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こどもたちのおしょうがつ

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こどもたちのおしょうがつ
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○     ○     ○


「おおばばさま! まちがえたっ! ごめんなさい!」
 見回りに出てきたアーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)に、外見3歳のリリィちゃん(リリィ・クロウ(りりぃ・くろう))が駆け寄った。
「なんじゃ?」
 アーデルハイトは怒らずに、優しい目でリリィちゃんや子供達を見ている。
「あのかまくらを、『ふぁいあすとーむ!』ってしてください」
「ん? なんでじゃ?」
 リリィのお願いに、アーデルハイトは眉を寄せた。
「さむいから。きっとよくもえるとおもうんです」
「燃やしてしまったら、もったいないじゃろ」
「もったいなくないです。もえたほうがしあわせなんだもん」
「せっかく作ってやったのに、燃やしたいとは……」
 困り顔のアーデルハイトにリリィちゃんは、一生懸命説明をしていく。
「え〜っと……。だってさむいもん……。『ふぁいあすとーむ!』ってしたらかっこいいとおもう!」
「みんなが喜ぶから燃やしたいのかの?」
「うん、さむいなか、ひえひえだから」
 アーデルハイトにはリリィちゃんの言いたいことがよくわからなかった。
 リリィちゃんもうまく伝えられなくて、身振り手振りも交えて説明をする。
「もえたら、あったかいの。みんなうれしいんです! おやつのじかんたのしみっ」
「ふむふむ……」
 話をしているうちに、アーデルハイトはなんとなくわかってくる。
「マシュマロをあぶりたいのかの? そして、食べるんじゃな?」
「そう! たべるの!」
 ぱあっと、リリィちゃんは顔を輝かせた。
「やったことはないんじゃが、可愛い子供達の期待に応えんわけにはいかんのう」
 そう言うと、アーデルハイトはリリィちゃんが確保していたマシュマロハウスに一緒に歩いていき、ファイアーストームを放って軽くあぶってあげた。
「わあ〜。やきマシュマロになったよ。みんな、きてきてー!」
 リリィちゃんが大声を上げて、お友達を呼んでいく。
「これたべていいの?」
「ほかほか?」
「手を洗ってから食べるのじゃぞ」
 集まった子供達に、アーデルハイトは微笑みを向ける。
 すぐに手を洗ってきたリリィちゃんは、さっそく焼きたてのマシュマロを食べてみる。
「かまくらやいたのおいしいです」
 甘いマシュマロを食べながら、リリィちゃんは嬉しそうに笑みを浮かべる。
「おおばばさま、ありがとうございました」
 そしてぺこりと頭を下げた。
「うむ。食べ過ぎないようにの。夕飯もじきにできるからのう。――さて、準備に戻るとするかの」
「はいっ!」
 元気に返事をしてアーデルハイトを見送った後、リリィちゃんはお友達とマシュマロをたくさん頬張っていくのだった。

