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一寸先は死亡フラグ

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一寸先は死亡フラグ

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DIE6章 Q.一体何が起こるというんです?

「死亡フラグっていうのはあえて踏み抜くくらいの気持ちで行った方が良いんですよねぇ」
「そう、死亡を免れようとするとそれこそ死に向かっていってしまうのだからな」
 とあるフロアにて、レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)ドクター・ハーサン(どくたー・はーさん)が話をしていた。
 2人はこの状況で、同じ考え――逆にフラグ建てまくれば、危険を回避できるんじゃね? という事に行き着いたのである。
 その話をした結果、意気投合したのか2人でその話で盛り上がっていたのであった。
「……で、浮かんだの?」
 その後ろで、ミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)が話しかける。
「……えーっと、い、色々あると思うんですよぉ?」
「例えば?」
「そ、そうですねぇ……旦那様の写真が入ったロケットとかどうでしょうかねぇ?」
「そんな写真入りロケット、レティ持ってるの?」
 その質問に、レティシアが思いっきり目を逸らす。ああこれ持ってないパターンや。
「ドクターは何か策はお持ちで?」
 呆れた様に溜息を吐くミスティの横にいたアリス・バックフィート(ありす・ばっくふぃーと)がハーサンに問う。が、ハーサンは聞こえていないように振り向きもしなかった。
 2人とも、考えはあった。だが、具体的な案が無かったのである。
 あーだこーだレティシアとハーサンが言うが、どれも実際やれるかどうかとなると難しい物ばかりであった。
「……苦労するわね」
 ミスティがアリスにそっと話しかける。
「いえ、いつもの事よ」
 表情を変えないアリスに、ミスティが苦笑する。
「んー……でも変なのよねぇ」
「変?」
「何て言うか、見えるのよ……いやーなオーラというか何と言うか……」
 そう言ってミスティがレティシアに目を向ける。彼女の言う通り、なんとなく周囲に言葉にしがたいオーラが漂っているようにも見える。
 それはレティシアだけではない。隣にいるハーサンにも漂っているようであった。
「とにかく、逆にフラグを建てるくらいの行動をした方が良いだろう。これで『あ、死んだ』と思うくらいの行動を。建てまくれば『また生き残ってしまった』みたいな展開もあるだろう!」
「そ、そうですねぇ! 探してみればフラグはそこいらにあるでしょう! 外に大量の雛罌粟とか!」
 そんな状況だと露知らず、再度盛り上がるハーサンとレティシア。
「……もう既に何かフラグを建てているんじゃないかしら?」
 アリスがその様子を見て、ぽつりと呟く。
「何か、って何?」
「さあ……そこまでは私も解らないわ」
 そう言って、アリスが再度レティシアとハーサンを見る。オーラは濃くなっている気がした。

――ミスティとアリスは気づいていない。自分にも同じオーラが漂っている事を。

 この事態、更に何かが起きようとしていた。

     * * *

「ど、どうですか!?」
「うーん、いないみたい」
 黒崎 ユリナ(くろさき・ゆりな)の言葉にリゼルヴィア・アーネスト(りぜるゔぃあ・あーねすと)が首を横に振る。
「ああ……竜斗さんとフィリス君、何処に行ったのでしょうか……」
 ユリナが頭を抱える。

――ユリナとリゼルヴィアは、黒崎 竜斗(くろさき・りゅうと)フィリス・レギオン(ふぃりす・れぎおん)を探していた。
 元々竜斗達は旅行にこのホテルへと訪れていたのであった。しかしこの事態を知るや否や、
「誰かが解決してくれるっていうのを待つのも性に合わない。俺達も調査しよう!」
と竜斗がやる気を出したのであった。それに真っ先に賛同したのはフィリスだ。
「外にも出られないし、一緒に犯人を捕まえよう師匠!」
 そんな2人をユリナは「このまま部屋にいた方が安全なんじゃ」と、リゼルヴィアは「なんかすごいことになったなぁ」と思い眺めていたが、段々と盛り上がってきたのか変な方向にエスカレートしていったのである。
「よし決めた! 僕この事件が解決したらルヴィちゃんに告白する! それで大人になったら2人で小さなお店を開くんだ!」
 ダイレクトなお約束フラグを建てたのはフィリスであった。余りにお約束すぎなフラグにユリナは固まるが、竜斗はただうんうんと頷くだけであった。
「そうだな……ユリア、聞いてくれ」
「え!? あ、は、はい!」
 突然竜斗がユリアの肩を掴む。
「ユリナ……無事に帰ってきたら俺と結婚してくれ!」
「もうしてますよ!?」
「生きて帰るためにも絶対解決してみせる! だから待っていてくれ!」
「いやなんでわざわざ自分からフラグ建ててるんですか!? って竜斗さん!? 竜斗さぁぁぁん!」
 死に急ぐ竜斗とフィリスはそのまま、部屋から飛び出して行ってしまったのだ。

「ああぁぁぁ……本当、いいんでしょう……」
 絶望的な表情を浮かべるユリナの隣で、温泉まんじゅうを口に詰め込んでいたリゼルヴィアが顔を顰めた。
「うーん……早く探した方が良いかも。何か、嫌な予感がするんだよね」
「い、嫌な予感……」
 ユリナの顔から、更に血の気が引く。リゼルヴィアの勘はよく当たるという。
「は、早く探しましょう! ああ竜斗さんとフィリス君、何事も無ければいいんですが……!」
 祈る様にユリナが呟く。

――だが気づいていなかった。リゼルヴィアの嫌な予感、というのが自分にも降りかかる事であるという事に。