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リアクション
長の邸に入ると、濃い匂いがダイソウたちの鼻を突く。
「これは……硫黄か何かか?」
ハンカチを鼻に当てるダイソウに、クロス・クロノス(くろす・くろのす)も同様にハンカチを持ち、
「ガスのようですね。火山帯から発生したものでしょう。対流か何かの関係でガス溜まりになっているのですね。引火するほどではないみたいですが、天井には濃いガスが溜まっているかもしれません」
「うむ。皆、ガスを吸いすぎないよう気をつけよ。また、裸火に注意し火属性のスキル使用は止めるように」
と、ダイソウが指示を出すのを、クロスは不満げな顔をして見ている。
「ダイソウトウ、今日はずいぶん真面目ですね」
「何を言う、クロス? 私はいつでも真剣だ」
「ああ、あなたはいつもそのつもりですものねぇ……」
「言うなれば、みんなのノリがだんだん閣下を超えるようになってきたんで、閣下がボケる隙がどんどん奪われているという……」
クマチャンがクロスに解説をする。
クロスは頷きつつ、
「そうでしたか。せっかく内偵監査部の仕事に精を出そうと思いましたのに」
ピコピコハンマーを手持ちぶさたにピコピコ鳴らす。
「だからさ、そういうとこだよ……いいんだけどね」
「ダイソウトウ」
そこに、邸内を調査していたリアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)とベアトリス・ウィリアムズ(べあとりす・うぃりあむず)が来る。
「何か分かったか?」
「それが……【サイコメトリ】でも【人の心、草の心】でも反応しないんだ。1万年経過してるとなると、遺跡が持ってる記憶も風化してしまっているみたい」
「この遺跡の歴史そのものは、やはり分からぬか」
「ふー。暑さは【氷術】で我慢できるけど、ガスの匂いは辛いね」
ベアトリスは鼻の前で手をぱたぱたさせる。
ダイソウは邸の奥を見て、
「フレイムたんの言っていたモンスターがいる可能性も高い。リアトリス、できるだけ皆一緒に行動するよう、集めるのだ」
と、ベアトリスを見る。
「あ、僕ベアトリスだよ」
「ん? そうか」
容姿がウリ二つのリアトリスとベアトリス。
ダイソウにはほぼ見分けがつかない。
一方で、メアトリス・ウィリアムズ(めあとりす・うぃりあむず)はうきうきしながらカメラのシャッターを押す。
「ねえねえ、早く奥へ行こうよ! 何たって1万年眠り続けた遺跡だよ? どんなものがあるんだろうね!」
「モモちゃぁーん。おねぇさまはガスで具合が悪いですよぉ〜」
本気なのかわざとなのか、レティシアがモモにしなだれかかる。
モモも一応心配し、
「大丈夫ですか、レティさん……」
「……」
「レティさん……?」
「……」
「……おねぇさま」
「はぁーい!」
「元気じゃないですか……ミスティさん、何とか言ってあげてください」
モモはミスティに助け船を求めるが、カメラを構えるミスティは、
『カメラ目線はなしで』
とカンペを出す。
いつものようにモモがリアクションに困り果てていると、
「モモおねーちゃーん」
と、【ちぎのたくらみ】で5歳児に姿を変えた牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)がモモに抱きついてくる。
「アルちゃんともフレイムたんみたいに遊んでー」
「アルちゃんさん、今は仕事中ですから……」
「えー、フレイムたんばっかりみんなと遊んでもらってずるいよー。アルちゃんもぉー」
「あのねーアルちゃん。今モモちゃんはあちきと忙しいんですよぉ。後でねぇ」
「あのねー、アルちゃんねー。お馬さんごっこしたいのー」
レティシアがモモの腕を掴むが、アルコリアはモモの足にしがみついて離れない。
そしてそんな様子を見ているナコト・オールドワン(なこと・おーるどわん)、シーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)、ラズン・カプリッチオ(らずん・かぷりっちお)。
