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【ダークサイズ】俺達のニルヴァーナ捜索隊

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【ダークサイズ】俺達のニルヴァーナ捜索隊

リアクション

「……草津たん……?」
「そう! 草津たん! きっとフレイムたんに肩を並べるマスコットになると思うよ。それに実用的だし!」

 カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)の計画を、ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)は不思議そうな顔をして聞いている。
 垂の他にもモンスターを手懐けようと考えていた者はいて、カレンもその一人。

「だって地下水吸い上げて水蒸気にしてくれるんだよ? まんまミストサウナじゃん。もしかしたら、カリペロニアより立派な温泉施設作れちゃうかもだねー」

 カレンの夢は膨らむ。
 ジュレールもそれには同意し、

「ふむ。我らダークサイズは女子戦闘員が多いからのう。そういう福利厚生を充実させるのは、我も賛成だな。ここもひどく蒸し暑いしのう。入浴施設は必須といったところか」
「ダイソウトウ様にもプレゼンしたかったけど、別行動になっちゃったしなー」
「ダイソウちゃんには事後報告でよろしいんじゃなくて? わたくしもその案には大賛成ですわ」

 ちょうど後から追う形になっていた、ネネ達がカレンに追いつく。

「おお、ネネにモモ、来たか」
「でしょでしょ、いいアイデアでしょ! そういうわけでネネ姉さん……助けてくんない?」

 と、すでに『草津』に踏みつけられているカレンとジュレールが、ネネ達に救出を請う。
 気持ちが先行して単独で『草津』に挑んだのは、さすがに無茶だったようである。

「カレンさん……どうしてこんなことに……?」

 モモも呆れながら言うが、

「だってしょうがないじゃん。草津たんったら全然話聞いてくれないんだもん」

 毛むくじゃらの球状の身体からダチョウのような長い足が伸びている『草津』。
 後ろには蛇腹状の長い尻尾が伸び、その先は鋭い注射針のようになっている。
 養分は尻尾から取ると見えて、口は退化しており、身体の毛の隙間からかろうじて目らしきものが確認できる。
 なんせ口がないあたり、会話が成立する相手には見えない。

「さすがにこれは、説得は無茶なのでは……」

 モモは言うが、

「分かってるよそんなことー。ギフトみたいに、負かしたら従ってくれるかも知れないじゃん」
「で、失敗したと……」
「……うん」

 ネネやモモはおろか、チームサンフラワーも合流して来て、『草津』にすると見知らぬ生物が自分を取り囲む。
 『草津』は威嚇体制をとり、尻尾を持ち上げ、思い切り振りまわす。

「あっぶね!」

 『草津』の鋭い尻尾の先を、皆すんでのところで避ける。
 その尻尾に、織田 信長(おだ・のぶなが)がいきなり斬りかかる。

「ほう、私の一太刀を止めるとは。この尻尾で、水を吸い上げるという算段か? 毛だらけの獣めが!」

 流石あのうつけ者の英霊だけあって、敵に対しては問答無用である。
 信長は尻尾をいなして、二太刀目を足に入れようとする。
 『草津』はそれを飛びあがってよけ、結果的にカレンとジュレールの解放に成功する。
 さらに『草津』は、足ではなく尻尾で着地し、その鋭い先っぽが地面に深々と突き刺さる。
 蛇腹状の尻尾が地中で伸びているのだろう、地面の中から貫く音が聞こえる。

「なるほど、カラクリは解けた。ここいらが地下水の水源になっているに違いないな」

 信長に続いて桜葉 忍(さくらば・しのぶ)が、大上段から『草津』を真っ二つにしようとする。
 忍の一刀は、『草津』の足に受け止められる。
 尻尾だけで身体を支え、両足を手のように器用に使い、忍の【ウルフアヴァターラ・ソード】を掴んで引っ張り、つんのめった忍を蹴り飛ばす。

