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リアクション
森の中を周囲を見回しながら歩くリネン・エルフト(りねん・えるふと)。
「悲恋話は何処にでもあるものね……なんでみんな人の不幸が好きなのかしら?」
「不幸ではなく、二人の間にある『愛』に私たちは惹かれるのじゃない?」
「そうかしら? そういえば、南は互いの偽物がでるらしいわよ。双樹の樹で会えたら、どんなのに会えたか話してみない?」
「面白そうね。二人でいる時には会えないのかしら?」
「それは入ってから分かるんじゃない? もし、派手に悪さをするならほおっておけないわね」
そんなことを森に入る前にフリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)と話していた事を思い出しながら歩いて行く。
噂通り、霧の中で逸れてしまってからは持ち前の方向感覚を駆使して進んで行った。
その進行方向から誰かの人影が見える。
それはだんだんとはっきり見えるようになり、フリューネが姿を現した。
「フリューネ!」
「ここにいたのね。探したわ」
つつっと寄り添ってくるフリューネ。
「逸れてから一人で寂しかったわ」
「逸れちゃってごめんね?」
露骨に迫って来るフリューネにリネンは確信を得る。
「私、逸れてからあの時の事を思い出してたの」
「あの時って?」
「覚えてない? つい最近見つけたユーベルの剣なんだけど」
「あ! 思い出したわ。二人で一緒に剣を手に入れたのよね」
「フリューネ……」
「どうしたの?」
「残念だけど……私が好きな人は、あなたじゃないわ」
「なんでそんなこと言うの?」
「だってユーベルは私のパートナーで剣の花嫁ですもの。フリューネと一緒に手に入れたりしないわ」
本当に残念そうに微笑むと、ニセモノのフリューネは声なき声で消えていった。
白い霧も晴れ、目の前には双樹の樹がどっしりと構えていた。
「これが双樹の樹なのね……」
二本の樹が絡み合ったただの樹だというのに、どこか神聖な感じを醸し出すその樹に目を奪われていると、フリューネがこちらにやって来る。
「先に双樹の樹を見つけてたのね」
リネンにならって双樹の樹を見え上げるフリューネ。
「うん。ねぇフリューネはどんな人に会ったの?」
「ふふ、とっても情熱的に迫って来たわ」
「こっちのフリューネもそうね。記憶がないからすぐにボロをだしたけど」
「そうだったの」
タイミングを計っていたかのように自然に手を器のように合わせる二人。
そこへ一枚の葉から滴ってきた雫が落ちてくる。
沁み込むようにして消えてきった後も二人は無言のまま見つめ合っていると、どちらからともなく笑い声を上げるのだった。
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