「シーマ、マイロード・アルコリア様が何を目的になさっているか、分かっておりますわね?」
ナコトがシーマを見る。
シーマは、
「分かっている。ここではボクの正義を貫いてよいと聞いた。つまり、シャンバラ王国の正義を」
「きゃはは☆ シーマがどっちを選ぶか見ものだねー」
ラズンも何やらはしゃいでいる。
「とにかく、挨拶を済ませておかねば」
シーマは、リアトリスやクロスと話すダイソウの元へ。
「挨拶が遅れてしまったな。珊瑚の騎士シーマ・スプレイグ。ニルヴァーナ捜索の助力に馳せ参じた」
「うむ、ご苦労。私は謎の……」
「ダイ・ソウトウ。分かっている。まだ探索と戦闘が残っているからな。挨拶にわずらわすつもりはない」
「ダイソウ・トウだ」
「分かっている。さあダイ、貴君に仇なすダークサイズとやらはどこだ? イレイザーという強敵の前に、奴らを倒しておこう」
「……?」
シーマの言葉にキョトンとするダイソウ。
どうもシーマは何かを勘違いしていて嫌な予感がする。
「はーい☆ 減点1ぃ〜」
ラズンが嬉しそうに言うのを見て、シーマもキョトンとしながらもキョトンとしたダイソウに、
「ボクは探索をバックアップするためにダークサイズを排除する。戦闘は任せて、早く指示を。勇者ダイ」
「うむ……シーマよ。私は勇者ではないし、ダークサイズとは我々のことなのだが……」
「謙遜するな、勇者ダイ。シャンバラ王国からの命を受けているのならば、その名誉には浴するべきだ」
「?」
すっかり噛み合わないシーマとダイソウの会話。
傍にいたクロスは状況がつかみきれないながらも、ピコピコハンマーでシーマをぴこんと叩いてみる。
何故突っ込まれたのか分からないシーマ。
アルコリアはそれを目の端で見ながら、
「モモおねーちゃんお馬さんね。お馬さんは裸なんだよー」
と、モモのズボンをずり下げようとする。
「え、え! 何を……」
モモが慌てて押さえるところを、アルコリアは【カメラ】でモモの下半身を写真に収める。
「ちょっと……!」
「ああーん、アルちゃん! そんなモモちゃんのいかがわしい写真撮っちゃダメですよぅ! 後で焼き増ししなさぁい!」
「レティさん、そうじゃなく……」
「あー、おったおった! ダイソウトウ!」
状況がややこしくなりつつある所に、さらに泰輔たちが邸に走り込んでくる。
「泰輔か。自衛施設の方はどうであった?」
「やっぱ、ニルヴァーナ人がおらんと使えへんみたいや」
ダイソウは息の弾んでいる泰輔をイリスを見て、
「そうか。すいぶん走って来たようだが、どうしたのだ」
「そうなんです。実はかくかくしかじかで」
「なんと、『別府』と遭遇したのか。それで、奴は今どこに」
「はい、ダイソウトウさん。『別府』は……」
と、イリスが報告しようとしたところに、『別府』の鳴き声が聞こえる。
「今来ました」
「うむ……わかった」
ゴリラのように両腕を添えながら走り込む『別府』。
『別府』は強靭な足腰を駆使して床や壁を飛び回り、ダイソウ達を飛び越えて邸の奥に陣取り、
『ここは俺のもの』
と言いたげに居座る。
(『別府』は火を吐くおもちゃだよ。女の子は気をつけてね)
と、レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)に抱かれたフレイムたんは不思議なアドバイスをする。
『別府』は間髪いれずに雄叫びをあげ、非力そうと見た高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)とアルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)に襲いかかる。
「きゃあっ!」
『別府』の腕をダイダル卿、いやぱんだりおんが受け止め、力比べの体勢に入る。
「おぬしら、下がれ。こいつは力ばっかりやたら強いわい」