「ぐっ……器用な上にずいぶん固い足と丈夫な尻尾だな」
「こらこらー! 草津たんは負かすだけで、傷つけちゃだめだよー!」

 カレンが土をはたきながら忍と信長に言うが、

「知るか。私たちがいる限り、こやつは永遠に襲ってくるぞ」

 『草津』は攻撃してきた人間に対して、完全に戦闘態勢に入っている。
 菫がすかさず忍の回復をしてやり、忍も礼を言って立ち上がる。

「だが、どう攻める? 予想以上に素早い奴だ」
「ククク……攻めあぐねておるようだな」

 忍が振り返ると、そこには【親衛隊員】を二体従えたハデスが、中指でメガネを上げている。

「我ら秘密結社オリュンポスとダークサイズのニルヴァーナ共同支部のためには、避けて通れぬようだな。よかろう! 金は出せんがモンスターどもは我らオリュンポスが一掃してくれるわ!」
「口上はいいが、どうするつもりだ?」

 テンションだけは高いハデスに、忍が冷静に返す。

「ククク……お前たちの戦いは見せてもらったぞ。確かにあの素早さと足さばきはやっかいだ。だが見てみろ。尻尾が使えぬ以上、奴が使うのは両足二本のみ! 要はそれ以上の数で攻めれば問題ない」
「まあ、戦の定石だが……おまえの言う策はそれだけか?」

 戦争の天才児信長は、ハデスを小馬鹿にしつつも少し悔しそう。
 ハデスは上がりきったメガネをさらに持ち上げ、

「フハハハ! 下策をもって上策とする。良い戦とはそのようなものであることくらい、織田信長とあろうものなら分かろうが!」
「ぬ……何だかこいつに言われるとむかつくのう……」
「ゆけ、戦闘員(【親衛隊員】)たち! 我らオリュンポスの力を見せてやるがよい!」

 ハデスの指示で飛び出す戦闘員。
 二体の戦闘員が両脇から攻めるが、二体とも『草津』の両足にまんまと掴まれる。

「なにっ! 我が戦闘員が捕まるとは!」
「いやちょっと待て!」

 驚くハデスに、忍と信長がツッコむ。

「二本の足に二人で攻めてどうすんだ!」
「おまえも行かねば意味がないじゃろうが!」
「はっ、そうだった! いや、分かっておった!」

 ハデスが良く分からない言い訳をしながら出るが、直後『草津』が身を震わせ毛を逆立てる。

「!?」

 ハデス達が驚くが早いか、『草津』の全身から白い水蒸気が勢いよく、大量に噴出される。
 その水蒸気を、前に出ていたハデスがまともに食らう。

「あーちちちち! げほげほー! は、ハデスさまー!」
「だーあちちち! 顔も熱いし肺も熱い!」

 水蒸気の霧の中から、ハデスと【親衛隊員】の声が響く。
 要は、アイロンのスチームが四方八方に出るようなものだ。
 『草津』の姿も見えないし、加えてそのカモフラージュは高温で、近寄ることもままならない。

「なるほど。これがフレイムたんの言っていた『草津』の能力か……」
「落ち着いてないで、助けてくれーっ!」
「いや、助けたいのはやまやまなんだが、近寄れないんだ」

 忍と信長は、敵の能力を知るいけにえとなったハデスを憐れんでいるし、

「ああー、水! 水の無駄遣いすんなよもったいねー!」

 椎名は貴重な水源の心配をしている。
 防御兼攻撃の『草津』の水蒸気に、皆どうしたものかと思っていると、突然背後から大きな機械音と共に強烈な風が吹いてくる。

「なんだっ、敵か?」

 見るとそこには、【巨大扇風機】と結和の姿が。

「みなさーん、大丈夫ですかー!?」

 結和の後ろにはダイソウたちの姿も見える。

「うむ、やはり加勢に来てよかったようだ」

 結和が送る扇風機の風は、女子のスカートと共に『草津』の水蒸気も吹き飛ばす勢い。
 『草津』はスチームを発し続けるが、風によって熱と水蒸気は反対側に飛ばされていく。

