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モンスターハウスをぶっ潰せ!

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モンスターハウスをぶっ潰せ!

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終章 崩壊

「せいやああああああああああああああああああ!」
 屋敷の外から少女の咆哮と共に屋敷全体を揺るがすような衝撃が走る。
 緋柱 透乃(ひばしら・とうの)の拳は容易く屋敷の壁をへこませるが、その結果に納得がいかないといった顔をする。
「はあッ!」
 透乃はへこんだ壁に幾度となく一撃必殺の拳を叩き込み、ついには屋敷の壁に穴を開ける。そこにめがけて回し蹴りを放つと、外壁がめくれ上がる。
「よし、準備運動終わり! 陽子ちゃん、このまま上に上がるよ!」
「はい!」
 透乃が蹂躙飛行ブーツで屋上まで上ると緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)は屍龍の腐った翼で飛行しながら後を追う。
 屋上よりさらに高い地点まで到達すると透乃は左拳に力を込め、訃焼の重桃気を纏わせる。
 薄い桜色の闘気を帯びた左拳の存在感は肥大していき、まるで巨大な鉄槌と化してしまったように陽子の目には映った。
 透乃の飛行を止めると、その身体は屋上へと落ちていくが、透乃はその間にも左拳に力を入れ続け、空中で身を捻ると、
「はああああああああああああああああああああああああッ!」
 裏拳の要領で一刀両断を放つ。
 瞬間、闘気が触れた屋敷の屋根はまるで浜の砂を掘り起こすように、爆音を上げながら屋根めくれ上がり、木の欠片が周囲に飛散する。
 まさに暴風。人智を越えた武の一撃。そんなものを受ければ、屋敷の方もただでは済まない。
 後に残ったのは無残に屋根を抉られた屋上の姿だった。透乃がそのまま屋上の屋根裏のような場所に着地すると、触手の群れが怒り狂ったように透乃に襲いかかる。
「させませんよ!」
 透乃の後を追っていた陽子がクライオクラズムを放つ。肌を刺すような冷気が触手を飲み込み、透乃に伸びていた触手はたちまち凍りついた。
「ふっ!」
 陽子は訃刃の煉鎖を振るい、凍った触手を微塵に砕いた。
「手応えはどうでしたか?」
「ん〜……まずまずかな? でも、まだ最強の一撃には遠いよ。まあ、後数回はこの家で試せそうだから、もう少しやってみようかな?」
 透乃は桜色の闘気を左手に纏わせながら、楽しそうに穴の空いた天井を見上げた。


