リアクション
■双子とロズ
手紙書きが終わり、参加者がそれぞれ帰宅の身支度をしている中。
「……(打ち明ける、か……)」
ロズは三人に言われた事を頭の中で繰り返し、陽一が言った打ち明ける事について考えていた。伺っている幾人かがいる事に気付いていない。
その時、
「おい、何ぼっとしてるんだよ」
「あいつらに何か余計な事でも言われたのか?」
様子がおかしい事に気付いた双子が怪訝そうにロズに訊ねた。
「……いや」
ロズは静かに答えるなりそっと自分が書いた手紙を差し出した。
「お前の手紙?」
「読めって事か?」
双子は揃って出された手紙を見つめつつ訊ねると
「……」
ロズは黙ったままうなずいた。
手紙を見た双子は
「……おい、何で俺達の事ばっかりなんだよ? 自分に宛てた手紙だろ、もうちっと自分の事を書けよ」
「……ヒスミの言う通りだ。こんな手紙未来のお前が貰っても嬉しくないだろ。それと、お前がホムンクルスというのはともかく何でオレ達の事をすげぇ気に掛けるんだよ?」
揃ってロズの相談に乗った者達と同じ事を口走った。
「……気に掛けてくれるのか」
双子の様子にロズは何か試すように訊ねた。
「まぁ、鬱陶しいけど嫌いじゃねぇし」
「隣に同じく」
二人は肩をすくめながら言った。しかし、気付いていない。ロズが品定めをするように彼らを見ている事を。
「それなら……」
ロズはゆっくりと自分の素性や黙っていた理由を打ち明け始めた。
ロズの話が終わった後。
「お前の製作者が平行世界の俺!?」
「オレをモデルに作ったって、本当かよ!? オレ大変な事になってるのか!?」
衝撃な事実に双子は仰天し、信じられないという顔でロズを見た。特にキスミは以前未来体験薬で自分が廃人同然になっている姿を見ているので尚更だろう。
その事に対して
「……」
ロズは帽子を脱いで双子に瓜二つの自分の顔、両腕を見せ輝く形見の銀腕輪を見せる事で返事とした。
途端
「!!」
双子は話が真実である事を知り、さらに驚愕が深まる。
随分時間を掛けて驚きが少しだけ落ち着いた所で
「どうして話したんだ。打ち明けるつもりは無かったんだろ」
ヒスミが疑問を投げかけた。
「あぁ、今日までは打ち明けるつもりはなかった。しかし、気が変わった。打ち明け、共に進むべきだと……」
ロズはゆっくりと本心を語った。何も無ければこれまでと変わらぬ毎日のはずだったが、変えた。自分の意思で変える必要があると思ったからだ。この先双子と共に生きるのなら真実を共有する必要があると。それがいずれ知られる真実なら尚更。
「……共にか。確か自分の身体が心配だって言ってたよな。だったら問題ねぇよ。キスミ?」
「あぁ、お前の世界ではオレはいなかっただろうけど、こっちにはいる。一人よりも二人。オレ達双子が揃っていれば、必ず何とか出来るさ。いや、何とかしてやるさ」
双子はニンマリといつもの悪戯な笑みをロズに向けた。ロズの製作者とは違ってまだ子供であるが、希望を見せるには十分。
「……」
ロズはじっと三人が話していた明るい未来という物を双子の姿から感じていた。
「変な感じだけどこれからもよろしくな(こいつに妙に親しみを感じた理由が分かったぜ)」
「妙な感じだけどな(オレをモデルにしたって事はオレが二人という事だよな)」
双子は胸中でそれぞれ考えながら笑みを浮かべ腕輪をしている手を差し出した。
「……あぁ」
ロズは両手を出してそれぞれ双子の手を握り、握手をした。
この日が双子とロズが本当に共に歩む日となった。ちなみに手紙についてはロズは未来の自分に聞きたい事はやはり同じだという事で変更しなかったという。
この後、皆が書いた手紙は無事に来るべき時まで保管されたという。必ず届けられるだろうという事は間違い無いだろう。
そして、双子はというとあれからいつものように悪戯をして迷惑を掛けてばかりの一方、ロズに万が一が起きた際に備えて研究を始めたという。双子にとってロズはやはり大切な存在だから。
ロズは相変わらず双子の保護者役として動き回っていた。双子を最後まで見守るという思考は変わりはないが打ち明けた事で心無しかほんの少し肩の荷が下りたように見えた。
しかも、正体がばれているのだから野暮ったい格好をやめろと双子にしつこく言われ、抵抗虚しく強引に平行世界を渡り歩く以外は、双子と瓜二つの顔と両腕の銀腕輪が明らかになった格好にされたという。
参加者の皆様お疲れ様でした。そしてありがとうございました。
普通に手紙を書いたり想像しながら書いたり見学をしたり双子の相手をして頂いたりと賑やかに過ごして頂きありがとうございました。
ロズについてですが、気に掛けて下さる皆様の優しい言葉により双子に素性を明かす流れとなりました。それに伴い双子は悪戯をする日常にロズのための研究を加えるというほんの少しだけ成長のようなものが見られるようになりましたが、まだまだどうなるやらです。生温かい目で見守って頂ければ幸いです。
最後に少しでも皆様の想像した未来が表現出来ていれば幸いです。