「よし! 『草津』は俺達チーム・サンフラワーで倒すぞ!」

 チャンスとばかりに永谷の指示が飛ぶ。
 いいところを見せようとゲブーが拳を打ち鳴らし、涼介が【氷術】を練り、天音はフレイムたんを安全なところへ移す。
向日葵も武器を構えるが、風になびく向日葵のスカートの中を、毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)がすかさず下から写真を撮る。
 向日葵は慌てて飛び退いてスカートを押さえ、

「ちょ、ちょっとー! 何してんのよ!」
「ふっふっふ。モンスターを倒すのとパンツを撮られるのと、好きな方を選ぶがよかろう」

ぱしゃっ

 さらに反対側から、南 白那(みなみ・はくな)も写真を撮る。

「うわあー! こっちからも!?」
「あのー、こういうことでいいの……?」

 白那は戸惑い気味に大佐に聞き、大佐はグッと親指を立てる。

「ほれほれ、サンフラ。早く『草津』を倒さんと、ダークサイズが倒してしまうぞ? 風など気にせず、スカートも気にせず、敵に立ち向かうがよい」
「あんたがそんなことやってたら行けないでしょ! 止めなさいよ!」
「何のことかのう。私はダークサイズであるから、チームサンフラの活躍は全力で阻止するぞ」
「だからって! その手段なんなのよ!」
「手段は選ばぬ! それがセクハラならばなおのこと!」
「胸を張るな!」
「さあ淳二、白那はもう少し借りるぞ。他の奴らの足止めをするがよい」

 大佐が長原 淳二(ながはら・じゅんじ)ミーナ・ナナティア(みーな・ななてぃあ)に促す。
 大佐に駆り出された白那は、ダークサイズのバックアップのためと言い聞かされているものの、

「ねーねー、大佐。これでほんとにダークサイズのみんなが助かるの?」
「もちのろんじゃ」
「んー、でも、コツがよく分かんないよ……」

 白那は眉間にしわを作りながらカメラを持て余す。
 大佐が白那の肩を叩き、

「コツなどいらぬ。『パンツが見えたなら撮れ!』それだけなのだ」
「……うん!」

 風になびく向日葵のスカートの中を狙い、二人は時々『イエス! オーイエス!』とか言っている。
 というわけで、今日も『ダークサイズらしい戦い方』の研究に余念がない淳二。
 向日葵たちの妨害工作も考えねばと思っていたところに、大佐からの提案を受け白那を貸し出し、淳二はミーナと共にチームサンフラワーを邪魔しつつ、『草津』との戦いに挑む。
 ゲブーが前に進みながら向日葵を振り返り、

「こらおっぱい(向日葵)! てめーの魅力はおっぱいだろ! 下なんか気にしてねーで……おっぱいちゃーん!」

 と、何故か胸元を強調したポーズで前のめりに立つミーナが目の端に止まり、反射的に飛びかかる。

「ひっ! やっぱりいやー!」
「ぶげあ!」

 まじめな性格上、不可思議な妨害工作にも真剣に取り組んでいたミーナだが、ゲブーの形相を見て彼を殴り飛ばす。

(ミーナ、すまない……そんなことをさせてしまって……)

 淳二は涙を振り払い、先頭を走る永谷に後ろからしがみつく。

「うわっ!?」

 永谷は淳二にのしかかられて転ぶ。

「な、何をする!」
「すまないが、モンスターはダークサイズが倒させてもらう!」

 取っ組み合いになる二人。
 そんな中、淳二の手が、

ふにん……

 何やら柔らかい物を揉む。

「……?」
「……!」

 直後、永谷の拳にぶっ飛ばされる淳二。

(これってダークサイズらしいかなあ……何か違う気がする……)