「大丈夫です! ダイダル卿さん、私たちも戦えます!」
「ハデス様のリベンジを、私たちが!」
『草津』の蒸気で身体が真っ赤になったハデスの指示を受けている咲耶とアルテミス。
ダイダル卿は後ろを振り返り、
「こいつは炎を吐くらしいのう。ぱんだが燃えたら大変じゃ。おい、アルテミス」
「はいっ」
「あ、いや、おぬしじゃのうて、あっちのアルテミス」
「我か?」
「そうじゃ。加護をしてくれんか、アルテミス」
「すみません! 私、【ファイアプロテクト】は……」
「いや、おぬしじゃのうて、あっちのアルテミス」
「あ、そうでしたね、すみません!」
偶然名前が同じのアルテミス・カリストと選定神アルテミス。
ダイダル卿の頼みがすっかり混乱する。
などとやってる間に、『別府』が身体をのけぞらせ、口のあたりが高温に包まれる。
「おっと!」
危うくダイダル卿が頭を下げたところに、『別府』が体内に溜めた残りのガスに引火して吐き出す。
「し、しまっ……」
と、ダイダル卿の避けた炎を、咲耶とアルテミスがもろに食らってしまった。
「きゃああああっ」
「ううっ! あ、あつ、あつ、く……ない?」
炎をまともに身体に受けたのに、肉体にダメージがない咲耶とアルテミス。
「炎なんて見かけ倒しですね! 『別府』は大したことなさそうです!」
咲耶は右腕を振り上げてノーダメージをアピールするが、
「いやちょっと待て! 服! 服!」
と、周りが大騒ぎする。
「えっ? ああっ、な、何これえーっ!」
何故か全裸になっている咲耶とアルテミスがしゃがみこむ。
(『別府』の炎は服だけ燃やすんだよね。面白―い)
はしゃぐフレイムたんを、
「どうでもよいがそなた、肝心な説明が遅いのう……」
ミア・マハ(みあ・まは)が、レキの胸に抱かれるフレイムたんにツッコミを入れる。
そして目が光るのはゲブー。
「よっしゃあー! いけおっぱい(向日葵)!」
「ちょっとゲブーくん!?」
さらに総司が、
「こほん、ここはセクスィー☆ダイナマイツの出番じゃねえかと思うんだが」
と、ネネをちらりと見る。
総司の言葉にはセレンフィリティが反応し、
「いいわね! 『亀川』で上手くいかなかったぶん、汚名返上よ!」
「やめてええええ!」
セレアナがセレンフィリティを羽交い絞めにする。
体内のガスを出し切ったらしい『別府』は、両腕を引いて飛び上がり、ダイダル卿をドロップキックで突き飛ばす。
ぱんだがバネの役割をして、ダイダル卿がぽーんと後ろに飛ぶ。
「力が強い上に格闘術みたいな戦い方をするのう!」
『別府』は天井にしがみついて大きく息を吸う。
体内にはかなりのガスを溜めこめるようで、あたりのガスの匂いが少し薄まる。
しかしそれが同時に女子の危険を示す。
男には力で負けず、女は服を取り去って戦闘能力を奪う『別府』。
「うーむ。何と効率的な戦闘法……ある意味無敵ではないか」
ダイソウが感心するのを、クロスがぴこんと叩く。
「今のはツッコむところなのか?」
「いや、ふふふ。何となく」
レキはフレイムたんをもふもふしながら、
「あれー? 向日葵さん戦わないの? さっき次こそはって言ってたじゃん。あの子やっつけないとチーム・サンフラワー逆転できないよ?」
「う……わ、分かってるよ……」
「そうだぜ! 行くぜおっぱい(向日葵)!」
「だからそれ狙いが違うでしょゲブーくん!」
ゲブーの胸倉を掴む向日葵を、ミアが諭す。
「これ向日葵。そなた服の心配をしておるな? それならば気にするな」
「いや、気にするよ!」
「何を言う。そなたの中途半端なプロポーションなど、誰も見ておらぬ!」
「ええー、何それ!」
「そうではないか。レキのようにけしからんほど大きくもなく、わらわのようにぺったんでもない。つまり、最も需要がない! そなたの裸など、誰も喜ばぬのじゃ!」
ミアの理論はよく分からないが妙な説得力がある。
「そうだぜ! てめえの丁度いいサイズのおっぱいなんて、俺様は見ねえぜ!」
「うそつけ!」