 透乃が発した衝撃は二階にいたハイコド・ジーバルス(はいこど・じーばるす)の身を一瞬強ばらせるにはあまりにも十分すぎる威力と轟音だった。
「な、なんだ今の? おい、ソラン! そろそろ引き上げようぜ、もう救助者なんて残ってないって!」
 ハイコドは触手を切り倒して前に進んでいるソラン・ジーバルス(そらん・じーばるす)に声をかける。
「ふー、あの位ならハコや私が男になった時のアレのほうが太いわね、もちろん硬さも」
「なんの話だよ!?」
 ハイコドが目を剥いて吼えると、ニーナ・ジーバルス(にーな・じーばるす)が顔を真っ赤にした。
「ハコくんのって……ごめんなんでもないわ、本当に何でもないの聞かなかったことにして。……でも、まあ……ぬめぬめしてない分、ハコくんの触手の方がマシかしら」
「あんなのと比べるなよ!」
「ねぇハコ、あんたの触手ってぬるぬるでないの?」
「ヌルヌルもぬとぬともしません、俺の触手は本来攻撃用だからな」
 辟易したようにため息をつきながら、ハイコドはソランを見つめる。ソランは何故か下着姿だった。別に触手にやられたからこうなったわけではなく、服が溶けるのが嫌でこんな格好をしているのだ。
 そんな格好のままソランは壁に向かって光白椿・焔の火炎弾と斬撃を放って次々と壁を破壊していく。と、その壊れた壁から一斉に触手が飛びだしてきた。
「まったく……こんなもの触りたくもないわね……」
 ニーナは嫌そうな声を出しながら、回転眼で触手の群れを捻り上げる。触手たちは身体を捻り、互いの身体に巻き込まれるように一本の束になり、そこからさらに捻れて触手の先が球体のようになっていく。
 ニーナは眉根をひそめながら焔狼牙で火炎球を飛ばして触手を焼き払った。
 と、その塊となった触手が焼き落ちると、さらに壁から触手が数本伸びてきてソランの身体に巻き付いた。触手はソランが身につけている下着をめざとく感知すると、それを溶かすためにゆっくりと下着の中に潜行していく。
「いやぁ……! ハコ以外の触手なんてやだぁ、そこ入っちゃだめぇ」
「誤解を招く言い方をするなよ!」
 ハイコドは自らの触手でソランを絡め取ると、そのまま強引にソランを引っ張って救出した。
「大丈夫か?」
「うん……。やっぱり、ハコの触手もちょっとぬるぬるしてた方がいいかも……」
「もういいってその話は……。それよりほら、二階を崩すからそろそろ退散するぞ」
 ハイコドは二階にある柱に切れ込みを入れて、触手をそこに潜行させていた。
 ソランとニーナもこれから何が起きるのか悟って慌てて一階へと下りる。
「やれやれ……嫌な仕事だ。……俺も、留守番すればよかったよ」
 無人となった二階でハイコドは自分の子供達と留守番をしている藍華 信(あいか・しん)のことを考えながら一階へと駆け下りる。
 それにともなって柱に潜行していた触手が引っ張られ、柱が嫌な音を立ててへし折れると、二階は音を立てて倒壊し、屋敷は実質一階建てと化してしまった。


