薔薇の学舎へ

波羅蜜多実業高等学校

校長室

葦原明倫館へ

【創世の絆】超巨大イレイザーを討伐せよ!

リアクション公開中!

【創世の絆】超巨大イレイザーを討伐せよ!

リアクション



ライフ・ライン1

「こいつ、動き回らないだけでやっぱまだ生きてんだろな……」
ところ変わってこちらはイレイザーの外部である。土御門 雲雀(つちみかど・ひばり)エルザルド・マーマン(えるざるど・まーまん)と、基地からイレイザーの巨体を――正確には見えている巨体の一部を――眺めていた。
「体内は無数のヘビのアヴァターラが襲ってくるとか……考えたくもないな……」
雲雀が身震いをした。
「エネルギーを吸収してるってことは、体の表面上に吸収する為の器官があるんじゃないか?
 どこか基地と接触して体内にエネルギーを供給しているって考えるのがセオリーだと思うんだ。
 エネルギーがこれ以上奪われるのを防ぐなら、そこを攻めるのが近道じゃないかな?」
エルザルドが言った。
「そっか……まぁ最悪頑張って体内に入るしかねーとして……エネルギーの供給ラインだっけ? 探してみるか。
 もしかしたらラインを辿っていけば核に辿りつける可能性もあるしなー」
「ま、イレイザーに通常の生物や機械の常識が通じるかはわからないけどね。
 はい、これ。んじゃ行こう」
エルザルドは雲雀に禁猟区のお守りを手渡した。イレイザーがどこからどのように基地の動力を吸い出しているのか確認するため、雲雀が安全策としてディテクトエビルを発動させてから2人は各々、小型飛空挺で舞い上がった。上空から見ると、イレイザーの背中の触手のうち、千切れていないものが細く長く伸び、基地の方へと伸びてしているのが見て取れた。触手は中途から砂に埋没してしまい、どこに伸びているのかは空から確認できない。雲雀が逸る。
「よし、根元の方を攻撃してみよう」
「その前に内部に行ってる人たちと、基地の人にこのことを連絡した方がいい」
エルザルドが雲雀を諌める。
「あーもー!やっぱ頭使うのってニガテだー!」
「文句言わない。しんどいってわかっててこの道選んだのは雲雀でしょ?」
「言われねーでも頑張るつもりだよ。でも苦手なモンは苦手なんだっつの……」
銃型HCで各所に情報を伝え、2人は旋回しつつファイアストームで触手の付け根を攻撃した。あまりに巨大な触手のため、一度に一本しか攻撃できない。
「お、一本はやったか?」
雲雀が目を輝かせた。だがすぐにエルザルドの鋭い声音が響く。
「いや! ダメだ。再生してる!」
迎撃しては来ないものの、ようやく千切った触手のすぐ傍から、新たな触手がずるずると現れた。先端は牙をぎっしりと生やした開口部を着実に基地の方に据えて、さほどスピードはないが着実に伸びてゆく。行く手を遮るものがあれば途中にあった岩のように、容赦なく咬み壊して進んでいくのだろう。エルザルドはそのことを再び他の契約者たちに伝え、厄介極まりない巨大イレイザーを見つめていた。

 イレイザーも無線でエネルギー吸収しているわけではないだろう。受けたダメージを回復するために基地エネルギーを吸収しているのであれば、その妨害に意味はあるはず。そう考えた夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)は基地の動力源へと向かっていた。草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)ホリイ・パワーズ(ほりい・ぱわーず)ブリジット・コイル(ぶりじっと・こいる)らも一緒だ。
「それらしきものがあれば、妨害のためそれを叩く!」
「うむ。術での攻撃は任せておけ」
草薙が請合った。
「守りはワタシが固めるですよ」
ホリイが胸を軽くと叩く。
「万が一の備え、索敵はお任せください」
そう言ってブリジットは殺気看破を作動させた。
「オレも行くぜ」
瀬山 裕輝(せやま・ひろき)が基地内に入ろうとする甚五郎を呼び止めた。
「ここの発電には化学燃料発電機と機晶発電機、やったかな。そこからまず見てみるんが筋やと思うで」
「そうだな。確かに一理ある」
「発電機械の止め方も調べておこうや。発電を止めればエネルギー供給を抑えられるのではないかと思う」
「それは確かにそうであるな。そなたの案は良いと思うぞ」
裕輝の言葉に草薙が同意を示した。
「では、まず技術者さんを探しましょう」
ブリジットが先にたって、5人は基地の管理者を探しに行った。

「なに?? なななが飛び出して行っちまった!? ったく小暮の野郎……。
 ななながケガでもしたら許さねぇ。禿頭ぶん殴ってやるからな!」
シャウラ・エピゼシー(しゃうら・えぴぜしー)が、ルカルカからななながイレイザー体内に小暮を探しに行ったとの連絡を受け、思わず叫んだ。
「あ、いや……すいません……あ、はい、通信塔の電源確保と、イレイザーのエネルギー吸収阻止? 了解」
通信を切って、ユーシス・サダルスウド(ゆーしす・さだるすうど)の方へ向き直る。
「今ルカルカさんから連絡が入った。巨大イレイザーは背中の触手でここのエネルギーを食い散らかしているらしい。
 触手を攻撃してもすぐ再生しちまうんだと。エネルギーを吸えなくなれば弱る可能性が高い。
 というわけで通常発電と機晶石発電の両発電機の作動を停止する!
 そしたら突入組を襲ってる敵もまとめて弱くなるかもだろ? なななの安全度も上がるって寸法だ。
 …… あ、小型発電機で通信関係の電源は確保な」
一気にまくし立てるシャウラ。
(シャウラが金元さんを大切に想ってるのも事実ですが、ああ見えても全員の安全を懸念してるんですよね……)
ユーシスは頷き、言葉に出してはこう言った。
「ではまず通信塔の電源確保に行きましょう。小型発電装置の準備は?」
「教導団の方で機晶式のを2台手配してくれたそうだ」
「ではまずそれを設置しに行きましょう。それと、大本を切ることをここの人たちに連絡もしておきませんと。
 それと……できればここの発電機の停止方法も聞いておきましょうか。ですがまずは、通信塔へ向かいましょう」
2人は通信塔へと急いだ。管理者たちと手短に話し合い、ヘクトルと連絡を取る。
「わかった。止むを得ない場合は電源を破壊してもかまわん。なんとしてでもヤツへのエネルギー供給を止めろ」
通信関連施設の全員が忙しく通信塔内部で立ち働いた。影響が最小限で済むよう、大本の電源からシステムを順次切り離し、稼動している機晶式小型発電機2台に接続してゆく。すべての接続が切り替わると、電源の供給する電力が十分か、いくつか負荷試験を行い、万全を期す。
「さて、これでこっちは片付いた。電源の方へ行ってみるか」