突然集中砲火を受ける向日葵。
さらにいつの間に後ろにいたのか、大佐と淳二。
「ふむ、サンフラがそこまで覚悟を決めているなら、私も応援してやろうではないか」
「ちょっと! 行くなんて言ってないでしょ!」
「くっ……ここではダークサイズらしい妨害ができないのか……」
「淳二くんー!?」
さらにレキとミアが、
「そんなこと言ってるから、最近影薄いんだよ」
「あれー! レキちゃん人格攻撃!?」
「いや、当たらずとも遠からずじゃ。いつも若干ツッコミを入れるだけで、流されておるだけじゃろうが。ここにもダークサイズに連れて来てもらったくせに」
「う、だ、だから今後ダイダル卿も狙うもん!」
「では! その意志と力を見せてみい!」
「うぅ……ぅぉぉおおおおー!」
レキたちに追い込まれていよいよ腹を決めた向日葵。
レキはフレイムたんを降ろし、
「その意気その意気! ボクも一緒に戦うよ!」
向日葵の覚悟を見たレキ。
同時に、ダイソウが、
「奴の炎は一方向にしか向かわぬ。多方面から攻めよ! 捜索は『別府』を倒してからだ。クロス、リアトリスたち非戦闘要員は下がるのだ」
「あ、僕ベアトリス」
「ん、そうか」
入れ替わるようにレキがダッシュし、
「炎を抑えればみんなで戦えるよね! 【ヒプノシス】で眠らせれば何てことないよ!」
と、スキルを発しようとした瞬間、やはり『別府』の炎がレキを襲う。
「うっきゃぁー! でも、負けなぁーいっ!」
服がなくても平気なのがレキ。
一応片腕で胸を押さえ、膝も内側に曲げて最低限隠しつつ【ヒプノシス】を食らわせる。
『別府』は精神系のスキルには強くないらしく、動きが鈍る。
それでも眠りに落ちるほどではなく、足もとがふらつく程度。
「よし、おふざけはこれくらいにして、俺達も行こう。サンフラさん、俺達が盾になるし、炎をかわす時は指示を出す。言った方向に飛べば炎は避けられる」
「う、うん!」
すっかり永谷に頼りきりの向日葵。
ゲブーと涼介も、
「しゃーねーな! ま、倒せなきゃ本末転倒だぜ」
「いくぞ!」
続いてまたフレイムたんを抱き上げた天音。
「じゃ、ブルーズ。頼んだよ」
「またフレイムたんの避難か……」
ブルーズはぶつぶつ言いながら【ブリザード】と【グレイシャルハザード】を『別府』に向ける。
レキが【サイドワインダー】、ミアが【ブリザード】を放つ反対方向から、向日葵たちも攻める。
『別府』もそれに反応して口を永谷たちの方向に向ける。
「! サンフラさん、右によけるぞ!」
永谷、ゲブー、涼介、ブルーズがタンッっと飛び退き、直後『別府』の炎が迫る。
が、なぜか動かない向日葵。
「どうしたおっぱい(向日葵)!」
「あれっ、動けな……きゃああー!」
ついに『別府』の炎を受けてしまった向日葵。
そして彼女の後ろには、向日葵を盾にした大佐が。
「何でジャマすんのよーっ!」
「がんばって目立つ覚悟を決めたのだろう? 後押ししてやったまでなのだ」
「そういう意味じゃなーいっ!」
「ああーっと! これはピンチです! 次々に女子が『別府』の餌食にーっ」
という終夏の実況が聞こえ、周囲を見渡すモモ。
「大変! 早くしないと、イレイザーの前に戦闘要員がいなくなってしまう!」
「モモちゃんっ、危ないですぅ!」
「!」
レティシアがモモを抱えて飛び退く。
「いたた……」
「レティさん!」
「ふふふ……たまにはおねぇさまらしいとこも見せてあげないとですねぇ」
と言いながら、レティシアはモモの胸に頬ずり。
庇ってもらったモモは拒否できずに、
「ま、まあ炎から守ってもらいましたし……」
とモモが見ると、『別府』は全然違う方向に炎を吐いている。
「何から庇ったんですかレティさん!?」
「えへへ〜」
それを見たアルコリアは、
「あぶなーいっ、モモおねーちゃーん!」
と、突如【疾風迅雷】と【分身の術】、そして【魔障覆滅】で何故かモモに襲いかかる。
アルコリアの【魔障覆滅】は、特殊な訓練を積み重ねたもので、
ひゅんひゅんひゅん!