 もはや生命体として再生不可能なほどのダメージを屋敷はおいつつあったが、それでも身体の中での猛攻が止まることは無い。
「女の子全員吐き出しても許してあげない! 一本残らず屋台骨へし折ってあげるわ!」
 叫びながら桜月 舞香(さくらづき・まいか)はバトルハイヒールで壁を蹴りつけて穴を空ける。
 部屋に入るとどうやらそこは大きな書斎の用で本棚には大量の本が置かれていた。
「やあっ!」
 その本棚に向けて舞香は容赦なく蹴り飛ばして飛び散った本が窓ガラスを突き破って外に出た。
「あらあら……激しいわね」
「救助者かと思ったのに……」
 騒音を聞きつけてやってきたのはセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)だった。
 声が聞こえて舞香が振り返ると、二人の姿を見て目を丸くする。
「大丈夫!? そんな下着みたいな姿になって……」
 舞香が心配そうに声をかける。二人が身にまとっているのはビキニとレオタードという身体のラインがピッタリと分かる格好をしており、そのうえで既にあちこちを回っていたのかそれさえも溶けてほぼ裸のような格好になっていた。
 舞香のリアクションを見て、セレアナが困ったような顔をする。
「まあ、あんまり気にしないでいいと思うわ……」
「そうそう。これは半分自前だから!」
「……? まあ、とにかく救助者じゃないなら……」
 舞香の言葉が言い終わる前にセレアナはラピッドショットで舞香の背後から忍び寄っていた触手を撃ち抜いた。
「話は後にしましょう? 今は、この屋敷の破壊に専念しないと。セレン、準備はいいかしら?」
「もちろん。さあさあ、危ないから少し下がってね」
 舞香は言われるがままに二人と一緒に書斎の奥へと引っ込むと──屋敷の奥から爆音が次々と轟いた。
 衝撃で揺れる屋敷に足を取られそうになりながら舞香は二人に問いかけた。
「今のは?」
「機晶爆弾をあちこちに設置していたの。……おかしいわね、爆発したらゆっくりと倒壊するようにしたのに……全然平気そうね」
 セレンが怪訝そうな顔をすると、書斎を出て、一番近くに設置した大広間の柱に仕掛けた機晶爆弾を見に行くと、
「げ……」
 思わず声を漏らし、後ろで見ていたセレアナと舞香もその光景に眉根を寄せた。
 柱は、確かに砕けていた。が、その破損を補うようにして無数の触手が合わさり屋敷を支えていたのだ。
 さらに事態はそれだけに留まらなかった。触手が窓を覆い尽くし、三人が入っていたドアを埋め尽くた。
「囲まれた!?」
「なるほど……襲いかかっても敵わないなら、閉じ込めて消耗させてから……ってことなのね」
「感心してる場合じゃないでしょ! 早く逃げ出さないと!」
 舞香は火遁の術で触手を焼き払うが、退散した触手の下からまた触手が現れてしまう。触手の壁は何十構造にもなって奥まで火が通らないようだ。
「これは……マズいわね」
 セレアナが困ったように壁を見ていると、
「お困りのようね。それなら助けてあげるね」
 突然、どこから現れたのかロレンツォ・バルトーリ(ろれんつぉ・ばるとーり)が声をかけてきた。
 その服は触手にやられたというより、?なにかの爆発?でそうなったようにあちこち焼け焦げてボロボロになっていた。
「あちこち回ってて分かったんだけど、ここは全部胃袋みたいになってるね。で、生き物であるなら当然排泄もするはずね」
 ロレンツォは説明しながらリュックサックから粉末の漢方薬を取り出した。
「ええっと……それは?」
「大黄甘草湯ね」
 セレンが訊ねると、ロレンツォは自信満々に答えた。
「まあ、平たく言うと便秘薬ね。これを使えば私たちも一緒に排泄されるはずね」
 セレンがロレンツォの計画を理解した途端、目を丸くした。
「ちょ、ちょっと待ってよ! それって、あたしたち……」
「ストップよセレン。それ以上は女の子は口にしちゃダメ」
 セレアナがセレンの口を押さえると、今度は舞香が訊ねた。
「でも、この近くに動物の死骸なんて無かったわ。排泄なんて本当にするの?」
「異物があれば吐き出す器官ぐらいあるはずね。それに……誰だか知らないけど、このお家の壁に穴を空けた子がいるから、最悪そこから出られると思うね」
 そう言ってロレンツォは誰の許可も得ないまま、リュックサックにあった漢方薬を全て触手と自分たちに向けて投げつけると、変化はすぐに訪れた。
 周囲は爆発するような勢いで激しくうねると、一斉に四人を飲み込んだ。そのまま、のたうち回るように動き回る触手は、この凶悪な異物をどこかに吐き出さねばと動き回り、ロレンツォの目論見の一つとなっていた壁の穴を発見する。
 全ての触手が総動員して身体の毒を排出しようとのたうち回り、やがて柱を支えていた触手にも影響を及ぼし、ロレンツォたちが壁から吐き出されるのと同時に屋敷が音を立てて崩れ始める。
「間一髪だったね」
 ロレンツォはべったりとした粘液を拭いながら崩れていく屋敷を見つめる。
 屋敷は崩れながら助けを求めるように触手を天に伸ばすが、それが何かを掴むことは無く、瓦礫と共に潰れていき、やがて全ての触手が動かなくなった。
 すでに脱出をしていたコントラクターたちも多くの人々を苦しめたその家の最後を目に焼き付ける。

 こうして、人を襲い続けた怪物のような屋敷は最後を迎えた。


 ──了──


担当マスターより

▼担当マスター

西里田篤史

▼マスターコメント

 どうも、西里田篤史です。
 今回は本シナリオへご参加いただきありがとうございます。
 これだけ触手とぬるぬるだけが物語の大半を占めるシナリオというのは中々珍しいというか、ここまできたらR指定のシナリオとか解禁にして欲しいところですね。
 シナリオという観点からエロいことをしつつ物語を進めるとなると、結構忙しいもので十分エロを書けなかったなぁ、と少しだけ反省しています。
 余談ですが、この屋敷を作った張本人は逃げ出しています。ひょっとしたら、また出てくるかも知れません。主に、僕がエロいシナリオを書きたくなったときとかに……。

 相変わらず次回のシナリオ案は全く無いままですが、またどこかのシナリオでお会いできるの楽しみにしております。
 今回のシナリオにご参加いただいた方、本当にありがとうございました。
 それでは、失礼致します。