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地球に帰らせていただきますっ! ~3~

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地球に帰らせていただきますっ! ~3~
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 ■ 5人の食卓 ■
 
 
 
 夏の長期休暇に入る前、湊川 亮一(みなとがわ・りょういち)は帰郷の旨を父の湊川 孝一に伝えた。
 すると父は丁度その頃、イコンの運用関係の講習で海京に出張中であると言う。
 詳しく確認してみたところ、亮一の休暇と父の講習終了の日は重なっていた。
 それなら一緒に実家のある横須賀へ帰ろうということになり、亮一は海京で父と待ち合わせをした場所に赴いた。
 
 近づいてくる父親の姿はすぐに解った。がっしりとした体格は変わらない。
 今年46歳になる父は現在海上自衛隊2佐で、ヘリ搭載護衛官の飛行長を任されている。
 任官したこともあるので、亮一は軍人らしく敬礼して父を迎えた。
「お久しぶりです、湊川2佐殿」
「うむ、久しぶりだな。湊川少尉。元気そうでなによりだ」
 自衛官の顔の父も敬礼で亮一の挨拶を受けた。
 高嶋 梓(たかしま・あずさ)は敬礼は無しで、笑顔で挨拶する。
「お久しぶりです、孝一おじ様。お元気そうで何よりです」
 そちらには孝一もにこやかに答えた。
「梓さん、ウチの息子の面倒を見てくれてありがとう。それからパパって呼んでくれて構わんよ」
 そう言う孝一の顔は、厳格な自衛官から普段の愉快な親父へとすっかり変化していたのだった。
 
 
 海京から横須賀に。
 そのまま亮一と孝一は実家へと向かった。
「ただいま。今帰ったよ」
 家で2人の帰りを首を長くして待っていた祖父と母が、玄関まで出てきて迎えてくれた。
「おば様、家事をお手伝い致しますわ」
 梓は荷物を置くとすぐ、亮一の母を手伝って家の雑事を片づける。
 機械には弱い梓だけれど、家事全般は得意だ。
 いつも悪いわねと言いながらも、母は梓に手伝ってもらいながら夕食の用意を調えた。
 
 
 いつもは祖父、父、母の3人で囲む食卓は、今日は亮一と梓を加えた5人となった。
 母の作ったおふくろの味。
 梓の作った、亮一には馴染みだけれど他の家族には珍しい味。
 どちらも美味しいその料理に、自然と皆の箸も進む。
 母は梓にパラミタでの暮らしを尋ね、梓はそれに丁寧に答えて母を安心させた。代々軍人、自衛官を輩出してきた家系だから、亮一をパラミタという任地に送り出すことに家族の抵抗は無かったが、それでも心配なのが母心というものなのだろう。
 亮一が第2世代イコンの開発に参加していることを報告すると、孝一はその話に耳を傾け、実戦におけるイコン運用に関する質問を幾つもしてくる。
 父の質問はさすがに的確で、亮一は軍機に関する部分を注意深く除いた範囲で、自分の経験も合わせて回答した。
 そんな息子を頼もしく見ながら、父の酒もいつになく進む。
 見計らって酒のお代わりを追加しながら、梓は亮一の母と顔を見合わせて微笑みあうのだった。