く」
 アキラは迷う事無く銀太に付いて行った。
 アキラは銀太が住む川岸に案内され、捕り立ての魚をご馳走して貰った。銀太は生で頭からいくがアキラは火を通して焼き魚にして食べた。銀太を送り届けたいったんもめんはいつの間にかいなくなっていた。
「……ご馳走になるとは思わなかったよ。それより、葦原の住民と少しぎくしゃくしていると聞いたけど」
「そうみたいだぜ。俺は木綿と今日みたいに魚を食べに行っていたから巻き込まれなかったけど。まぁ、俺はそれほど人間嫌いじゃないし。魚くれる奴とか魚食べる奴とか好きだし」
 アキラと銀太は以前この山で起きた事件について話していた。その後もたわいのない話で盛り上がり、存分に楽しんでいた。
 がんぎ小僧と別れたアキラは花見会場へと戻るが、食べてたっぷりと遊び回ったせいか疲れて眠気が体中に巡り、箒は浮き沈みを始め両まぶたが今にも閉じそうなほどだった。到着するなりそそくさと小屋に入り、眠りに就いた。
「……さてと、戻るかの」
 ルシェイメアは小屋を引っ張って狐火童騒ぎで賑わう会場をゆっくりと後にした。ルシェイメアが眠りに就いたのは帰宅してからだった。

 日中。
「ふむ。妖怪の山で花見か。我ら秘密結社オリュンポスも、社内イベントとして、花見に出かけるとしよう!」
 世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部の天才科学者であるドクター・ハデス(どくたー・はです)の耳にも夜光桜の話は入っていた。
「……花見ですか?」
 アルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)はあまりにも平和なイベントに聞き返した。
「秘密結社であろうとも、メンバーの福利厚生は重要だからな。早速、準備を始める!」
 ハデスはそう言うなり、すぐに行動を開始した。

 戦闘員達を集め、
「新入り戦闘員は、夜に向けての席取り、アルテミス達は飲み物やつまみの買い出しに行くのだ!」
 ハデスは『優れた指揮官』で戦闘員達に手早く花見の準備を指示した。
 ハデスの指示が下るなり新入り戦闘員達は速やかに妖怪の山に行き、席取りの任務を遂行。ハデスが到着するまで休む事などはせず、横取りされないようにきっちりと見張りをしていた。
 アルテミスは幾人かの戦闘員達を引き連れ、大量のジュースと酒につまみを買い込んでから妖怪の山へ急いだ。
 ハデスが戦闘員達を引き連れ、妖怪の山に到着したのは、花見の準備が全て整った後だった。最高の席に大量の飲食物を手に入れる、ここまでの一連の動きに少しも隙はなく無駄に統率のとれた行動をする一団だった。