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リアクション
合流しそして削除される異物
PM14:00(タイムリミットまであと10時間)
合流と銃声は、同時だった。
セレンフィリティが連れてきた聡と結たちを見て、本隊の面々は僅かに緊張したものの、ハイナが横須賀基地のメンバーに間違いないと請け負ったことで平和的に合流できるかに、見えた。
しかしそこで双方が気を許した瞬間。
グラルダが襲い掛かってきた。
「信じない、信じない信じない信じない信じない……だから、殺す!」
グラルダから発せられた炎の嵐が、無差別に襲い掛かる。
しかし次の瞬間、グラルダと名乗っていた少女の首は、落ちた。
イングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)が攻撃を受け流し、その横を葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)が通り抜けると得物を振りかざした。
(今は躊躇ってはいけない時……)
毛一本のぶれなく、得物は振り下ろされた。
「一度は仲間だった相手ではありますが……明確な害意が確認できた為、排除いたしました」
「一度は仲間だったのに……か。悪いが、合流前に確認をさせてもらう」
吹雪の言葉に思う所があったのか、聡達の前に、ダリルが立つ。
「ああ、構わない」
「君達は、死人か?」
「違う」
「……ううん」
「違う、よ」
それぞれに返答する聡と結達。
嘘感知を使い、彼らの言葉を吟味する。
「……嘘はついていないようだな。横須賀基地からの助力、感謝する」
「しかし、聡達がわざわざ横須賀基地から来るとは……コームラント・ジェノサイドといい、基地で何かあったでありんすか?」
「ああ、回りくどい話は後だ。信じて貰えたなら急いで知らせなきゃいけない事がある」
聡は説明する。
基地に、死者の襲撃があったこと。
それによって、最悪のイコン『コームラント・ジェノサイド』が全て解き放たれてしまった事。
そして、タイムリミット。
「10時間!?」
残された時間を聞き、驚いたように呻く理子。
「死者とコームラント・ジェノサイドとの対決を考えるとギリギリだねぇ」
あくまでものんびりした口調を崩さないのはアスカ。
しかしその額には、僅かに汗が滲んでいる。
「伝えに来てくれて、そして助太刀に来てくれてどうもありがとう!」
感謝の気持ちを伝える歌菜だが、隣からの厳しい視線が横須賀合流組に向かっているのを感じ、困ったようにそちらを見る。
視線の主はフレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)とベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)だった。
「その、怪しまれる可能性があるのは十分承知しています。むしろ、疑ってくれて構いません。そちらの方が安心できるのでしたら」
フレンディスたちの視線を受けて、美桜が申し訳なさそうに言った。
「でも、できれば……信じてほしい」
「任務が終わるまで、マスター以外を信じることはありません」
「ああ。俺も、フレイ以外は信じない」
寄り添うように立つ二人。
そんな二人を、木枯と天野 稲穂(あまの・いなほ)は悲しげに見つめる。
「……もう、フレンディスさん達と一緒に遊べないのでしょうか」
「そんなことない」
稲穂の口からぽろりと落ちた言葉。
それを聞いた木枯しは、そっと稲穂の肩を抱く。
「生き残れば、きっと」
「……がんばります!」
「そうそう、全部終わったらパーッとやろうじゃん! ぱぁーっと!」
にゃん子が、わざとらしいほど明るい声で宣言した。
「それで、現在の横須賀基地の様子なんだが……」
説明を続けようとした聡。
しかし、となりの結の様子に思わず言葉が止まった。
「ね、どうしたの、結……?」
美桜もパートナーの異変を感じ、心配そうに声をかける。
だが、なんとなく分かっていた。
自分に何が起きたのか、覚えていない。
だけど、これは……今自分の体に起こっている事は、結の異変と無関係ではないと、なんとなく分かっていた。
「……かわく」
「うん、そうだね」
「渇くの、渇くの、いのちが、欲しいのぉっ!」
結は飛びあがると、目の前にいた歩に襲い掛かる。
「や……!」
目を瞑るが、次に来ると思われた衝撃はなかった。
「危ないですぅ!」
いち早く殺気を感知した冬蔦 日奈々(ふゆつた・ひなな)が歩を庇い、結の攻撃を受け止めていた。
「あ、ありがと……」
「気にしないでくださぃ。大事なお友達は、傷付けさせません」
そう言いながら、日奈々は僅かに逡巡する。
(大事なお友達……そう。歩ちゃんは、お友達。だけど、他の人は? その人を守っても、もし死人だったら……)
「戦場で考え事は危険ですわ」
一瞬手が止まった日奈々の隣に立ったのは、魔鎧エンデ・フォルモント(えんで・ふぉるもんと)を纏った冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)。
再び襲い掛かってきた結に、拳を打ち据える。
「結、結……っ!」
倒れこんだ結を、美桜が抱きしめる。
「あなたも、ご同類?」
感情を押し殺した声で、小夜子が美桜に告げる。
「結……止めて、こんな事……っ」
暴れる結を抑えていた美桜だが、やがて諦めたように目を閉じた。
「……ごめんなさい。もう、終わりにしましょう」
「終わりにする?」
「もう、これ以上結を……私を、抑えられない」
「たとえどんな状況であろうと、死人に情けはかけません」
美桜の前に進み出たのは、樹月 刀真(きづき・とうま)だった。
刀の煌きが、二閃。
ことり、ことりと結と美桜の首が落ちた。
「念のためです。月夜」
「ええ」
漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)が切った首を地面に縫い付けた。
先程落ちたグラルダの首も、同じ処理を行った。
「ひとまずは、これで大丈夫でしょう」
こうして、一行に訪れた死人の脅威は消えた、ように見えた。
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