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お月見の祭り

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お月見の祭り
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 及川 翠(おいかわ・みどり)ユーフェミア・クリスタリア(ゆーふぇみあ・くりすたりあ)は、たいむちゃんたちがお餅つきをしている場所から少し離れたところにいた。
 先ほどミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)スノゥ・ホワイトノート(すのぅ・ほわいとのーと)は二人でお月見デートに向かい、翠とユーフェミアが池の傍に残ったのだ。
「今日はお月見さんなの。お月さまって言えば、うさぎさんがお餅をついてるって聞いたことあるの」
 翠がそう言いながら月を眺めて、クレーターをじっとみつめた。
「あの辺でお餅ついてるのかもしれないの!」
 振り返った翠の目に、ドン、と何かを置くユーフェミアの姿が映った。
「と、いう訳で! 取り出だしたりますは臼と杵っ!」
「……なんで臼さんと杵さん持ってきたの?」
「満月と言えば、うさぎの餅つきが定番って聞いたのよ」
 自慢げにユーフェミアは、自身のウサギ耳をひょこひょこと揺らした。
「ユーフィーちゃん、お餅つきなの? 面白そうなの!」

 翠は、ほどなくしてお餅をつき始めたユーフェミアを興味深そうにじっと眺めている。通りかかる人たちも、人型のウサギが餅をついている姿に、思わず足を止めていく。
「そこの皆さん、もうちょっとでつきあがるからね!」
 ユーフェミアがそう言うなり、臼の周囲に50羽程度のわたげうさぎが集まった。……わたげ大隊だ。
「さあ、持っていって!」
 規律正しくずらっと揃ったわたげうさぎたちは、ユーフェミアの渡した餅を受け取ると、周囲にいた見物人たちを筆頭に散り散りになって餅を配りにいった。
 つまり、池の周囲を歩いていた人たちは、突如どこからともなく現れたわたげうさぎに餅を渡されるという珍事に遭遇するのだが。
「私も一緒にお餅つきしてみたいの!」
 翠はすっかりそんな餅つきの虜になったようで、ワクワクした表情でユーフェミアを見た。
「そうしたら、一緒にお餅つきしましょうか」
 ユーフェミアも快諾し、翠と一緒にそれからもお餅をついていた。
 その後も、つきあがったお餅がわたげ大隊によって次々と運ばれていった。


「そういえばゆっくりニルヴァーナの月を見たことなんて無かったような……?」
 わたげうさぎの一件などつゆ知らず、ミリアとスノゥは手を繋いで平和的に散策路を歩いていた。
「ふぇ〜、確かにゆっくりお月さま見たことありませんでしたねぇ〜」
 スノゥは竹林の間から覗く月をじっと見上げ、歩んでいく。
「こうして月を眺めてゆっくりできる機会があって良かったね」
「そうですねぇ〜、しばらくはのんびりとお散歩しましょうかぁ〜」
 ミリアはスノゥに微笑みかえし、ぎゅっと手を握った。
 スノゥも、その手を握り返す。
「……大好き、お姉ちゃん」
「ミリアちゃん……私も大好きですぅ〜」
 もうしばらくの間は、二人だけの時間だ。