 消えゆく意識の中でも、淳二は分析をし続けていた。
 涼介が【氷術】で『草津』の水蒸気を冷ましながら、

「誰か攻撃してくれ! こっちは蒸気の相殺がやっとだ!」
「さあ、みんながんばって。『草津』を倒した人には、あたしからとびきりのご褒美をあげるわ」

 戦闘そのものには参加する気が全くないフォルトゥーナ・アルタディス(ふぉる・あるたでぃす)が、いつものお色気満点のポーズで、主に男子を挑発する。

「それにしても……暑いわ」

 フォルトゥーナは、ただでさえ短いスカートをさらにまくり、豊かな胸元をはだけて手で風を送る。
 湿気と汗で適度に濡れた谷間は、なおのこと艶っぽさを演出する。
 それに反応した弥涼 総司(いすず・そうじ)が、フォルトゥーナに叫ぶ。

「おい! そこまで煽って褒美が釣りだったら許さんぞ!」
「あら、あたしがそんなことすると思う? あなたの予想通りのご褒美が待ってるわ」
「本当だろうな! その巨乳に思いっきり甘えてやりたいんだが、かまいませんねッ!」
「いいわ。魂を賭けてあげる」
「グッドッ!」

 フォルトゥーナの承諾の笑みを受け、総司は『草津』に向かう。
 が、忍や信長、椎名、カレンが加勢してもなかなか善戦している『草津』の素早い動きを見て、

(よし、作戦変更だ)

 総司はあっという間に考えを変え、『草津』に突進。
 隙だらけの身を晒して、『草津』に一発で殴り飛ばされる。

「何しに来たんだ、あいつ……」

 と、忍たちに思われながらも、総司の作戦はここから。

「かかったな! 『草津』ッ! これがオレの『帰還ルート』だ……きさまはこの弥涼総司との知恵比べに負けたのだッ!」

 『草津』とは何も知恵比べをしていないが、総司の台詞は続く。

「オレが吹っ飛ばされてゆく、この先に見覚えはないか?」

 当然、『草津』に見覚えはない。

「そうだ、あの巨乳を吸うための『帰還ルート』だ!」

 総司が吹っ飛ぶ先にはフォルトゥーナの巨乳がそびえる。
 『草津』に止めを刺すのを早々に諦めた総司は、アクシデントでおっぱいに預かろうという算段だ。
 ところが、総司の『帰還ルート』に誤差が生じる。

「きゃあっ」
「あら、モモ大丈夫?」

 フォルトゥーナが、総司の体当たりを食らったモモに声をかける。
 モモは、腰をさすりながら、

「そ、総司さん。大丈夫……ちょっ///」

 と声をかけようとするが、総司はモモの身体に頬ずりをしつつ、

「うむむむ〜〜〜んんん、予想通り巨乳の介抱はなじ……まないッ! 何ッ、モモの貧乳だと!? 頭痛がする。は、吐き気もだ……なんてことだ、このオレが、貧乳にふれて気分が悪いだとッ!」

 ぶつかられておきながら心配してあげたというのに、胸を触られた上さんざんに文句を言われ、モモは静かにサーベルを抜く。

「……てめーは俺を怒らせた」

 何やら人格が変わったモモが、本気の殺意で総司に斬りかかる。
 慌てて逃げる総司だが、今回ばかりはモモが執拗に追いかける。

「うおおお、やばい!」

 今回はさすがにまずいことをしたと総司は逃げながら、『草津』を盾にしてモモのサーベルを防ぐ。
 モモの怒りの一閃がちょうど『草津』尻尾の根元に落ち、尻尾が斬り落とされる。
 結果、地下水の供給元を失った『草津』のスチームが止まり、地面に刺さったままの尻尾からは水があふれて流れる。

「何か知らんが、よくやったぞモモ!」

 ダークサイズと忍達が、一気呵成に『草津』に攻勢をしかけ、数の力でついに『草津』を倒す。