薔薇の学舎へ

波羅蜜多実業高等学校

校長室

葦原明倫館へ

断崖に潜む異端者達

リアクション公開中!

断崖に潜む異端者達

リアクション


▼終章 エピローグ


◆シャンバラ教導団本校舎・団長室◆

 シュヴァルツは報告書を読んで現状を把握した。

「……そうか、断崖の拠点は木っ端微塵に吹き飛んじまったのか。
 エレクトラの連中は同志だけは大切にする風潮だったはずだけど、仲間ごと消し去るなんてな。
 よっぽど切羽詰まってたのか、考え方が変わったのか―――」

 作戦の顛末を知ったシュヴァルツは、所見を述べる。
 金 鋭峰(じん・るいふぉん)が彼を呼び出したのは、彼の見解を聞きたかったからだった。

「起こった事には、どこも不自然な点はないといった感想だな?」
「そうだなぁ……連中ならこれくらいやりかねないぜ」
「つまり、連中の緊急時対策用マニュアルにあった通り、
 ドラゴン達は意図的に呼び出されて、拠点を破壊したという認識でいいのか」

 なんということだろう。
 報告によると、現れたドラゴンは拠点クラスの巨躯を有していたという。
 それはパラミタが日本領海の上空に出現した頃、
 日本政府の依頼を受けた米軍が、航空部隊をパラミタに送り込んだ際、それを撃墜したドラゴンと同レベルの存在だ。

「自爆機能が無いことを、こんな強行手段で克服するとはな……」
「つっても、ドラゴン達を完全に操れるわけじゃないと思うぞ?
 そんな事が可能なら、さっさと教導団の本校舎でも襲撃させりゃいいって話だ」
「うむ。マニュアルにはこう記述されているのだよ」

──────────────────────────────────────────────────────────────────

 最終的解決の手順は次の通りである。
 1.拠点内の各所へ量産型IRISを満遍なく配置すること。
 2.手順1を実施後、配置した兵の回線を一斉切断すること。
 3.一定の時間を経て、パラミタの拒絶機能による拠点の抹消が実施される。


──────────────────────────────────────────────────────────────────

「わからない単語があるな。量産型だって……?
 俺がエレクトラで被検体やってた頃は、IRISに量産の手段なんてなかった。
 IRISとして完成したのは、俺と、ルージュと、……ヴァイスの3人だけだったんだ。
 まぁエレクトラの活動範囲がまだ地球限定だった頃の話だけど」
「そうか……ヴァイスという人物はわからないが、確かルージュと名乗る少女は断崖の拠点内で目撃されていたはずだ。
 遭遇者の証言では、その少女が研究所襲撃の外部犯である可能性が高いらしい……報告書にも載っていたであろう?」
「あぁ、把握してる」
「量産型IRISについては……
 君がエレクトラを抜け出した後に、連中がIRISの量産化を成功させたという事であろうな。
 そしてその実体は、手順2にある回線の一斉切断からのドラゴン襲来で、推測できる。
 量産型IRISは、回線を切断されるとただの地球人に逆戻りする、不安定な代物である……ということであろう」

 要約すると、エレクトラは断崖の拠点のいたるところに量産型IRISを配置して、
 そこからIRISとしての権限を失わせることで、大量の地球人を内包した軍事拠点を作り出したのだ。
 そして、当然の帰結として……その拠点は拒絶されたのである。
 この説なら、最終局面で敵のジャミングが全て消えていた事にも説明がつく。IRISとしてのスキルが使えなくなったのだろう。

 ―――地球人と地球のテクノロジーは、パラミタでの活動を拒絶される。
 この事実を克服しようとして生み出されたIRIS計画が、
 断崖の拠点においては、この事実を利用するために使われていたのだ。……なんという皮肉だろう。

「彼らにとっては証拠を隠滅するためだろうが……許せる所業ではないのだよ。
 何とか全員が脱出できたが、撤収が一歩遅れていたら、我が軍も甚大な損害を受けていた。
 ―――しかし、今回はこちらも、何の手がかりも得られなかった訳ではない。
 断崖の拠点はほぼ崩落したが、自然現象に頼った隠滅だったおかげで、一部は取り残されている。
 また、我が軍の隊員が持ち帰った情報・物証も、それなりの量があったはずだ」

 この戦果を足がかりに、一気に攻めに転じる―――!!
 金はそう決意して、強く拳を握りしめた。

 シュヴァルツ自身も、いよいよエレクトラの本質に迫っている事を肌で感じ、覚悟を改めていた。

(表だってルージュを出してきたんなら、そろそろ俺も出ていい頃合いだな。
 見てろよエレクトラ……これ以上、お前らの好きにはさせないぜ……!)


担当マスターより

▼担当マスター

水無月へる

▼マスターコメント

▼ マスターより

 水無月へるです。
 ここまでお読み頂いた方、およびご参加頂いたプレイヤーの皆様、ありがとうございました。

 『断崖に潜む異端者達』シナリオは、ついに掴んだエレクトラという組織の尻尾から、
 どれだけ核心に迫ることができるか―――という内容になっています。
 アイデア溢れる多種多様なアクションを頂き、断崖の拠点に隠された要素はおおよそ出尽くした感じです。
 引き出せなかった情報もわずかにあったのですが、それは今後の調査・解析で明らかになっていくでしょう。

 ……さて、へるのシナリオでは、これまであまりに強力な存在というものは登場しませんでした(ジェラルドは中々でしたが)。
 しかし、本シナリオではエレクトラも必死ということで、それが登場しています。
 人呼んで隻眼のルージュ
 今回はギリギリの状況で登場したので、さっさと逃げてしまいましたが、恐ろしい戦闘能力を誇っています。
 続くエレクトラ編では、エレクトラの幹部であり秘密兵器である彼女をどうするかが、カギとなっていくでしょう。
 他にも、エレクトラの声を語るシャウトも気になるところですね。彼女はどういった存在なのでしょうか……?

 そして、次回は……いよいよあの黒い人も動き出す!?
 これまでずっと見に回っていたのには、理由があるようですが―――
 そこはお楽しみということで、ひとまず皆様アクションお疲れ様でした。
 よろしければまたご参加ください。お待ちしております!