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“蛍”シリーズ【第七話】、【第八話】、【第九話】、【第十話】

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“蛍”シリーズ【第七話】、【第八話】、【第九話】、【第十話】

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 同時刻 ジャタの森 某所
 
「どうやら迎えが来たようです」
 太刀を腰に佩くと、“鼬”は両腕で沙耶を抱える。
「では、おさらばです」
「おう。と、別れる前に一度生身で手合わせしてくんねぇかな?」
「……今日は休戦の筈では?」
「こっちは生身でイコンとやり合うレベルなんだが、お前はどーなんだろうな? ま、決着はイコンで決めるけどよ。興味本意ってヤツだよ」
「やめておきましょう。休戦中であるものの、本来ならば僕と貴方は敵同士。興味本位とはいえ、刃を交えればどちらかに犠牲が出る」
「真面目な奴だな。ま、それが良い所なんだろうけど。今の言葉は気にすんな。ほら、行けって。無事に戻れるといいな」
「感謝します。紫月唯斗。では――」
 
 “鼬”は“ドンナー”bisのコクピットハッチを開くと、沙耶をそっと座らせる。
 そして彼も漆黒の機体に乗りこもうとした時だ。
 
「……っと、そうはさせねえよ」
 突如、唯斗は“ドンナー”bisに向けて攻撃を放つ。
 その攻撃は漆黒の装甲すれすれを通り抜けた。
 直後、呻き声とともに何かが落下する音が木々の間に響く。
 
 ほどなくして木々の間から何かが這い出してくる。
 リカイン・フェルマータリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)のパートナーであるシーサイド ムーン(しーさいど・むーん)だ。
 
「何のつもりです? 紫月唯斗?」
「そいつがお前の機体にこっそり張り付いてたんでな」

 シーサイドは紫月へと思念を飛ばし、抗議する。
『どんな理由があろうとも人が人の命を奪ったことに変わりはなく、ましてやそれを正当化しようなんて甘えもいいところ。負の連鎖を断ち切るためにも彼ら……場合によっては彼等の息の根を止めなければならないのです』
 
 対する唯斗はシーサイドへの返答とも、“鼬”への言葉とも取れる一言を呟いた。
「何がどうであれ、休戦するって約束はまだ生きてる。である以上、一人の武人としてそれを守るだけだ」
 唯斗に対し黙礼する“鼬”。
 彼に向け、唯斗は問いかけた。
 
「なあ、“鼬”。最後に一つ。お前の名前を教えてくれよ。まさか本当に“鼬”って名前じゃないだろ?」
「鳴神賢志郎。次に会う時こそ決着を着けましょう。紫月唯斗」
 
 その言葉とともにハッチは閉まり、漆黒の機体は去っていった。