リアクション
第十二試合 『第十二試合は、ググの腕輪をシンボルとした赤嶺 霜月(あかみね・そうげつ)選手と、頭に風船を乗せたザーフィア・ノイヴィント(ざーふぃあ・のいぶぃんと)選手の戦いになります』 「こちらの鍛錬につきあっていただきましょう」 赤嶺霜月が、観客とザーフィア・ノイヴィントに一礼する。 「まだ未熟者なれど、お手柔らかにお願いするのだよ」 大剣ハイアンドマイティを引きずるようにして武舞台の上にまで運んできたザーフィア・ノイヴィントが軽く会釈して言った 『お互いに挨拶がすみ、試合開始です!』 「避け切れるかい?」 開幕早々、ザーフィア・ノイヴィントが六連ミサイルポッドから一斉にミサイルを発射した。 「いきなりか!」 素早い動きで、赤嶺霜月がミサイル群を避けた。ググの腕輪によって高められた身体能力がなければ、着弾点を動けないうちに木っ端微塵だっただろう。 一気に間合いを詰めると、断魂刀【阿修羅】による抜き打ちをかけるが、ハイアンドマイティの陰に隠れたザーフィア・ノイヴィントには届かない。そこへ本命の狐月【龍】による疾風突きを放つ。 だが、直前にザーフィア・ノイヴィントがハイアンドマイティを持ちあげたために、それが邪魔で間合いが届かない。素早く身を退くところへ、大剣が打ち下ろされる。 「もらった!」 二刀流の長所を生かし、阿修羅でハイアンドマイティを押さえた赤嶺霜月が、孤月でザーフィア・ノイヴィントの頭上の風船を貫いた。 『勝負ありました。赤嶺霜月選手の勝ちです!』 第十三試合 『さて、第十三試合は、鳴神 裁(なるかみ・さい)選手と、蒼魔 綾(そうま・あや)選手の登場です』 魔鎧ドール・ゴールド(どーる・ごーるど)をインナーとして纏い、胸に薔薇の花のブローチをシンボルとしてつけた鳴神裁ではあるが、実は物部 九十九(もののべ・つくも)が憑依している。そのため、左目が金目に変化していた。 「ボクは風。この僕の動きを捉えきれるかな」 一人ではないせいか、鳴神裁(物部九十九)は自信満々だ。 「あたしの目的は、あくまでも荒神と戦うことなんだから。ここで負けるわけにはいかないよね」 神崎 荒神(かんざき・こうじん)と戦うことを夢見た蒼魔綾が、紙風船を頭に載っけて決意を新たにする。 『さあ、いよいよ試合開始です』 素早く水中銃を構えた蒼魔綾が、鳴神裁(物部九十九)を狙った。 だが、嵐を呼び出した鳴神裁(物部九十九)によって、長針の弾丸が流される。 「どれがボクだか分かるかな」 ミラージュで分身を作った鳴神裁(物部九十九)が、軽身功で武舞台の空間を三次元的に駆け回る。 「そんな物、消せばいいんだよね」 蒼魔綾が、ヒプノシスを放った。 あっけなく、鳴神裁とドール・ゴールドが寝て、分身が消える。 「その程度かな。本当の風の動きを見切れるかな」 意識のある物部九十九が、鳴神裁の身体を使って、蒼魔綾の懐に飛び込んだ。接近戦は不利だと、蒼魔綾が離れようとするが、鳴神裁(物部九十九)がそれを許さない。 「変化自在の風の動きを捉えきれるかな! 七曜拳!」 鳴神裁(物部九十九)が、サマーソルトキック、変幻蹴り、倒立回転蹴り、ウィンドミルキック、アルマーダコンマルテイロゥ、ティミ・パンデトルリョチャギ、540キックを連続で蒼魔綾に叩き込んだ。吹っ飛ばされた蒼魔綾が武舞台の外に落ちる。 『むにゃむにゃ……。あれ? 終わってます?』 やっと目を覚ましたドール・ゴールドが、そうつぶやいた。 「つつつ……。やられたよね。――仕方ないかあ。