薔薇の学舎へ

波羅蜜多実業高等学校

校長室

葦原明倫館へ

寝苦しい夏の快眠法

リアクション公開中!

寝苦しい夏の快眠法
寝苦しい夏の快眠法 寝苦しい夏の快眠法

リアクション

 葦原長屋。

「マスター、ジブリールさん見てください! またもや双子さんが夢札を作ったようで、私、頂いてきちゃいました」
 フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)は目を好奇心でキラキラさせながら人数分の夢札を集合させたベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)ジブリール・ティラ(じぶりーる・てぃら)に見せ、それぞれ夢札を渡すという有無を言わさず使う気満々である。
「……呼び出されて何事かと思いきやまたあの二人か(言いたい事はあるが、無駄だろうな。フレイがヒスミとキスミ相手に警戒する訳ねぇし)」
 フレンディスに呼び出され長屋に来てみれば覚えのある展開に巻き込まれ肩を落とし、恒例の尻尾振りながら夢札を興味津々に見つめる恋人の姿に疲れの溜息を吐いた。
「夢札って確か以前フレンディスさんが話してた好きな夢が見れる御札だよね? 双子の作ったものだしオレは喜んで試すよ(どういう夢だったかは話して貰えてないけど……ま、想像つくけどね)」
 夢札体験を話でしか聞いていないジブリールは実際に体験が出来るとあってフレンディスと同じく参加する気満々である。ちなみに胸中では以前フレンディスから聞いた夢札の話を思い出していた。秘密にされた部分はあれど聞かなくとも分かっている。
「そうです。前回と違い今回は夏の暑さに負けず快適快眠効果があるようでして早速試していませんか? ちゃんと三人分のお布団を用意しておきました」
 フレンディスは胸を張って相変わらず尊敬対象である双子に代わって誇らしげに今回の追加要素を二人に話してから三人分の布団が用意されている部屋の襖を開けた。
「……(どんどん見覚えのある展開になっていくな)」
「フレンディスさん用意がいいね」
 見覚えがありすぎてベルクはツッコミを入れても無駄だと悟り黙し、ジブリールは参加までの手間が省けたと年相応の子供のように大喜び。平時はフレンディスよりずっとしっかり者だがこういう面白そうな出来事に対してはすっかり歳相応の子供らしく無邪気な一面を覗かせるようになった。
「はい。皆さんと一緒に楽しみたいですから。あとですね……その、今回はご一緒致しましょう! それで……場所はマスターの夢でお願い出来ればと思うのですが」
 フレンディスは前回の事、ベルクとの嬉し恥ずかしい結婚生活の夢を本物のベルクに見られた事を思い出し、顔を赤くしながら先手を打つ。ベルクは見た事を覚えてはいないが見られた方は覚えている。
「別にそれは構わねぇよ(フレイの奴、今と言い前回起きた後と言い様子がおかしい。危害被るような物ではないし余計な改良してない前提のはずだが何かあったのか……とはいえ、前回見た内容を俺は覚えてないからな)」
 前回の事を何も覚えていないベルクはあっさり引き受けた。しかし、覚えていないなりにも何か感じる事はあるらしくフレンディスのおかしな様子を訝しんでいた。
「それじゃ、早く始めよう」
 ジブリールは皆に合図を出すなり真っ先に布団に直行し、夢札を枕の下に入れて寝た。
「……ジブリールさん、待って下さい」
 フレンディスはジブリールに負けぬと急いで夢札を使った。
「……はぁ」
 ベルクはテンション高い二人に溜息を吐きながら夢札を使った。ちなみにジブリールが気を利かせてベルクがフレンディスの隣に用意された布団に入れるようにされていたり。
 ともかく三人は夢の中へ。

 ■■■

 ベルクの夢。

 三人が一様に揃った所で
「これからどうしますか?」
 フレンディスが二人に意見を募った。
「心配はしていないと言えば嘘になるがロズが気がかりだ。一連の事件以来、過去と現在で心境変化があったのなら今はどういう夢を見るのかその辺りがな。少しは前向きになろうとしていたから夢にもそれが出ていればいいんだが……ついでに双子もな」
 何だかんだロズが心配なベルクはロズの夢に行く事を希望する。これまでもロズについては何やかんやと励ましたりと気遣いを見せたりしていた。
 ただベルクにとってただ一つ気掛かりがある。それは
「だからロズの夢に行こうと思うが今回も前回同様起きたら覚えてねぇかもしれない……」
 起きた時に夢を覚えていないかもしれない事。
「それでしたら私が夢の内容を覚えておきます故ご安心下さいまし!」
 ベルクの役に立てるとフレンディスが嬉しそうに尻尾を振りながら言った。
 ここで
「ねぇベルクさん、これって本当に夢なんだよね? なんていうのかな……自分の意志があるしお互い会話出来るのって凄く不思議な気分だよ。それでも夢ならオレは存分に楽しみたいかな。ほら、夢だからこそ出来る事ってあるし? という事でオレは早速双子を探して遊んでくるよ」
 フレンディス達が話している間あちこちベルクの夢内を歩き回っていたジブリールが現れて楽しそうに言った。
「双子を捜すなら俺達も行く。あいつらにも用があるからな」
 双子の様子も知りたいベルクはジブリールの手伝いをする事にした。
 そのため三人はロズと双子捜索に出発し、ロズの夢にいる双子に遭遇する事になった。