目にも留まらぬ早業で、モモの服のみを切り刻む。
「ふー。危うく服を燃やされちゃうところだったねっ☆」
「斬り裂いてどうするんですかーっ!」
「大変ですぅ! モモちゃんの神聖な肌が衆目にさらされてしまいますー!」
ついでに服を斬られたレティシアが、モモに身体をくっつけて隠す。
そしてそれを編集点を考えながら撮影するミスティと、高速で【カメラ】のシャッターをきるアルコリア。
こっちはこっちで、もう何が何やらよくわからない。モモの凌辱だけが進んでいる。
そして、ダイ・ソウトウではなくダイソウ・トウとダークサイズのレクチャーをクマチャンから受けるシーマ。
「何! ダークサイズとはシャンバラ王国直属のニルヴァーナ捜索部隊ではないのかっ?」
「いや、何でそういう思い違いしたか知らないけど……ダークサイズが王国直属なら、遊撃隊っぷりにもほどがあるでしょ……」
「では彼は勇者ダイではないのかっ」
「逆に何で勇者だと思ったんだよ……」
シーマはうなだれながら小声でぼそぼそと、
「だって……ダイってつくから……」
「理由になってないって……」
「あーっはっはっは! ねえシーマ、これで分かったでしょう? 貴様一人が何を正義に思おうと、所詮一人遊びにすぎないのですわ!」
「きゃははっ☆ 軍服という表面的な記号ですっかり思いこんじゃったんだねぇ。あのダイはシーマの概念では悪らしいよー? でもニルヴァーナの謎を調べてるから、正義に協力してるねー。サンフラワーは正義の味方みたいだけど、シャンバラに協力してるダークサイズをジャマしてるから正義なのかな? 悪なのかな? ややこしやー☆」
「やはり、常に正しい絶対的な善とは、アルコリア様のみですわっ」
「ううっ……」
膝を突くシーマを囲んで、ナコトとラズンは嬉しそうになぶる。
(どうでもいいけど、この人たち敵なの味方なのー?)
彼らの世界に巻き込まれたクマチャンが、一番混乱している。
シーマはついに立ち上がり、怒りに燃えた目をクマチャンに向ける。
「お、おのれダークサイズ……騙したな!」
「いや、君が勘違いしてたんでしょーっ!」
「もはや我慢ならぬ! 何故こんなややこしい組織を作ったのだ! 普通に勧善懲悪でいいではないかーっ!」
思考回路がショートして思考停止状態、つまりキレたシーマ。
とりあえず視界に入ったクマチャンをふっ飛ばし、そのままダイソウへ突撃。
ダイソウがシーマの【ジョワユーズ】を受け止め、
「!? ぬ、シーマ。お前はスパイだったのか?」
「何を言う! ボクを騙していたくせに!」
さらにそこに、『別府』の炎が襲いかかる。
「いけない! ダイソウトウの裸なんて誰も見たくないはず!」
下がっていたクロスが飛び出す。
ベアトリスとメアトリスが土台になって、スカイラブハリケーンみたいなことをしてリアトリスを飛ばし、リアトリスがダイソウを蹴り飛ばす。
続いてクロスが、飛んできたダイソウをピコピコハンマーで邸の入口の方にかっとばす。
「ダイソウトウ、大丈夫!?」
ベアトリスとメアトリスがダイソウに駆け寄る。
ダイソウは身を起こし、
「助かったが、クロスの一発はいらなかったのではないか?」
まだ怒りの解けないシーマは、全裸の向日葵に、
「サンフラワー! 貴君は立場をはっきりさせろーっ」
「ちょ、ちょ待って! 今取り込み中だからー!」
シーマの一刀を永谷とゲブーが受け止め、
「な、何だこいつ!?」
「てめー邪魔すんな! おっぱい(向日葵)のおっぱいこれから拝むんだからよー!」
またそこに『別府』の炎が。
「さっきからやかましいぞーっ!」
シーマは炎に正面から突撃し、全裸に。
かまわずそのまま『別府』に斬りかかる。
「あーあ。シーマったら壊れちゃった☆」
「くくく、シーマは本当に愚かですわねぇ!」
と、何だか嬉しそうに【召喚獣:サンダーバード】を呼び出すナコトと【ヘルハウンドの群れ】を携えるラズン。
「あーっはははは!」
「きゃっはははは☆」
二人は便乗してスキルを炸裂させ、混乱に拍車をかける。
二人の心境を反映しているのか、サンダーバードとヘルハウンドは見境なしに暴れまわる。
ダイソウはサンダーバードを見て、
「……リアトリスよ」
「あ、僕ベアトリス」
「雷と言うのは、ガスに引火するのだろうか」
「え、あ……するかもね」
という二人が会話を交わした直後、天井付近に舞いあがったサンダーバードが咆哮と共に身に帯びた雷を発散する。
そして……
長の邸は爆発した。
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