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アーリー・サマー・ニルヴァーナ

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アーリー・サマー・ニルヴァーナ

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10)


アガルタにて。

九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)は、
以前、長曽禰 広明(ながそね・ひろあき)と出かけた時の反省から、
無理のない範囲のおしゃれをしてきている。
夏らしく、動きが疎外されないワンピースに、
歩き回ることを考え、靴は履きなれた物にしている。

2人は、買い物をした後、
芸術家や職人たちの集う街、
D地区エヴァーロングの、ローズのアトリエに荷物を置きに行くことにした。
「よろしければ、一緒に昼食をどうですか、広明さん」
「ああ、じゃあ、いただこうか」

ローズは、長曽禰に、
フレンチトーストと目玉焼きを作り、ふるまった。
「はい、どうぞ」
「なかなかの手際だな」
長曽禰が、感心したように言う。

「いい奥さんになれるんじゃないか?」
「えっ」
(奥さんって……。
私が、広明さんの奥さんに……)
ローズは、ふと、そんな想像をして、頭をぶんぶんと振った。
「な。な、な、ないない! そんな一足飛びに!」
「何をやってるんだ?」
妄想してジタバタしているローズを見て、
長曽禰は、きょとんとしている。

その後、ローズは落ち着きを取り戻し、
無事に食事がすむと、
食後のお茶を淹れた。

「広明さん、今日は本当にありがとうございます。
前に同世代の人といた方がよかったんじゃって、言ってましたけど
広明さんも私といて楽しい時間を過ごせてるでしょうか?
もしそうなら嬉しいんですけど……」
「ああ、おまえとこうして過ごすのも、新鮮で楽しいよ」
「ありがとうございます」
ローズは、安堵して、微笑を浮かべた。
「実は、この前のと今日のお礼に贈り物があるんです」
ローズは、アガルタの写真が入ったフレームを差し出した。
「こうやってニルヴァーナにお店をかまえることができたのも
広明さんのお仕事のおかげでもありますし……どうぞ」

「綺麗な景色だな、ありがとう」
長曽禰は、フレームを受け取り、目を細める。

「また、誘ってもいいですか?」
「ああ、オレでよければ」
「ありがとうございます!」

ローズは満面の笑みを浮かべるのだった。