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終りゆく世界を、あなたと共に

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終りゆく世界を、あなたと共に
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「――泰輔、どこだ、泰輔!」
「ここや。ここに、おるよ。……顕仁」
 大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)は、自分を求める讃岐院 顕仁(さぬきいん・あきひと)の声に優しく手を伸ばす。
 怖くない……怖くないよと。
(死が――恐ろしい?)
 泰輔の手に、言葉に顕仁はふと自身を取り戻す。
 そして理解する。
 否だ、と。
 恐ろしいのは死ではない。
 再び独りになること。
 泰輔を失ってしまうこと。
 世界もろとも泰輔も自身も滅びてしまうのであれば、『独り』にならなくて済むのかもしれない。
 しかし、泰輔と2人共に存在した時間、かけがえのない記憶。
 それすらも、世界と共に消滅してしまうのであるならば――
 悲しい。
 切ない。
 普段の顕仁であれば考えられない感情が、日頃の強気や傲慢さを忘れさせる。
 素直な感情を泰輔にぶつける。
 忘れないように、消えないように、顕仁は刻み付ける。
 記憶に、体に。
 自身が愛した泰輔を、泰輔が愛した自身を、この世界に留めておこうと足掻くかのように。
 永遠に――

「――僕はここにおるよ」
 そして泰輔は、顕仁の全てを受け入れた。
「大丈夫、一緒におるから、大丈夫」
 僕は、顕仁が大切で、顕仁も僕のことが好きなんやろ?
「――それでも、不思議やなぁ」
 泰輔の顔に、場違いな程穏やかな笑みが浮かぶ。
 殺伐とした時代を生きてきていた顕仁の方が、生死に対してそう超然としてるわけでもないという事実に驚いて。
 今になって、そんな彼の新たな一面を見ることができて嬉しくて。
 そして顕仁の答えは、泰輔をもっと笑顔にする。
『たいせつな人があるから……』
 ――ああ、おおきに。
 僕は、一緒におるよ。

「――あ」
 そして泰輔は目を覚ます。
 隣にいる、大切な人とともに。