この後も、頑張ってよね」 武舞台をつつむ防御魔法で怪我もなく立ちあがった蒼魔綾が、ちょっと残念そうな顔をしてから、表情を元に戻して鳴神裁(物部九十九)に言った。 『勝者、鳴神裁選手です』 第十四試合 『第十四試合は、魄喰 迫(はくはみの・はく)選手の不戦勝となっております』 第十五試合 『第十五試合、雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)選手対、ベリート・エロヒム・ザ・テスタメント(べりーとえろひむ・ざてすためんと)選手です』 「パラミタ100万人の俺様ファンのみんな! 待たせたな!」 のっしのっしと巨体をゆすりながら、雪国ベアが武舞台に上がってきた。頭にはちんまりと紙風船をつけている。 「日堂真宵から本を取り戻したので今日のテスタメントは一味違うのです! さあ、テスタメントの威光を見せてさしあげましょうー!」 日堂真宵から取り返した分厚い自身の本体を頭の上に載せて、ベリート・エロヒム・ザ・テスタメントが言った。心なしか、魔道書の重さのせいでよろよろとしているが、本人は、美人の聖女様登場という感じでポーズを作ろうとしている。だが、全身にダミーの紙風船をべたべたとつけていてはとてもそうは見えない。ちなみに、本物のシンボルは、魔道書についた赤い紙風船である。 『さあ、試合開始です』 「おらー! ぶっ飛びやがれ!」 気合いを入れて、雪国ベアが突進した。 「よっとっと……」 魔道書の重さにふらついたベリート・エロヒム・ザ・テスタメントが、ほとんど偶然でその突進を避ける。 「てめえ!」 とって返してきた雪国ベアだが、またしてもそのふらふらとした足取りに翻弄されてからぶってしまった。 「こうなったら……」 すっと、雪国ベアが光学迷彩で姿を消す。 「忍び寄るゆる族の恐怖!」 ベリート・エロヒム・ザ・テスタメントの背後に現れた雪国ベアが、がっしっと彼女をだきかかえて締めあげた。ベリート・エロヒム・ザ・テスタメントの全身にくっつけてあった紙風船が次々と割れてパンパンと音をたてる。 「むぎあああ、テスタメントに何をするです。バニッシュ、バニッシュ! 天のいかづち!!」 パニックを起こしたベリート・エロヒム・ザ・テスタメントが、無茶苦茶に呪文を唱えた。当然、聖なる光と落雷が、二人めがけて落ちてくる。 「や、やるじゃねえか……」 雪国ベアが、武舞台の上にバターンと大の字になって倒れた。 「こ、このメロンパンだけは……」 なぜか、黒焦げになったメロンパンをかかえて、ベリート・エロヒム・ザ・テスタメントが雪国ベアのもふもふの腹の上に倒れて気を失う。 『両者相討ちです!』 第十六試合 『続いては、アラザルク・ミトゥナ選手と、コンちゃん選手です』 「いつの間にエントリーを、ココの奴……」 やられたと、武舞台の上でアラザルク・ミトゥナが頭をかかえた。とはいえ、ゴチメイたちの手前、棄権というわけにもいかない。 「よろしくお願いしまーす」 頭の上に紙風船を載せたコンちゃんが、ぺこりとお辞儀をした。 「どうも御丁寧に」 つられて、アラザルク・ミトゥナも、紙風船のついた頭を下げる。 「ああ、これで届きます。こんにちは〜♪」 開始のゴングを待たずして、コンちゃんが頭から突っ込んでいった。 「えっ!?」 隙を突かれたアラザルク・ミトゥナの頭に、コンちゃんが頭突きで御挨拶をする。 「いたたたたた……」 当然、両者の風船が割れた。 『ええと……。相討ちです。なんだかよく分からないうちに、両者の風船が割れてしまいました』 |
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