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リアクション
【差し替え画像 二】
左右に深緑の森が迫る、紺碧の静かな流れ。
季節は夏。
透き通るような蒼い空をバックに、一隻のフェリーが水面上を流れてきている。
いや、これはよく見れば、フェリーの模型だ。
その背景ではG線上のアリアの穏やかな調べが、ゆったりとした清涼な空気感を醸し出している。
このフェリーの模型、よくよく見ればその下側に人影が見える。
幼児用の旧式スクール水着を身に着けた誰かが、ひしゃげたガマ蛙のように、水面に突っ伏していた。
ある意味、凄惨ともいえなくもない光景だが、遠目から見れば非常に優雅なシーンに映る。
川辺には砂地が広がり、スクール水着やセパレートタイプの幼女用水着を着た三つの小さな人影が、本を読んだり、或いはじゃれ合ったりして、思い思いの時間を過ごしている。
大きな日傘の下で本を読んでいる夏目漱石著 夢十夜(なつめそうせきちょ・ゆめとおや)は、川の流れに身を任せているガマ蛙、もといフェリー模型の下で潰れている人物にちらりと視線を寄せた。
しかし、すぐに興味を失ったように読書へと戻る。何故か股間がぷっくりと膨らんでいるのだが、そこはカメラワークで見なかったことにしよう。
色違いのセパレートタイプ幼女用水着を着込んでいるのは、樹乃守 桃音(きのもり・ももん)とパストライミ・パンチェッタ(ぱすとらいみ・ぱんちぇった)。
きらきらと陽光を跳ね返すビーチボールで、楽しそうに遊んでいる。
水辺で飛沫を上げている桃音のもふもふした尻尾に、ガマ蛙、じゃなくてフェリー模型の人物が微妙に引っかかり、少し沈みかけた。
船首の辺りから、ごぼっと大きな泡が吹き上がり、パストライミの意識がビーチボールから、ガマ蛙もといフェリー模型へと移ったようだ。
だがそれでも、川の流れは決して止まることはなく、フェリー模型をゆっくりと押し流してゆく。
この画像を見た視聴者のひとりが、何気にこう呟いたという。
「Nice Toad」
* * *
薄暗い中継車の中。
「あのガマ蛙……じゃなくてフェリーのひと、もしかして、オーバーキルのひと?」
彩羽は、幾分困ったような表情で、う〜んと首を捻っていた。
彩羽の推測通り、ガマ蛙、もといフェリー模型を背負っていた人影の正体は、ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)であった。
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