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リアクション
6.
「――っ!」
コントロールルームに到達したセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は、テロリストのリーダーの姿を確認すると問答無用で部屋を駆け抜け追い詰める。
その速度は尋常ならざるものであり、テロリスト達では目で追うことすら難しいだろう。
セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は銃口をリーダーに向け、警告すらなく発砲する。
銃弾はリーダーの肩口に当たる。
さらに二人共が『タイムコントロール』を使用し、リーダーの動きは目に見えて鈍くなった。
既に話し合いによる解決を求めるべき段階ではない。
テロリストは、少なくともそのリーダーは対話することを放棄したのだ。
「――はぁッ!」
「……ふん」
完全にその姿を捉えたセレンの拳はしかし、リーダーの近くに潜んでいた辿楼院 刹那(てんろういん・せつな)の暗器によって阻まれた。
想定外の方向から攻撃を受け、しかしセレンは体勢を立て直し襲撃者と対峙する。
「……テロリストに協力するつもり? 悪いけど、殺さないような手加減は期待しないでね」
「わらわは依頼を受けてここにいる。人が何人死のうがどうなろうが関係ない、それがわらわのしごとじゃからのぉ」
それだけの言葉を交わすが、そこに相手を理解しようという意志はない。
戦場に立った以上、敵対者は排除するものである。
睨み合いは数秒と経たず、距離の奪い合いへと変化する。
高速の動きで撹乱するセレンに対し、毒虫を撒き暗記の投擲で牽制する刹那。
さらにはセレンの死角を絶妙に援護しつつ、隙をついてリーダーへの一撃を狙うセレアナ。
互いに一切の容赦はない。
しかし拮抗、というには刹那の方が辛かった。
防衛戦であり、かつ相手の数が多い。
混乱したテロリスト達は、リーダーに追従するものと投降を考えるもの、互いが互いを牽制し合う形になっている。
一人で侵入者を相手取るのは流石に厳しいものがあった。
「ふっ――!」
「ちぃッ!」
フェイントを交えて叩き込まれるセレンの拳に、刹那は後退しつつ暗器を飛ばす。
毒虫によって傷を負わしているはずだが、目の前の相手は動きに迷いがなく。
――しかし刹那もまた、一人ではない。
片腕を引いて、合図を出す。
「――セレン!」
「ッ!?」
セレアナの声によってセレンは足を止め、その一歩先を銃弾がかすめた。
銃を構えつつ全体をを警戒していたセレアナはセレンフィリティの傍に駆け寄る。
背を合わせるようにして、襲撃者たちへの警戒を強める。
「刹那様。援護いたします」
『カモフラージュ』によって姿を隠したまま、イブ・シンフォニール(いぶ・しんふぉにーる)はスナイパーライフルを構え直した。
狙撃による牽制。侵入者と刹那の距離が離れたのを確認すると、ミサイルポッドによる砲撃を行う。
炸裂、轟音、爆炎。
着弾を確認したが、直前に気付いて回避したのか、侵入者の数を減らせてはいない。
「――戦闘を継続します」
戦火の中、さらなる攻撃のために、イブは表情を変えず小銃の先を敵へと向けた。
ファンドラ・ヴァンデス(ふぁんどら・う゛ぁんです)は戦いの最中、リーダーの言動を思い返していた。
「……保険は必要ない、ですか。初めから起動するつもりで、それ自体が『目的』なら。なるほど、なかなか気が合いますね」
中空より現れる大量の武器とによって侵入者を足止めしながら、口角を上げる。
ファンドラの望みであるパラミタの崩壊。
リーダーの気性はそれにとって非常に都合がいい。
「だとすれば……フフ、そうですね。恐らくは。ならば時間稼ぎをさせてもらいましょうか――」
女王・蜂(くいーん・びー)はファンドラと共に、リターニングダガーを投擲し足止めに徹している。
舞うように槍を振り、高々と飛び上がると振るい落とす一撃を以て離脱する。
その宙を舞う速度によって、侵入者たちを翻弄する。
ここに至り、テロリスト達の中には覚悟を決めたのか思考することを止めたのか、侵入者との戦闘に参加するものが表れる。
女王・蜂は彼らを援護し、また彼らの援護を受けられるように立ち回り、ファンドラのサポートとして時間稼ぎをする。
乱戦となった。
「ファーニナル大尉! 預かってた武器だ、制圧戦に入るぜ!」
しかして間を置かず、援軍が到着する。
「助かる! 他の人たちのサポートをしてやってくれ!」
「了解だぜ!」
カル・カルカー(かる・かるかー)はトマス・ファーニナルに武器を渡すと、自らも制圧に参加する。
交渉役として武装を最低限としていたメンバーに武器を返還し、戦闘要員の増強を行う。
さらには混乱したテロリストの逃走を防ぎ、敵対的な者は撃破し、武装解除と拘束を行う。
彼らの活躍により、一時膠着しそうになった戦況は翻った。
「ま、日頃の訓練の見せ所だね」
カルが効果的に戦場を駆け回ることで、テロリストは瞬く間に制圧されていく。
「とはいえテロリスト側の被害も抑えるべきだね……無駄に殺しちゃったら暴走する奴が増えるかもしれないし」
同情ではなく、あくまでも冷徹な状況判断として。
カルにとって人を殺すことそのものにはさほど抵抗がない。
殺そうとするものは殺されても仕方がないと言えるし、戦いの場で迷うべきでないことはとっくに理解し、覚悟している。
「『全ての山は登り』ました。残るはこの制御室だけとなります」
ジョン・オーク(じょん・おーく)が遺跡内の制圧が開始されたことを報告し、トマスはそれに頷く。
既に制圧班は遺跡の全体をくまなく包囲しており、さして時間をかけることなくテロリストたちを拘束することだろう。
遺跡内のテロリストを捕らえた制圧班が制御室へと到着すれば、残りも問題なく鎮圧することが可能だろう。
例え『夢を見る匣』が起動しようとも、探索班が解除パスワードを発見すれば爆発前に停止させられる。
既に趨勢は決していた。
「君たちはどうやってここまで? テロリストたちも混乱していたとはいえ、潜入には骨を折っただろう?」
「なぁに、隠れるのは得意なんでな。避けられない相手はカルとジョンが捕まえてくれた。ついでに服も奪ったおかげでそれほど苦労はしなかったぜ」
トマスの問いにドリル・ホール(どりる・ほーる)がニヤリと笑う。
光学迷彩によって隠れつつ進むことで、制圧班より一足早くここに到達することができた。
裏方としては最高の仕事である。
戦闘要員としてではなくとも、出来ることはあるのだ。
「とはいえ、こうなっちまったら仕方ねえ。オレも制圧の手伝いはさせてもらうぜ?」
武装が整い、外部からの脅威を排除し、戦力は格段に増強され。
――契約者たちは、テロリストを一気に制圧する。
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