「ブラヌ、こっちこっち。これあたしのおうちだよ!」
 外見4歳のヨルちゃん(鳥丘 ヨル(とりおか・よる))は、大声でガキ大将のブラヌくんを呼び出して、確保しておいたマシュマロハウスに連れてきた。
「あたしとしょうぶしよう! このおうちをたくさん食べて、せいはしたほうがかちだよ」
「よーし、いいぜっ。おなかがすいてたところだ」
 冷たくなった手を、ブラヌくんはこすり合わせて温めている。
「じゃさ、まけたほうは、かったほうの言うことを1つだけきくっていうのはどう?」
「うん、なにをさせるかまような〜」
「あー、ブラヌかった気になってる! あたし、まけないよ」
 それから、2人で「せーの」と言って、勝負を開始する。
 ヨルちゃんは壁をちょっとちぎって食べて、机をちぎって、棚をちぎってと、少しずつ全種類制覇を目指す。
「これうまい! けどしょっぱいものもほしくなるぜー」
 ブラヌくんは椅子を全部食べようとしていた。
「んー、それもたべたい!」
 ヨルちゃんはブラヌくんに近づくと、手を伸ばして一切れもぎ取った。
「んお? ヨルがもってるの、せんべいじゃないか。それよこせー」
「あー、これはだめ、あまいものにあきたら食べるんだからー!」
 ヨルちゃんはせんべいをポケットに隠して抵抗する。
「だせーだせー」
 ブラヌくんはヨルちゃんに飛びついて、せんべいを奪おうとする。
「ダメだったらだめー」
 ヨルちゃんは、ひょいっと逃げると、マシュマロハウスの壁を食べていく。
「あたしのほうが、ずっとリード。とーぜんだね!」
「何をー! まけないぞ〜」
 ブラヌくんはせんべいをあきらめて、椅子をばくばくと食べていく。
 ……だけれど、おやつの時間終了前に、ブラヌくんは甘いものに飽きて、ギブアップ。
 いろいろなものを食べていたヨルちゃんはさほど飽きを感じず、おやつの時間終了まで食べ続け、もちろんブラヌくんに勝利した。
「せんべいはんぶんとっておいたんだ。あげるね!」
 言って、ヨルちゃんは気持ち悪そうにしているブラヌくんの口に、せんべいをつっこむ。
「おー、せんべいがこんなにうまいとは知らなった……」
「まだまだたくさんのこってる。ここにすみたいなぁ」
 ヨルちゃんはほんわりと笑みを浮かべる。そして。
「さて、負けたブラヌにはお馬さんになってもらおうかな!」
「えー!? カッコわるいからやだよ」
「やくそく守らない方がかっこわるいよ!」
「うーん。ま、いっかヨルだし……」
 しぶしぶ、ブラヌくんは馬になり、ヨルちゃんを背に乗せる。
「よおし、たくさんうごいて、ゆうはんもいっぱいたべるぞ。こんどは負けないからな!」
「あたしだって、まけないよー! おかしとしょくじはべつばらだもんね。さあしゅっぱつ!」
 ヨルちゃんがぺしんとブラヌくんの尻を叩く。
「モー!」
「お馬さんじゃなくて、牛さんだー!」
「出発だメェェェェー」
 続いてヤギの鳴き声をまねして、ヨルちゃんを乗せたブラヌ号は庭を走り回っていく。

「よーし、こっちのほうはあんぜんだぞ」
 りゅうじくん(竜司)がありすちゃん(亜璃珠)と、ゆうこちゃん(優子)を、テントの後ろ側に連れてきた。
「ひとりでおいはらったり、なかなかやるじゃねぇか。おおきくなったら、オレのおよめさんにしてやるぜー」
 りゅうじくんは雪遊びを始めたゆうこちゃんを見ながら、そんなことを考えていた。
 そのつぶやきはゆうこちゃんの耳に入っていたみたいで、ゆうこちゃんがくるりと振り向いた。
「わかった。ゆうこおおきくなって、もっとちゃんとおいはらえるようになる! で、りゅうじよりおおきくなったら、おヨネさん、してもらう」
 その言葉は、りゅうじくんの心に誓いの言葉として深く刻まれた。
 しかし、優子が竜司より大きくなる未来は来るはずがないのだ。
「からだ小っちゃくなってるし、ゆぎがっせんはあぶないから、こっちであそぼうね。それに、この子をまもらなきゃならないし」
 ありすちゃんがわたげうさぎを見せると、ゆうこちゃんはこくりと頷いた。
「ゆうこ、おだいかんさまごっこしたい。でもこのこたち、まもる。よわきをたすけ、つよきをくじくんだよ!」
 ゆうこちゃんの手の中には、こゆきくん(呼雪)からもらった雪うさぎがあった。頑張ったご褒美としてもらったものだ。
 その雪うさぎを、ありすちゃんのわたげうさぎの傍におくと、ゆうこちゃんはとっても嬉しそうな笑みを見せる。
「おともだち、たくさんつくってあげようね」
「うんっ!」
「おし、こっちはイケメンいがい、たちいりきんしな。オレがとおさないぜー」
 ありすちゃんとゆうこちゃんは、りゅうじくんに守られながら、雪うさぎを沢山沢山作っていく。