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リアクション
9.穴場のオアシス
「うおおおお! やっぱ夏とくれば海だよな!」
真夏間近。
ラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)は、ガイ・アントゥルース(がい・あんとぅるーす)と共に海――ではなく、キマクのオアシスに来ていた。
パラミタ内海も既に海開きしているのだけれど、立場上、人混みや人目につく場所は避けた方がいいだろうからと、キマク近くの穴場のオアシスへやってきたのだ。
このオアシスは、サルヴィン川の水が流れ込んで出来た場所であり、小規模ながら自然に囲まれている。
「真夏の海には、砕音と行けたらいいんだがなぁ。まだ病院から出られる身じゃねぇしな」
ラルクが荷物を下ろしながらつぶやいた。
「確かに人ゴミを避けるって選択肢は正解だが……こんなに人気のない場所で大丈夫なんですかね……」
ガイは僅かに不安を覚える。
辺りには道路のようなものもなく、全く人の姿はない。
水の中から化け物が出てこようがものともしない2人だが、2人とも生身の人間だ。事故等で危機に陥る可能性もあるだろう。
「心配無用!」
ラルクは気にもせず、ズボンを脱いで水着姿になる。
「まぁ、どちらかに何かがあっても2人いれば対処できますな」
ガイも荷物を下ろし、ハーフパンツにパーカー姿で水辺へと歩く。
「さて、まずは準備体操だな! ここはしっかりとやっておかねぇとな!」
そうして水辺で準備体操を始めた2人。
しかしこのオアシス。
人気がないのには、訳がある。
「かかった、ロイヤルガードだ」
「よし行くぜ!」
オアシスで一番大きな木から、パラ実生が双眼鏡で水辺の様子を見ていた。
この辺りを縄張りとする四天王と配下達だ。
「ロイヤルガードとはいえ、相手は丸腰!」
「すっぽんぽんにして撮っちまえ! ヒャッハー!」
「うっし! そんじゃあ泳ぐかー行くぜガイ!」
どっぼーんと、ラルクは水に飛び込んで。
「うおりゃあああああ!」
声を上げて、荒々しく泳いでいく。
そんな彼の姿を笑みを浮かべて見ながら、ガイはパーカーを置き、ラルクに続いた。
しばらく夢中で泳いでいたラルク、そして楽しんでいたガイ――。
その間に、そっと近づく者達がいた。
「飯を獲るか!」
銛を取りに、水からあがったラルクは、突如大勢のモヒカン達に囲まれた。
「ん? なんだぞろぞろと? ここには女子はいねぇぜ! 内海行きな!」
「ヒャッハー! 俺らの縄張りへようこそ!」
「ここは遊泳料10000Gだ! 安心の手数料本人負担の分割払いOKだぜ」
言いながらモヒカン達はラルクに飛び掛かってきた。
彼らの狙いはお金ではなく、金……というか、ラルクの水着に中のもの!
ソレを撮影して「ネットに流す」と、揺すろうとしていた。
「おいおい、なにしやがる。これは砕音に見せる為に買った水着なんだ……ぜ!」
水着を切裂こうとしたモヒカンを、ラルクは強烈な一撃で地に沈めた。
「あー……うーん」
ガイも水から上がると、隠してあった荷物を持って、少し離れた位置の木陰に腰かける。
「うおわっ、掴むな……カメラはやめておけ。写される前に全員ぶち殺すがな!」
ラルクは飛び掛かってくるモヒカンを払いのけ、ぶち飛ばす。
結構際どい水着を着ているせいで、そして中に超巨大なブツが入っているせいで、ポロリと出たりしてしまっているが。
言葉通り、撮られる前に確実にぶっとばし、カメラをぶっ壊していた。
「……あの訳わかんない所がなければ少しだけマシなんですがねぇ」
ガイはビールを取り出して、飲みながら観戦に興じる。
「うおおおりゃあ! もう少し鍛えなおして出なおしてこい!!」
髪というか、股間のモノも振り乱しながら戦うラルクの姿に、ガイはそっと苦笑する。
「偶にこの人と同じ血が流れてると思うと複雑な心境になったりしますな」
口が裂けても、子供だなんて本人に言えないけれど。
「さて」
ラルクはパンパンと、身体についた土を払い、水着を直す。戦闘中、水着はずれたりもしたが、なんとか死守できていた。
モヒカン達はラルクの巨根に恐れ慄いて……いや、ラルクの強さに恐れをなして逃げていった。
「腹ごしらえするかー。あと、砕音への土産も探さないとなー」
水の中には川魚。
周囲には果物も生っている。
「ガイ、お前も飯の準備しろよ!?」
「じゃ、火でも熾しましょうかね。俺は銛なんか持ってきてないですし」
「あと荷物番もな。そんじゃ、頼んだぜ!」
ラルクは銛を手に、こんどはゆっくり水の中に潜っていった。
ゆっくり魚に近づいて、素早く銛で突き、魚を仕留めていく。
それから果物を採って。
ガイと一緒に、味を確かめて。
とくに美味しかったものを鞄に詰め、土産にと、持ち帰ったのだった。
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