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リアクション
VS 空京のカリスマ講師
清々しいほどに澄み渡った、蒼空の下。
晴れやかな気分をぶち壊すように、ニルヴァーナの児童施設には、不愉快な人物がぞろぞろと集まっていた。
彼らの先頭に立っているのは、下着姿になった二人の女性。ファット・ガールとリトル・ウーマンである。
《ナスティ・ガールズ》を自称する彼女たちが、白昼堂々と見せびらかす下着には、なんと核兵器が搭載されている。二人はその名の通り、放射線をまき散らす『汚い爆弾』そのものであった。
ナスティ・ガールズの狙いは、東西シャンバラ代王――セレスティアーナ・アジュア(せれすてぃあーな・あじゅあ)と高根沢 理子(たかねざわ・りこ)を人質にとることだ。その上で、黒幕の《八紘零》は、代王たちと引き換えに『ファーストクイーンのクリスタル』を要求している。
セレスティアーナと理子はとくに物理的な拘束をされているわけではない。しかし、児童施設の人々を置いて自分たちだけ逃げる、というわけにもいかないだろう。
核の抑止力を前にしている以上は、人質にとられているのと変わりない状況だった。
「ここは児童施設……。ショタの匂いがプンプンしますわ!」
目をキラキラさせながら体育館に飛びこんできたのは退紅 海松(あらぞめ・みる)だ。しかし彼女がやってきたころには、中にいた子供たちはほとんど避難している。
「ショタの匂いを嗅ぎつけてここまで来ましたのに……全然見つけられませんわ〜……」
ぐったりと肩を落とし、体育館からでてきた海松だったが。
「って、えっ! あそこにいるのは、噂のカリスマ講師じゃありませんこと!?」
海松が指さしたのは、ファット・ガールを護衛する不愉快な仲間たちのひとり、空京のカリスマ講師だった。
このカリスマ講師は、特徴的なパフォーマンスでいちやく有名になった。「じゃあ、いつやるか? 今でしょ!」。なにが面白いのかよくわからないが、流行とは概してそういうものである。
その後、講師はテレビなどのメディアにも出演していたが、そろそろ飽きられ始めているのは本人がよく自覚していた。
今回の蛮行に及んだのは、すべてを投げ打つ覚悟があった故である。
「へへっ。いい獲物を発見したぜぇ」
カリスマ講師は、連続強姦殺人鬼としての本性を全開にしていた。海松を舐め回すように見やって舌なめずりをする。
「こいつぁ、なかなかの美少女だ」
たしかに海松は美少女と呼んでもさしつかえない容貌だ。『重度のショタ好き』という性癖さえ受け入れられるのであれば。
「これは……絶好のチャンスですわ! そこの貴方! 一緒に、同人誌を作りましょう!!」
あろうことか。
海松は、カリスマ講師を同人仲間として引き入れようとしていた。
「……貴女は正気ですか? あぁ。貴女に正気なんて、もともとありませんでしたね」
パートナーのフェブルウス・アウグストゥス(ふぇぶるうす・あうぐすとぅす)が、呆れ果てたようにつぶやいている。
彼としては、変態は変態同士、さっさと送り出したいところだった。しかし、周りの人達への迷惑を考えると、そうも言っていられない。
「貴方の噂は聞き及んでおりますわ。なんでも女生徒というシュチュエーションがお好みとか!」
フェブルウスのジト目も気にせず、海松は説得をつづける。
「私がショタ専門だったように、貴方は女子生徒というフレーズに芳しい香りを感じるんですのよね! 貴方は、私と同類なのですわー♪ その妄想、絵にして文にして、一緒に売りだしましょう!」
そして、相手の反応をうがかうように、こう聞いた。
「同人、いつやるの?」
「…………」
「…………」
「………………いや、やらねーよ!」
カリスマ講師は、懐から暗器を取り出して叫んだ。
交渉は決裂である。
女性の骨で作った忍び鎌を振り回し、飛びかかるカリスマ講師。フェブルウスがすぐさま【アルティマトゥーレ】を撃ちこんで、相手の足元を凍らせた。
「女の子の体を改造して武器を作るなんて! こんな男、絶対に許せないわ!」
桜月 舞香(さくらづき・まいか)は激怒していた。
女の敵となる男を憎む舞香が、カリスマ講師を見過ごせるわけがなかった。
「こいつだけは絶対に許さない。生かしておかないわ」
露出度満載の強化型ビキニアーマーで挑発する。まばゆいばかりの舞香の肢体に、カリスマ講師はすっかり釘付けとなった。
「いつ殺るか? ――今でしょ!」
持ちネタを繰り出しながら彼は飛びかかる。だが、彼の足元はフェブルウスによる氷で滑ってしまう。
講師は舞香のセクシーな肢体、及び八紘零による洗脳により、すっかり理性を失っているようだ。
「い……いつ犯るかぁぁぁ? 今でしょぉぉぉぉぉ!」
女性の素肌を前にして、講師は我を忘れていく。その半面、舞香は素肌を魅せつけるほど強くなっていた。
裸拳。それは肌を露出することで強くなる、女の武器を二重に兼ね備えたスキルだ。
カリスマ講師の忍び鎌を、まるで新体操のように軽やかにかわす。歴戦の飛翔術を使って、舞香はバトルハイヒールによる蹴りをお見舞いした。
ハイヒールの尖った部分が、講師の額に直撃。
「女の子の身体はね。生身の女の子のままでいる方がずっと恐ろしい武器になるのよ」
「うっ……」
相手の忍び鎌が、力なく地面に落ちるのを見届けながら舞香は告げた。
「その醜い体で思い知ることね!」
太ももに頭を挟み込み、そのまま後ろに反り返って頭から叩きつける!
それは投げの極意、フランケンシュタイナーだ。
「ぐあっ!」
フェブルウスが施した足元の氷が、カリスマ講師の脳天で砕かれた。全体重を頭に直撃されては、どんな人間も耐えられないだろう。
焦点のあわない瞳を泳がせ、横たわったままぴくぴくと痙攣するカリスマ講師へ、舞香はとどめにリボンソードを向けた。
「楽には逝かせてあげない」
少しずつ彼の体を切り刻んでいく。可愛らしい純白の鞭の切っ先が、カリスマ講師の鮮血で赤く染まった。
「ああ……助け……うぁあぁぁ……」
「情けない声だしちゃって。馬鹿みたい」
かつての犯行とは立場が逆になった、カリスマ講師の心中を侵していくのは。
彼がこれまで犠牲にしてきた女の子たちの、無念。恐怖。懇願――。
「ああ! いつ、逝くか……?」
力なく両手を挙げながら、
「今で……しょ……」
最後の持ちネタを披露すると、リボンソードで嫐られたカリスマ講師は、ついに息絶えた。
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