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【ニルヴァーナへの道】崑崙的怪異談(前編)

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【ニルヴァーナへの道】崑崙的怪異談(前編)

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【4】悪鬼羅刹……3


 廃都の一画に九つの影があった。
 月光が映すは、9匹の龍が踊る真紅の外套。ブラッディ・ディバインの暗殺者【九龍】だ。
 返り討ちにしたキョンシーの骸を踏み付け、漆黒の外套を纏う供回りの間を音もなく歩く。
 ふと立ち止まり、遠く野営地に向ける眼差しは、恐ろしく冷たい。
「シャンバラの犬どもか。我らに先んじて霊廟に辿り着くとはな……」
 その手の遁甲盤がカタカタと震えている。
「鼻の利く犬ようだな。しかし、これが震えていると言うことは、奴らあれには気付いていないらしい」
「……ほう。ウォンドになにか秘密があるのですか?」
 静寂は不意に破られる。
 月下の元、蒼く浮かび上がったのは着物を纏った悪人商会の元締め両ノ面 悪路(りょうのめん・あくろ)
 すぐ後ろにはらんらんと目を光らせる2つの影。
 荒ぶる武神三道 六黒(みどう・むくろ)と血に飢えた凶獣羽皇 冴王(うおう・さおう)だ。
「……お前達の噂は知っている。先の戦争では随分と暗躍していたそうだな」
「我々も有名になったようですね」
 こともなげに言う九龍に悪路は微笑みを返す。
「用件は何だ?」
「ニルヴァーナへの道を求め、各組織が動いています。互いに共闘できるうちは利用し合うが得とは思いませんか」
「お前達もニルヴァーナの件に一枚噛みたいと言うわけか?」
「いえいえ、滅相もございません。我らはただの商会。お求めいただく方に人材を充てるだけですよ」
「……化かし合いに付き合う気はないが、しかしその申し出を断る理由もない」
「あなたとは良い関係が築けそうですね」
 ところで……と話を変える。
「あなたがたの目的は地球勢力の排除ではなかったのですか? 何故、鏖殺寺院がニルヴァーナへの鍵を?」
伝承の語るところでは、大昔の大戦で使われた超兵器がニルヴァーナに眠ると言う
「ほう……」
「今や残党と化した鏖殺寺院が地球の勢力に対抗するには力が必要だ。そう……超兵器の力がな」
 その時、静かにそよぐ夜風はふと消えた。
 異様な気配が立ち込めるのを、道士ではない悪路もはっきりと肌で感じた。
不浄妃(ブージンフェイ)……
「?」
「お前達も見ておくがいい。あれがブライドオブヴァラーウォンドの正体だ……!」