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リアクション
【3章】ずっと傍にいた
『煌めきの災禍』を狙っているのは、何もソーン一味だけではなかった。悪の秘密結社オリュンポスの大幹部ドクター・ハデス(どくたー・はです)は、機晶精霊の技術を世界征服の野望の為に使おうと目論んでいるのだ。
急ぎ洞窟から脱出してきたハデスは、高笑いと共にその場に現れた。
「フハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクターハデス!先程はどさくさに紛れて『灰色の刺』首領である貴様を倒そうと思ったが、本性を表した以上、もう遠慮はいらんな!」
ハデスがそう言い放つのと同時に、近くの叢が揺れる。森の中から姿を現したのは、ハデスの忠実な部下怪人 デスストーカー(かいじん・ですすとーかー)とオリュンポスの本隊だった。その数ざっと十五、六人といったところだろうか。
「さあ、デスストーカーよ! お前の真の力を引き出してやろう!」
そう言うとハデスは自らのスキルによってデスストーカーのギフト用キャノンを強化し、更に【機晶解放】を行って彼の戦闘能力を上昇させる。
「さあ行け、我が部下、怪人デスストーカーおよび戦闘員軍団よ! ソーンおよび『灰色の刺』一味、そして契約者どもを倒し、貴重な実験体『煌めきの災禍』を手に入れるのだっ!」
彼らの目的は、他の契約者たちとも『灰色の棘』とも異なる第三勢力として、『煌めきの災禍』を奪い取ることであった。
「了解しました、ハデス師匠! 妖精、契約者、灰色の刺、全てを排除します!」
言うが早いかデスストーカーの投げた機晶爆弾によって、目も眩むような閃光が炸裂した。
「あ、アレか。んーと、リーズ、あの護衛っぽい美人の相手頼む。明らかに外道っぽい野郎は俺がぶっ飛ばす」
「了解、アンタは初手でミスらないでよ? んじゃ、先に行くわ」
リーズはそう言うとドラゴンの背から飛び降り、麒麟走りの術を駆使してH−1に接近しようとした。
デスストーカーの機晶爆弾によって閃光と爆炎が上がったのは、まさにその時であった。
怪人と呼ばれたその少年は、爆音の中で構えたキャノンを「敵」に向けている。敵とはつまり味方以外の全てであって、彼にとってはハデスの野望を阻止せんとするあらゆる者がこれに含まれている。
「ハデス師匠がターゲットに近づくのを【弾幕援護】する! 邪魔するものは狙い撃つ!」
おかげでリーズは被弾こそしなかったものの、着地の時に少し体勢を崩してしまった。結果、周囲に全く気付かれずに特攻するという予定は狂ったが、それでも驚くべき早さでH−1に近づいたリーズの周りには、残像から現し身のような分身が生まれ出ていた。
リーズは分身で相手を翻弄しながら、H−1をソーンの傍から引き離そうと試みる。
「貴女が護ろうとしてる人は間違ってる! だから貴方も止まって! 私は、貴女の命も守りたいから……」
「感情に訴えかけても無駄ですよ? 彼女はまだ、空っぽの入れ物に過ぎませんから」
ソーンはその言葉と共に杖先をリーズに向ける。
しかしその時上空から放たれたミサイルが彼らの足元で炸裂した。見上げると、イブ・シンフォニールが「六連ミサイルポッド」を構えながら電子頭脳で計算を行い、正確にH−1に照準を合わせようとしている。
その瞬間、ドラゴンから飛び降りた唯斗が彼の持つ鬼種特務装束【鴉】――パーソナルコンバットモジュール−ニルヴァーナモデルを起動させつつ、着地と共に地面を強烈に殴りつけた。
撒き上がった土砂が煙幕となって周囲の視界を遮る。
隠れ身の効果を持った武具のおかげで、唯斗は気配を消したまま『煌めきの災禍』を奪還すべく車椅子に手を伸ばした。
が、同時に『災禍』に手を掛けようとしていたハデスもまた、【迷彩塗装】によって隠れ身の効果を得ていた。
同じ瞬間、二人は互いの気配を感じて一度距離を取った。
そこに、ハデスの援護にあたっていたデスストーカーの砲弾と、ソーンの傍に控えていた機晶兵たちの銃弾が降る。
4,5人の機晶兵はソーンとH−1の盾になる形でイブの攻撃を受けていたが、致命傷には至っていないらしく、近づこうとする者たちに容赦なく散弾を浴びせんとしていた。
おかげで今この場では三つ巴の銃撃戦が繰り広げられている。
唯斗の巻き上げた砂埃がおさまりかけた頃、飛び交う銃弾と爆風の中から刹那とアルミナはゆっくりと姿を現した。
「……わらわと同じ匂い(悪)がするのぉ」
ソーンたちを睨みつける刹那の顔は、妖精に護身術を教えている時とは比べ物にならない鬼のような形相で、思わず恐怖心を抱かずにはいられないほどのものであった。
「人を不幸せにするようなことをするなんて最低だね」
アルミナはそう言うと、味方を激励し、激しい怒りの歌を歌い始める。聞いていると心の底から奮い立つような戦慄のおかげで、彼らの攻撃力は一段と高められた。
アルミナが機晶ドッグのきぃちゃんとレッサーブレードドラゴンのれっちゃんを鼓舞している間に、刹那は持ち前の身体能力を活かして機晶兵に攻撃を加えて行く。
軽業を駆使して相手の死角に入り込み、常に動きながら関節部分に暗器を投擲し続けると、やがて機晶兵は戦いが困難な状態に陥る
そしてイブが手にしたスナイプライフルで【とどめの一撃】を食らわせると、壊れた人形のごとく機晶兵は完全に動きを停止するのだった。
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